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「個別最適な学び」実現へ…超教育協会がデジタル庁へ提言

 超教育協会は2022年3月付けで、クラウド配信型のデジタル教科書普及における取扱い等に関して、10項目に取りまとめデジタル庁に意見を提出した。

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 超教育協会は2022年3月付けで、クラウド配信型のデジタル教科書普及における取り扱い等に関して、10項目に取りまとめデジタル庁に意見を提出した。

 2022年2月に発表された文部科学省の調査結果によると、高校でも2024年にかけて1人1台端末整備が完了する予定であり、GIGAスクール構想環境をいかに効果的に活用するかを検討すべき局面を迎えている。デジタル教科書も同様に2024年からの本格導入に向けて、クラウドツールやデジタル教材の連携方法等の検討を行う有識者会議が文部科学省で立ちあがる等、本格的な議論が始まっている。

 超教育協会では、クラウド配信型のデジタル教科書は「個別最適な学び」の実現を、さらに後押しするものと強く期待して、取扱いを10項目に取りまとめ、デジタル庁に意見を提出した。

 1点目は、教育データに関係するステークホルダーを明確にし、それぞれの権利や義務を明確にすること。ステークホルダは、学習者/学習に参加する他の学習者/教師や教員、指導者/教育機関の管理者/その他の教育機関/民間の教育事業者/教育行政に携わる関係者/一般市民の8つ。社会全体でのデータに対するガイドライン策定を社会制度設計として認識する必要があるとしている。

 2点目は、学習者と教師の間での教育データとして、何を残すべきかの根源的な議論を行うこと。単にテストの成績等を残すだけでなく、教師と学習者の間のコミュニケーションを記録したデータを取得し、科学的な根拠によって改善できるよう国が主導となって構想を明確にする。加えて、所有権、アクセス権、保管に関するセキュリティ等の義務についても、教育データの種別による権利者の明確化と義務に関する議論を明らかにし、関連する法制度の制定を検討する。

 3点目は、持続的なデータの保持に関する基本的な指針を策定すること。特に、クラウドを効果的に活用する等、個人が利用するデバイス等の時間的な変化に対応させたデータ管理の仕組みを社会的に構築する。あわせて教育データの活用により、デジタルバッジ等を超えた個々の学びのプロセスの記録が、学習者の生涯のキャリア形成の中で明示的に生かせるような社会制度の設計を検討する。

 4点目は、デジタル教科書向けプラットフォームの構築に関して、これまで各自治体の教育委員会が教材の選定を行ってきたが、学校や地域のネットワーク環境によっては、活用できないという実態があり、関係省庁と連携して環境整備を進め、共通プラットフォームを活用すること。

 5点目は、デジタル教育をさらに進化させるためにAIを導入して子供ひとりひとりがどこでつまずいているかを分析して導くこと。より広く子供の支援や全人格的な教育を推進するためには、教育委員会が所掌する学校内データと、自治体が所掌する福祉関連等のデータを連携させる必要がある。

 6点目は、現時点で小・中に比べて財政支援が限られている高校では、公費で端末整備ができない自治体が多く、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」で前提とされているMDM(端末管理やセキュリティ対策)の採用も見送っているケースもある。しかし、MDMを採用していない端末では、各家庭のセキュリティ対策に依存することとなり、インシデント発生時に解決に必要なログが参照できなくなる等のリスクがある。これを防ぎ、安心安全のICTを活用した学びを定着させるためにも、今後は高校でもMDMで管理された端末整備を推進するべきであるとしている。

 7点目は、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」等を踏まえ、省庁が横断的に、教育情報化に係るセキュリティ整備状況の可視化を進めること。あわせて、十分な対策が講じられていない自治体、学校、家庭等に対して、可視化された整備状況に基づき、国主導で予算措置等の必要な対策を講じ、対策を推進すること。また、フィルタリング等の対策に関して、自治体セキュリティ間で大きな格差があるため是正することをあげている。

 8点目は、GIGAスクール構想環境を前提とした普及の促進を図ること。デジタル教科書の普及に向けた検討は、まずGIGAスクール構想環境を前提として行い、本格導入する際には、GIGAスクール構想で整備されたICT環境と共存していくものとする。また、児童生徒や教職員の利便性を最大限考慮し、日常的に利用されているグループウェア等のプラットフォームとSSO等の技術的連携を前向きに推進することが望ましい。採択する教科書会社が異なっても、児童生徒や教職員による円滑な運用を支えるような技術を効果的に取り入れる等、最大限の留意をすべきであるとしている。

 9点目は、デジタル教科書利用を通したデータ利活用に向けた統一規格を策定すること。デジタル教科書は、他のデジタル教材等の教育データ(学習履歴等)と連携することで、「個別最適な学び」を実現する可能性がある。この連携を進めるためにも、教科書会社間での規格統一、そのための予算措置、教育機関で利用されるすべてのデータ規格の標準化等、必要な標準規格整備を進める必要がある。検討は、国主導で各ステークホルダーを巻き込みつつ進めることとしている。

 10点目は、家庭環境や特性によって支援の必要な子供たちが同じデジタル教科書・教材を使って学習ができる環境を整備すること。学校と同じように、自宅や学校外の施設においてもデジタル教科書や教材を利用でき、費用についても家庭環境の問題等から、国が負担する等、誰1人取り残さない学びの環境を構築することが必要としている。

 この提言は、超教育協会Webサイトで閲覧することができる。
《川端珠紀》

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