GIGAスクール構想の進展により、教員の授業準備を取り巻く環境は、大きく変化している。ICT環境は整いつつある一方で、授業で使う教材や資料をどのように選び、どこまで作り込むかは、依然として個々の教員の判断に委ねられている。特に社会科では、正確性や資料の出所、権利への配慮が欠かせず、教材探しに多くの時間を費やしている教員も少なくない。
そうした現場の課題を解決するべく、芝国際中学校・高等学校では2025年4月に山川出版社が提供する「山川&二宮ICTライブラリ」を導入した。中学・高校を横断して授業を担当する同校の社会科教員4名に、導入によって生まれた授業づくりの変化について聞いた。
インタビュイー
<芝国際中学校・高等学校:社会科教諭>
川﨑雅通先生(教務副部長/高校 地理総合・地理探究・日本史探究)
森神宏紀先生(中学 公民/高校 歴史総合・日本史探究)
伊藤みなみ先生(中学 地理/高校 歴史総合・世界史探究)
平舘史唯先生(中学 地理・公民/高校世界史探究)

社会科教員が抱えていた授業準備の“見えない負担”
--2025年度から「山川&二宮ICTライブラリ」を導入されたとのことですが、以前は授業の準備にどれくらいの時間がかかっていたのでしょうか。
森神先生:担当学年や科目によって差はありますが、すでに作ってある授業をアップデートする場合でも1コマあたり1時間程度はかかっていました。白紙状態から作る場合は、プリントやスライド作成など、トータル3時間ほどかかっていたと思います。
社会科の授業では図やグラフ、写真、地図、歴史的資料など非常に多くの資料を使います。資料の良し悪しが生徒の理解度を左右するほど重要な要素でもあるため、資料探しには時間をかけます。使える資料、こちらのねらいを的確に表す資料を見つけるために多くの時間を使っていました。
平舘先生:私は大学院生時代に非常勤講師として授業を受けもっていたのですが、当時は1回の授業準備に3~4時間かけることもありました。教科書や資料集から参考資料を探すのはもちろん、より良い資料を探して図書館へ足を運ぶこともよくありました。当時は時間があったのでそうした対応ができていましたが、今の業務量の中で同じ準備をするのは現実的ではないと思います。

「使える資料」にたどり着くまで
--資料探しの際、重視していたのはどのようなところでしょうか。
森神先生: 情報の正確性をどう担保するかという点です。インターネットで検索すると、個人のブログや出所がはっきりしない画像や図がヒットすることも多く、社会科としてはそのまま使うわけにはいきません。出典が不明確な資料を使うことはできませんし、使えそうに見えても、確認の手間を考えて諦めることも多くありました。
伊藤先生:私も同じで、検索すればするほど「本当にこれで大丈夫かな」と不安になります。たとえば地図1つとっても、ネット上にはわかりやすさを重視して簡略化されたものが多くありますが、そのまま使えないケースが多く、結局、別の資料を探し直すことになります。
平舘先生:私も資料探しには限界を感じていました。自分でグラフを作ったり、資料を加工したりすることもできますが、それには相応の時間がかかります。それこそ大学院時代は時間をとって取り組むこともできましたが、日々の業務の中では、「ここまでで妥協するしかない」という判断をせざるを得ない場面もありました。もっと良い資料があるかもしれないと思いつつも、そこまで手が回らないというジレンマは常にありました。
--川﨑先生は、学校全体の教務を担当する立場からどのように見ていらっしゃいましたか。
川﨑先生:社会科は、特に資料に依存する教科です。また、資料の質や基準が属人的になりやすく、教員間での差も生まれやすい。芝国際では1人の教員が中学から高校までを担当するので、中学1年生から高校3年生までの授業準備を同時に進めたり、自分の専門科目以外の資料づくりを行ったりと、教員の負担は大きかったと感じています。

個人利用から学校導入へ
--さまざまなデジタル教材やWebサービスがある中で、「山川&二宮ICTライブラリ」を選ばれた理由を教えてください。
川﨑先生:「山川&二宮ICTライブラリ」には、学校として利用する法人向け契約と、個人で利用する個人向け契約の両方があります。法人での導入については以前から検討していたのですが、費用面のハードルもあり、すぐに導入するという判断には至りませんでした。
一方で、個人で利用する教員は徐々に増えてきていました。実際に使ってみた教員から、「これは便利だ」「授業づくりに役立つ」という意見が出てきたことが、学校として本格的に導入を検討するきっかけになりました。
--法人として導入してみて、どのようなメリットがあると感じていますか。
川﨑先生:教員個人の力量に左右されず、一定の環境を全体で共有できるようになった点が大きなメリットだと思います。社会科は教員個人のストックに頼りがちな教科ですが、共通して使える教材基盤があることで、授業準備のスタートラインを揃えやすくなりました。また、教員間での情報共有もしやすくなり、結果として学校全体の授業の質の底上げにつながっていると感じています。
--社会科の教科書の代表ともいわれる「歴史の山川」と「地理の二宮(2025年から山川出版社に統合)」の約1万点にのぼるコンテンツを収録しているサービスだと聞いています。実際に使ってみていかがですか。
伊藤先生:必要なものが最初からまとまっているのが良いですね。画像だけ、地図だけ、といった偏りがなく、画像、動画、歴史資料、統計、地図、グラフといった資料から、プリントや問題集の雛形まで、どの科目の授業を組み立てるうえでも必要な素材が1つのサービスの中で完結する点は使いやすいと感じました。
森神先生:授業準備の流れを止めずに使えるのが良いですね。これまでは、資料を探すために複数のサイトを行き来することもありましたが、「ここで探せば大丈夫」という起点ができたことで、準備の進め方が変わったと感じています。
平舘先生:資料探しの「不安」が減ったことがいちばん大きいです。出所や権利関係を気にしながら探す必要がなく、授業で使う前提で安心して見られる資料が揃っている。その前提があるだけで、授業準備に向きあう気持ちがだいぶ違います。
川﨑先生:新しいコンテンツが随時追加される点も、変化の多い社会科の授業にとっては重要な要素だと思います。「資料を探すためのツール」ではなく「授業準備の土台」として、非常に心強い存在です。

直感的な操作感と多様な検索機能
--キーワード検索に加え、教科書ごとに探せる書籍別検索や、科目単位でコンテンツを検索する機能など、さまざまな機能が搭載されていますが、操作感や使いやすさの点ではいかがでしょうか。
伊藤先生:画像を探したいときはキーワード検索を使いますし、問題集を探したいときは該当する教材にチェックを入れて検索しています。目的に応じて探し方を変えられて、イメージしているものがぱっと出てくるのでストレスなく使えています。最近は一問一答や動画も活用するようになりました。近現代史の動画などは、生徒の関心を引きやすく、短い動画でも授業に取り入れると効果的だと感じています。

平舘先生:私は書籍別に検索できるのがとても使いやすいと感じています。自分が使っている教材と同じ資料をすぐにプリントなどに反映できますし、コンテンツを生徒と共有することもできるので、生徒と同じ画面を見ながら説明しやすくなりました。

森神先生:キーワードで検索したときに、複数科目の資料が一緒に表示される点も良いですね。自分の専門科目だけで探すのではなく、別の視点から資料を選べるのは新鮮でした。地理の資料を歴史の授業で使うなど、今までになかった発想で視点を変えて授業に活用することができ、授業の幅が広がりました。

川﨑先生:教科書ごとに検索できるのはわかりやすい入り口ですが、それに加えて、同じ出版社のほかの教科書の資料も一緒に見られる点は面白いと感じています。森神先生のように、想定していなかった使い方を発見することもあります。基本的な操作はすぐに理解できましたし、細かい使い方については、山川出版社のサポートも受けながら実際に触って覚えています。「まず使ってみよう」と思えるのも、ICT教材ならではの魅力でしょう。
導入で生まれた授業準備フローと生徒の変化
--山川&二宮ICTライブラリを導入して以降、授業準備や授業中の進め方にはどのような変化がありましたか。
川﨑先生:授業中に感じたのは、資料の見やすさです。画像や地図、グラフの解像度が高く、教室のモニターやプロジェクターに映してもはっきり見えるので、生徒に伝わりやすくなりました。資料が見やすいことで授業のテンポも安定しますし、説明に余計な時間を取られなくなりました。
森神先生:以前は「この資料はモニターでちゃんと見えるかな」と不安を感じながら資料を出すこともありましたし、慌ててタブレットに配信し直す、といった場面もありました。今は、そうしたトラブルもなく、授業が止まらなくなりました。生徒の反応もスムーズです。
--授業準備の段階での変化はありましたか。
森神先生:はい。画像やグラフがきれいだと、「この資料から何を読み取らせよう」と考えるようになります。以前は資料の説明中心になりがちでしたが、今は資料を起点にして発問を考えたり、生徒に考えさせる時間を入れたりと、授業の組み立て方自体が少しずつ変わってきたように感じます。
伊藤先生:授業で理解を深めたい場面では、よりわかりやすく視認しやすいカラーの資料を使う、グラフや地図は白黒のものもあるので、定期試験や入試を意識した場面ではあえて白黒の資料を使うなど、目的に合わせて資料を使い分けるようになりました。
また、資料の質が上がったことで、生徒が資料そのものに向き合う時間が増えたと感じています。配布したプリントを授業中だけでなく空き時間に見返している生徒もいて、生徒の学習意欲を高めることにもつながっているなと感じています。
平舘先生:権利面を気にせず、生徒に資料を配布できる点は大きいですよね。授業中に見せて終わりではなく、生徒が自分のペースで振り返る際にも、信頼度の高い資料があることで学習の深まりにつながっているのではないかと思います。
川﨑先生:資料の質が上がったことで、授業の進め方や、生徒への関わり方に余裕が生まれているのは嬉しいですね。理解度や評価までを見据えて使い分けられる点は、社会科の授業にとって非常に大きな変化ではないでしょうか。

生まれた余白で授業に向きあう
--授業準備にかかる時間には変化はありましたか。
平舘先生:確実に負担は軽くなっています。特に専門以外の分野を担当する際、授業の方向性や資料選びのヒント、プリント作成用の素材まで揃っているので、作業面の効率が上がっただけでなく、準備中の不安の払拭など、精神面でも大きな効果があると感じています。
伊藤先生:余白の時間が生まれたと感じています。その分、以前よりも、授業そのものに意識を向けられていると思います。
森神先生:私は授業準備を「1時間以内で終わらせる」と決めて取り組んでいるのですが、その時間内で収まることが増えました。準備が終わったあとに感じる疲労感も、以前より軽くなっている気がします。
川﨑先生:単純な時間短縮というよりも、これまでできなかったことに時間を使えるようになったという点が大きいと思います。授業は、毎年、毎回、改善していくものです。その余地を残せるようになったこと自体が、現場にとっては大きな変化だと感じています。
学校や教員によって、置かれている状況はさまざまだと思います。しかし、こうしたサービスを活用して共通の基盤を活用することで、授業づくりを1人で抱え込むことなく、授業の可能性を広げていけるのではないかと思います。
--ありがとうございました。
「山川&二宮ICTライブラリ」は、単なる教材集ではなく、教員の授業準備における「探す負担」を軽減し、「考える余白」を生み出している。先生方の言葉からは、時間短縮以上に、授業の質や視点が広がった実感が伝わってくる。教科書で培われた信頼性とICTの利便性を掛けあわせたサービスは、GIGA環境が整った今だからこそ、学校現場にとってメリットの大きな選択肢のひとつといえるだろう。
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