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共通一次・センター試験から共通テストへ、2025年度「情報」新設

 1989年度から実施されていた大学入試センター試験に代わって、2021年度入試より大学入学共通テストが実施されている。大学入試改革が進む中、共通テストが導入されるまでの大学入試を振り返り、今後の動向についても紹介する。

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 1989年度から実施されていた大学入試センター試験に代わって、2021年度入試より大学入学共通テストが実施されている。大学入試改革が進む中、共通テストが導入されるまでの大学入試を振り返り、今後の動向についても紹介する。


共通一次からセンター試験、共通テストへ

 1970年代の大学入試において1回の学力検査に頼って合否を決定する傾向や、大学が独自に行う学力検査で難問・奇問が出題されている状況を是正するため、1979年度(1979年1月13日・14日実施)に国公立大学の受験生を対象に大学共通第一次学力試験(共通一次)が始まった。共通一次の実施にあたり答案の採点等を一括して処理するための国の機関として大学入試センターが設けられ、各大学がそれぞれの特性に応じて行う第二次試験と共通一次を組み合わせることで、受験生の能力・適性を多面的・総合的に評価するきめ細やかで丁寧な入試の実現を目指した。1982年度には私立の産業医科大学もこの試験に参加した。

 受験生の基礎学力を判定するために行われていた共通一次だったが、一律に5教科7科目(1987年度からは5教科5科目)利用を原則としたこと等による大学の序列化や、基本的に私立大学が参加しなかったために効果が限定的である等の課題が生まれた。そこで、共通一次の成果を引き継ぎながら、大学入試の個性化・多様化を実現するための試験として1990年度から国公私立大学を対象とする大学入試センター試験(センター試験)が行われることになった。

 センター試験は利用教科・科目を各大学が自由にできるアラカルト方式を採用しており、各大学が必要な教科・科目を指定できた。そのため各大学が実施する個別試験と適切に組み合わせることで入試の個性化・多様化が進展。2006年度には「英語」科目にリスニングテストが導入された。利用私立大学は年々増加し、2020年度入試では774大学・短期大学が利用している。

 センター試験の後継として、2021年度より大学入学共通テスト(共通テスト)が始まった。変化が激しい社会の中では知識を身に付けるだけでなく、それを活用するための思考力・判断力・表現力等が求められることから、これらの力を発揮して解くことが求められる問題を重視。2022年度高等学校入学者から、新学習指導要領で学んでいる。これに対応して共通テストでも2025年度入試以降、新しい学習指導要領に対応した試験を行うことが発表されている。

共通テストへの英語資格・検定試験の活用・記述式問題導入は断念

 2019年12月に設置された文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」では、大学入試英語成績提供システムおよび大学入学共通テストにおける国語・数学の記述式問題の導入見送りを受け、英語4技能評価や記述式問題の出題を含めた大学入試のあり方について検討が行われた。

 会議の中で、英語資格・検定試験のスコアを一元的に活用する仕組みについては「試験によって会場数、受検料、実施回数や、障害のある受験者への配慮が異なる」等をあげ、課題を短期間で克服することは容易ではないと指摘。コロナ禍で資格・検定試験の中止や延期が相次いだこともあり、「大学入学共通テスト本体並みの公平性等が期待される中にあって、実現は困難であると言わざるを得ない」との結論に達した。

 共通テストにおける記述式問題の取扱いについては、一定の意義はあるとしたものの、50万人以上が同一日・同一時刻に受験し、短期間で成績を各大学に提供しなければならず、採点者の確保、採点精度、採点結果と自己採点との不一致等の課題について「克服は容易ではなく、その実現は困難であると言わざるを得ない」とした。一方で、総合的な英語力評価や記述式問題が果たす重要性は認め、個別試験での充実が必要との考えが示された。

 これらの結果を踏まえて、2021年7月に萩生田文部科学大臣(当時)によって英語資格・検定試験の活用、記述式問題の導入断念が発表された。

共通テスト「情報」導入予定と不採用大学、浪人生への対応

 2025年度入試の共通テストでは、新学習指導要領で必履修科目となる「情報I」を出題範囲とした「情報」が新設される。国立大学協会は2022年1月、2025年度入試から共通テストにおいて「情報」を加えた6教科8科目を課すことを原則とすることを発表した。しかし、北海道大学は共通テストにおいて「情報」を必須科目にするものの、配点はしないことを公表。徳島大学も「情報」を指定科目に課すが、2026年度入試までは「総合判定の参考」として点数化しないとしている。

 旧課程で学ぶ既卒者には、経過措置科目「旧情報(仮)」を出題する。なお、「情報I」と「旧情報(仮)」はいずれも2025年度共通テストで初めて出題する科目である等の事情を考慮して、受験者数が1万人未満の場合も得点調整の対象となる。

 大学入試センターは、2025年度試験の問題作成の方向性、試作問題等をWebサイトで公開。「情報I」「旧情報(仮)」の試作問題も公開されている。



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