文部科学省は2025年1月21日、デジタル教科書の活用に向けた論点を示した。紙の教科書の「代替教材」という現行の扱いを見直し、デジタル教科書を「正式な教科書」として検討する方針を盛り込んだ。新しいデジタル教科書は、2030年度からの使用開始を想定している。
中央教育審議会のデジタル教科書推進ワーキンググループの第5回会議が1月21日に開かれ、これまでの議論を踏まえた論点の整理を公表した。
論点では、紙の教科書の「代替教材」という現行のデジタル教科書の扱いを見直し、必要な制度改正を経て、2030年度に新しい教科書として使用開始することを想定。遅くとも新しい学習指導要領が始まるまでに対応できるようにするため、2026年度までにさまざまな制度的な整備が必要とのスケジュール案を示した。
デジタル教科書の位置付けについては、「使用義務、検定、採択、無償給与などの対象となる教科書とすべきか」「紙とデジタルのハイブリッドな形態も認めるべきか」「全国一律の対応とすべきか、選択肢の拡大による採択権者の主体的対応にすべきか」「対象となる学年や教科などを法令で規定すべきか、実態に応じて柔軟に運用できるようにすべきか」などを論点にあげた。
また、紙とデジタルのハイブリッドな形態の教科書イメージとして、紙部分で「中核的な概念の習得に関する内容」「長文」「ひっ算の計算」、デジタル部分で「英語の音声、チャンツ、辞書、デジタルノート」「算数・数学の回転図形や確率、速さ・容積のシミュレーション」「理科の実験シミュレーション、タイムラプス映像、3Dモデル操作」などを例示した。
文部科学省は、通信面や指導面の課題を踏まえ、教科・学年を絞って2024年度からデジタル教科書を段階的に導入。小学5年生から中学3年生の「英語」で導入し、次に現場ニーズの高い「算数・数学」を導入する方向を示している。
2024年度「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」大規模アンケート調査速報値(文部科学省委託事業)によると、学習者用デジタル教科書を提供している小中学校の教師のうち、6割以上の教師が「4回に1回程度以上、授業で学習者用デジタル教科書を使用」と回答している。