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250年におよぶ知識の集積が探究や協働学習を支援、ブリタニカのデジタル教材

「New Education Expo 2021 東京」が2021年6月3日から5日に開催された。ブリタニカ・ジャパンのデジタル教材と、同教材を活用した協働学習の授業実践に関する東京学芸大学教育学部准教授大村龍太郎氏のセミナーのもようをお伝えする。

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ブリタニカ・ジャパンのデジタル教材
  • ブリタニカ・ジャパンのデジタル教材
  • ブリタニカ・ジャパンの出展ブースのようす
  • ブリタニカ・ジャパンの3つのオンラインデジタル教材
  • セミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」のようす
  • 東京学芸大学教育学部准教授の大村龍太郎先生によるセミナーのようす
  • セミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」のようす
  • 東京学芸大学教育学部准教授の大村龍太郎先生
  • 関西学院千里国際中等部・高等部の米田謙三先生
 「New Education Expo 2021 東京」が2021年6月3日から5日に東京ファッションタウンズビル(TFT)で開催された。教育向けデジタルコンテンツと新しい学習スタイルを提案する、ブリタニカ・ジャパンのデジタル教材、そして同教材を活用した協働学習の授業実践に関する東京学芸大学教育学部准教授 大村龍太郎氏のセミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」のもようをお伝えする。

ブリタニカ・ジャパンの出展ブースのようす
ブリタニカ・ジャパンの出展ブースのようす


膨大な知識の集積が支える学び



 250年にわたり、百科事典による知識の集積を続けてきたブリタニカは、小学校・中学校向けの「ブリタニカ・スクールエディション」、中学校・高校向けの「ブリタニカ・オンライン中高生版」、大学や公共図書館向けの「ブリタニカ・アカデミック・ジャパン」の3つのオンラインデジタル教材を展開している。子供たちの成長段階に合わせて構成されたコンテンツは、百科項目、写真・イラスト、動画など、すべてで著作権管理が行われ、教育用に安心して利用できるのが心強い。

ブリタニカ・ジャパンの3つのオンラインデジタル教材
ブリタニカ・ジャパンの3つのオンラインデジタル教材

小学校・中学校向け「ブリタニカ・スクールエディション」



 16万以上の百科事典項目が収録されており、思考力・判断力・表現力の養成や、調べ学習、協働学習に活用できるデジタル教材。従来の紙の百科事典をただデジタル化するだけではなく、教科書の内容に合わせたコンテンツが用意されており、授業で使いやすいように学年や教科からアクセスできる。他にも、教科書の単元は複数枚のマップで学習の流れが俯瞰でき、調べた項目のテキスト内にある言葉にはリンクが張られ、詳しい説明を確認できる点も魅力だ。児童・生徒の学習はもちろん、先生による授業デザインの構築まで、デジタル教材ならではのさまざまな使い方を想定した工夫がなされている。

中学校・高校向け「ブリタニカ・オンライン中高生版」



 グローバル教育をサポートするデジタル教材。日本語百科事典のブリタニカ・オンライン・ジャパン、英語百科事典のブリタニカ・スクール、画像・イラストが300万点以上収録されているブリタニカ・イメージクエスト、の3つのコンテンツで構成。ブリタニカ・スクールは、同じ項目で3つの英語レベル(Elementary、Middle、High)の記事にアクセスでき、生徒のレベルに合った英文記事を探すのが難しかった教員にも有用な機能が備わっている。また山中伸弥教授や大坂なおみさんをはじめとした数多くの著名人の署名記事・インタビューも収録されているので、生徒の知的好奇心を満たし、探究学習やSTEAM教育にも活用できる。

大学や公共図書館向け「ブリタニカ・アカデミック・ジャパン」



 日本語事典は日本で、英語事典は米国で編集されており、米国でも大学生や一般の人々から利用されている。ニューヨーク・タイムズやBBCニュースなどの最新ニュースも更新されているので、さまざまな事象における地域や国による見方の違いも比較できる。またレポートや論文、プレゼンテーションの作成にも役立つ、画像・イラストのデータベースもオプションとして用意されている。

協働して深く考えるためには根拠となる情報が不可欠



セミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」のようす
セミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」のようす


 東京学芸大学教育学部准教授の大村龍太郎先生によるセミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」では、大村先生が開発に協力したブリタニカ・スクールエディションの協働学習コンテンツの活用事例が紹介された。

 セミナー冒頭に、GIGAスクール構想で目指す学びが整理され、現場の実際が紹介された。GIGAスクール構想では、これまでの授業実践の蓄積にICTを掛け合わせることで、主体的、対話的で深い学びの視点から、授業改善、学習活動の一層の充実が謳われている。そのために1人1台端末や学校のネットワーク環境、クラウド環境の3つが必要とされ、特にクラウド環境は今後、協働した学びを発展させるために重視されている。

 だが現状の学校現場の多くは、実際に子供たちが議論をしても、意見の根拠が薄いため、ひとりひとりの考えが深まらない。議論に有効な根拠となる資料の収集についても、子供たちだけに任せるのは難しく、時間もかかる。しかしそれを教師が準備するには負担が大きいという課題が発生している。

 「深く考えるというコンピテンシー(高い成果につながる行動特性)を育むためには、良質なコンテンツが必要なのです」と大村先生は語る。深く考えるための根拠となるコンテンツを豊富に準備しないと、表面的な話し合いで終わる。大村先生自身も多くの学校でそうした場面を見てきたという。そのためにGIGAスクールの環境で何が必要なのか。問いとそのための検討材料と学びのプロセスがセットになったものがあれば、もっと学びを豊かにできるのではないか。そうした中、ブリタニカから大村先生に相談があり、豊かなコンテンツの集積である百科事典での実績と集積するノウハウをもつブリタニカの強みを最大限に教育現場に生かすことができるデジタル教材を提案したという。

GIGAスクールに踊らされず利用する側に



東京学芸大学教育学部准教授の大村龍太郎先生によるセミナーのようす
東京学芸大学教育学部准教授の大村龍太郎先生によるセミナーのようす


授業準備の負担が大きい従来の授業



 次に小学5年生の社会科「これからの日本の食料保障」、食料自給率を通じて社会課題を考えていく単元の大村先生による授業実践が紹介された。GIGAスクールによる環境はまったくない、アナログによる授業である。

 食料自給率は「上げるべきか」「上げなくても良いのか」。事実を調べて、話し合いながら、深く考える過程を経て、児童自身が自分の考えをまとめていく。授業では、先生が用意した資料をもとに問題点が整理され、その理由とそれぞれの実情が関係付けされ、価値を考えていく。また、農水省や東大の専門家の著書も紹介され、大人でも見解が異なることを知り、さらにフードマイレージや飢餓、雇用等の世界的な環境や経済の視点や視座を加えて、子供たち自身が話し合いから深く考えることで、これからどうするべきかを判断していく。

 大村先生は「考えを深めるために潤沢に資料があることは必要ですが、潤沢にあると困る子もいます。子供の資料活用能力に合わせて資料を選択ができることが大切です」と話した。授業の動画からは、子供たちが徐々に深い気付きを得て、言い合いではないディスカッションへ移行したようすがあったが、「それは充実した情報があったから。だが、これだけの話し合いをするための準備をするには、教員側は膨大な資料を準備しなくてはならなかった」と授業準備の負担を語った。

セミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」のようす
セミナー「GIGAスクールの中で協働的な学びを豊かにする」のようす


協働的な学びを充実させるブリタニカのデジタル教材



 続いて、ブリタニカ・スクールエディションの協働学習コンテンツから、同じ社会科の食料自給率の単元が紹介された。タブレットの画面でスクールエディションを開き、メニューから進むと、単元での学習の流れがひと目でわかる。各見出しから進むと、ワンタップで資料が豊富に出てくる。たとえば「輸入がストップした」をタップすると、ポークカレーやにぎり寿司など、食べられなくなるものを選ぶ画面が出てきて、その先にも関連項目の資料が見られる。また、先生用の画面では、資料すべてを授業で使うか、項目を選択して使うのかが選択できる。「コンテンツに自分の授業を操作されるのは嫌ですよね。こちらの意思で利用するべきなのです。GIGAスクールも踊らされるのではなく、自分が利用しないと」と、大村先生は話した。

 タブレットで表示される各資料の見出しパネルにはブリタニカの工夫が見られた。資料のタイトルに、オレンジのニッコリマークがある場合は「食料自給率を上げるほうが良い」に有効に働く資料、緑色の場合は「上げる必要はない」に有効に働く資料であることが明示され、わかりやすく整理されていた。どれを子供たちに見せるか、何班にはどの資料を見せるか、教師が自分の学級の実態に則して資料を提示することも、子供たちが選ぶこともできる。「授業の流れを固定化しないように、また選択の余地を幅広くもてるようにこだわった」と開発の意図を振り返った。

 最後に「どの教科でも、子供たちが考えを深めるためには、その前提となるコンテンツがあります。協働的な学びを充実させて、コンピテンシーを育てたいのであれば、それを育てられるコンテンツもぜひ、大事にしていただきたいと考えています」と締めくくり、セミナーを終えた。

東京学芸大学教育学部准教授の大村龍太郎先生
東京学芸大学教育学部准教授の大村龍太郎先生


 セミナー後に大村先生にお話を聞くと、今回紹介した単元はおよそ8時間だが、ブリタニカの協働学習コンテンツを使えば、6時間ほどまで減らせる可能性があるという。大村先生は「同じ質の学びならば、時間を短くできる。そうすれば、さらに力を入れたいことに時間をかけることができると思います」とGIGAスクール構想によるクラウド環境とコンテンツの有効活用を投げかけた。

 「総合」の時間などで、子供自身が教室の外に出て見聞きすることなどから気付きを得ていくことと、こうしたデジタルコンテンツによって知ることの関係性を聞くと、「子供たちが自らリアルな場で調べたものを生かすことは、もちろん有効で素晴らしいことです。ただ子供たちの調べ学習だけでは到達できないコンテンツ、子供の考えを深めるためには重要なコンテンツが必ず存在しています。それらはネットで検索して簡単に見つかるようなものではない場合があります。また専門的な文章を読んでも難しくて読み取れない。でも噛み砕いたら中身としてはものすごく重要なことが書いてあることもありますよね。それを噛み砕くのが教師の役割ですが、労力や相当の時間がかかります。そうしたことが好きでこだわりがある先生だけでなく、そうでなくても子供の学びの質を保障するために、ICTを有効活用するべきだと思います」と答えてくれた。

知識を駆使できるレベルに



関西学院千里国際中等部・高等部の米田謙三先生
関西学院千里国際中等部・高等部の米田謙三先生


 会場で、「New Education Expo 2021 大阪」で6月12日に講演を予定している米田謙三先生に話を聞く機会を得た。米田先生は、関西学院千里国際中等部・高等部 進路情報センター長で、社会科が専門。現在、英語教育やSTEAM教育、ネットモラルなど、幅広く多彩な活動をされている。大阪の講演では「ブリタニカ・オンライン中高生版」の導入事例を中心とするセミナーを予定している。

 米田先生もやはり調べ学習における情報の検索や収集には課題があることを実感しており、特にSTEAMのサイエンスやディスカッションなどでは背景知識によって議論や学びの質に差が出るという。「今、育てたいのはクイックレスポンスの力です。まったく思いもよらないことを言われたときに、自分がどう反応できるか、調べてもいないことを言われたときに、どうやってそれを克服するか。そのための調べ方や情報収集力を高校の間に身に付けさせたい。国際バカロレアのカリキュラムなどのハイレベルな学習やICT機器の活用能力の醸成にも『ブリタニカ・オンライン中高生版』は最適だと思います」と、ブリタニカのコンテンツをどのように実践的に活用するかを深くイメージしているようすだった。

 百科事典が子供たちの探究の入り口であることに疑う余地はないだろう。エキスパートによるコンテンツと接することで、広く深い学びの可能性が拓いていく。百科事典のオンライン化、デジタル教材化は、子供たちを中心にした学校から家庭までの学びを強力にサポートする。今後も学校現場での実践が、さらに深まることを期待したい。

ブリタニカ・ジャパン

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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