文部科学省は2024年10月31日、2023年度（令和5年度）学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果（確定値）を発表した。コンピュータの整備やインターネット環境など前年度より向上した一方、インターネット接続状況や統合型校務支援システム整備率などで、地域差が大きくみられた。
「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」は、初等中等教育における教育情報化の実態を把握し、関連施策の推進を図る目的で、文部科学省が実施。全国の公立学校および教員を対象に「ICT環境の整備状況等」「教員のICT活用指導力」の2項目について調査し、毎年3月1日現在の状況を取りまとめている。なお、2023年度調査では、同年に能登半島地震の影響により回答不可能となった石川県と新潟県の一部の学校は対象から除いている。
おもなICT環境の整備状況をみると、コンピュータの整備率は校務用・指導者用共に100％を超え、学習者用端末も児童生徒1人あたり1.1台を達成。このほか、無線LANまたは移動通信システム（LTE等）によりインターネット接続を行う普通教室の割合が98.3％、普通教室の無線LANの整備率が96.2％などと高かった。
また、統合型校務支援システム整備率も、平均値が91.4％と比較的整備が進んでいる。都道府県別に見ると、「東京都」「富山県」など6都県で100.0％を達成し、22都府県で95.0％を超えたものの、もっとも低い「岩手県」では50.6％、「青森県」も54.8％と、地域差がみられた。
学習者用デジタル教科書整備率は平均88.2％（前年度87.9％）、指導者用デジタル教科書整備率は89.6％（同87.4％）と、いずれも前年度調査より上昇した。学習者用デジタル教科書整備率がもっとも高かったのは「佐賀県」で97.6％、もっとも低かったのは「秋田県」で82.9％。指導者用デジタル教科書の整備率がもっとも高かったのは「富山県」で100.0％、低かったのは「北海道」で77.0％だった。
インターネット接続状況（通信速度の理論値1Gbps以上）について、平均値が81.0％で、前年度平均値66.3％より大幅な増加がみられた。都道府県別の整備率は「埼玉県」が97.0％でもっとも高く、「福島県」46.7％がもっとも低かった。前年度もっとも低く3割にも満たなかった「岩手県」は、今年度64.3%と目立って増加した。「教育情報セキュリティポリシーの策定率」は「徳島県」がもっとも高く、唯一100％を達成。もっとも低いのは「高知県」で27.1％と地域による差が大きく、平均値は74.2％となった。
教員のICT活用指導力は、4つの大項目に分類して調査。各項目の平均値は、「教材研究・指導の準備・評価・校務などにICTを活用する能力」89.6％（前年度88.5％）、「授業にICTを活用して指導する能力」80.4％（前年度78.1％）、「児童生徒のICT活用を指導する能力」81.6％（前年度79.6%）、「情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力」88.1％（前年度86.9%）。いずれも前年度と比べ1～2ポイント程度、向上している。
2023年度中にICT活用指導力の各項目に関する研修を受講した教員の割合については、平均72.1％で前年度より0.9ポイント減少。都道府県別の最低値は「奈良県」の56.8％、最高値は「大分県」の99.6％。受講した研修の実施主体割合でもっとも多かったのは「学校」で64.8%、ついで「市（区）町村」14.9%、「教科等の研究会」7.0%という結果だった。
「2023年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査」は、文部科学省のWebサイトで公開している。
