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大学受験生の2極化進む?駿台が示す、2024年度最新入試動向と新課程入試

 駿台予備学校横浜校が2024年2月26日に開催した「大学入試研究会―最新入試情報編」では、2024年度入試結果を踏まえた出願状況分析と2025年度新課程入試について、入試情報室部長・石原賢一氏と、横浜校1号館校舎責任者・光武勇治氏が講演。来る2025年度大学入試にどう備えるべきか、講演のようすをレポートする。

イベント 教員
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2024年2月26日に開催された駿台予備学校横浜校「大学入試研究会―最新入試情報編」のようす
  • 2024年2月26日に開催された駿台予備学校横浜校「大学入試研究会―最新入試情報編」のようす
  • セミナーに登壇した駿台予備学校 入試情報室部長・石原賢一氏
  • セミナーに登壇した駿台予備学校 横浜校1号館校舎責任者・光武勇治氏
  • 2024年2月26日に開催された駿台予備学校横浜校「大学入試研究会ー最新入試情報編」のようす
  • 熱心にメモをとる参加者たち
  • 2024年2月26日に開催された駿台予備学校横浜校「大学入試研究会ー最新入試情報編」のようす
  • 「大学入試研究会―最新入試情報編」当日資料より
  • 「大学入試研究会―最新入試情報編」当日資料より

 駿台予備学校横浜校は2024年2月26日、同校舎において最新の大学入試事情をわかりやすく解説した「大学入試研究会―最新入試情報編」を開催した。首都圏の高等学校教員を対象に、2024年度入試結果を踏まえた出願状況分析と、いよいよ始まる2025年度新課程入試について、入試情報室部長 石原賢一氏と、横浜校1号館校舎責任者 光武勇治氏が講演。来たる2025年度大学入試にどう備えるべきか、講演の模様をレポートする。

現役志向強まり、都市圏では文系中心に共通テスト離れも

 高いノウハウをもつプロ講師陣によって生徒の受験をサポートし続け、抜群の合格実績を誇る駿台予備学校。駿台グループ受講者における2023年度の合格者(模試のみ利用は含まない)は、東京大学1,409名、京都大学1,372名、早稲田大学3,484名、慶應義塾大学2,647名、国公立大学医学部医学科1,628名、私立大学医学部医学科2,044名と、いずれも傑出した数字だ。今回の研究会では、そうした高いノウハウをもつ駿台グループが分析した最新入試情報が惜しみなく紹介された。

2024年度入試結果速報 出願状況分析を中心として…石原賢一氏

2024年度大学入学共通テストで試された力とは

 大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の志願者数は、2024年度は50万人を割り、6年連続で減少。「『年内入試』と言われる推薦や総合型選抜で入学する人が全体の5割を超え、浪人生が発生しにくくなっている状況」と石原氏は言う。現役志向が高まり、首都圏、関西や福岡周辺などの都市圏では国公立大離れが進み、特に私立大文系志望者を中心に、共通テストを回避して有名私立大を目指す傾向もみられる。

 共通テスト志願者の内訳をみると、浪人生は減少する一方で現役生の占有率や志願率、女子占有率がそれぞれ過去最高になっている。しかし同時に、欠席率が7%と高いことを危惧し、「今は多くの私立大で共通テスト利用入試が増えているので、安易にあきらめては勿体ない。棄権させないことも大切だ」と石原氏は強調した。

 出題分析では、数学は一昨年極端に難化したことの反動で昨年は易化したものの、2024年度は再びやや難化して、「特に数IAで点数を取りづらかった」と石原氏。また、国語は現代小説が出題され、読みやすく易化したが、「この傾向が続くかどうかには疑問が残る」と言い、「来年の2025年度からは試験時間がプラス10分、大問が1問増えるため、易化したまま続くことは考えづらい」とした。

「大学入試研究会―最新入試情報編」当日資料より(提供:駿台予備学校)
「大学入試研究会―最新入試情報編」当日資料より(提供:駿台予備学校)

 理科では、昨年難しかった反動で生物基礎が易化し、平均点が大きく上がった。専門科目についても同様で、生物と化学で昨年行われた得点調整の影響もあって今年は易化している。地歴公民では、「共通テストの公民科目は点が取りづらいのが特徴だ」と石原氏は指摘。特に「政治・経済」では平均得点率が44%まで下がったという。

「大学入試研究会―最新入試情報編」当日資料より(提供:駿台予備学校)
「大学入試研究会―最新入試情報編」当日資料より(提供:駿台予備学校)
「大学入試研究会―最新入試情報編」当日資料より(提供:駿台予備学校)

 平均点の推移を見ると、2024年度の5教科900点満点の予想平均点は理系で559点、文系で536点となっており、過去のセンター試験に比べ、共通テストはやはり点が取りにくいことが伺える。石原氏は「なかなか点を取りづらいのが共通テストの現状であり、特に『全国平均点以下』の生徒には点が取れない試験」だとし、「未見の素材が出されるので、知識があれば解けるというわけではなく、読解力・思考力・判断力が求められる。複数の情報を組み合わせ、いかに課題を見つけて素早く処理できるかという、新しい社会に適応するための能力を見られている」と語った。

国公立大志向高まり、理高文低解消へ

 ついで石原氏は、2024年度における国公立大入試について解説。国公立大一般選抜の志願者数は2021年度以降42万人台で推移しており、今年度の志願者数は前年度並みだという。この背景には、「共通テストの平均点アップと、厳しい経済環境から国公立大志向が高まったことがある」と分析した。

 また、駿台が取りまとめた2024年度における国公立大の系統別志願状況をみると、2年連続で増加したのは芸術、総合科学、歯の3系統で、総合科学は情報系を含むこともあり、増加傾向が続いている。今年はスポーツ・健康も大幅に増加し、人文科学、外国語も増加傾向が見られた。

 一方で2年連続減少したのは法、工の2系統。社会、生活科学、薬、教育養成・教育もやや減少し、これら以外の医学など7系統は前年度並みだった。こうした傾向を受けて、石原氏は「コロナ禍での理高文低が解消している」と評価。

 さらに地区別で見ると、前期は北関東、九州・沖縄でやや増加、甲信越・北陸でやや減少。大学別では、大阪公立大が3年連続でもっとも多く志願者を集めた。千葉大や神戸大でも志願者数が1万人を上回り、全体としては「地方の国立大が増えて、公立大が減少した」と解説した。

 そしてやはり、医学部医学科は依然として人気が高いようだ。前期の倍率は4.5倍で、石原氏は「今年の医学部志願者数は東北・関東が非常に多く、穴場は中国地方だったのでは」と指摘。2025年度についても厚生労働省から発表されている「令和6年度医学部臨時定員に係る方針について」においては、現在と同規模の定員になる予定だが、石原氏は「(定員自体は変わらなくても)定員のうち、地域枠に充てる人数が増える可能性もある」と注意を促した。

私大は首都圏・関西圏の難関大志願者が増加

 私立大の入試状況については、一般選抜の延べ志願者数は前年度並みで約229万人となった。最終的な私立大の延べ志願者数は前年度比0.4%減とほぼ前年度並の307万人前後になると予想される。この背景としては、
18歳人口減少及び浪人発生数減少による受験人口全体の縮小
「年内入試」と言われる推薦や総合型選抜へのシフト
1人当たりの併願校数減少
地方の地元国公立大志向
以上の4点とは対照的な成績上位層の難関大への積極的な出願
などをあげた。

 また、上記でも述べたように今年度は「難関大の志願者数が増えたのが特徴」だと石原氏。特に首都圏、関西圏の主要22私立大学では16大学が志願者数増加の見込みで、近畿大、千葉工業大、明治大、法政大、東洋大の5大学では志願者数が10万人を超えている。成長著しいのが千葉工業大で、4年連続で志願者数が第2位の見込みだという。

 その一方、入学者数が定員に達しなかった私立大の割合は、2023年度は53.3%にまで高まった。特に昨今は、理工系大学の女子枠の増加など、女子大学を取り巻く環境が厳しい状況にある。また、中堅大学や地方大学では「年内入試」へのシフトが加速しており、一般選抜・共通テスト離れが進んでいることも特徴的な傾向であると石原氏は指摘した。

「2025年度入試は経過措置として基礎的な出題傾向になる」と予測する石原氏

成績上位層と中下位層の二極化が進展…2025年度はどうなる?

 石原氏は上記の動向を踏まえ、昨今の志望動向の特徴として、
コロナ禍が明け、地方から大都市部への移動回避が緩和され、文系が増加
共通テストの平均点が上がり、成績上位層は共通テスト利用方式を積極利用、中下位層は敬遠
二極化の更なる進展。成績上位層は積極的に一般入試で難関大を目指す一方、中下位層は一般入試を回避して推薦・総合型選抜へとシフトし、「戦わない受験生」になっていると総括した。

 そのうえで、「2025年度入試はコロナ禍の影響はさらに小さくなり、新課程入試という点では初年度は移行期にあたるため、経過措置として基礎的な出題傾向になるのではないか」と予測。「本格的な新課程入試は、新高校2年生が受験する2026年度から始まる」と述べ、「各大学で大幅に入試配点の見直しが行われることも予想され、出題範囲や科目ごとの配点など、最新の情報は駿台でもホームページ等で積極的に発信をしていく。ぜひ活用してほしい」と語った。

2025年度新課程入試情報と駿台での新課程対応カリキュラム報告…光武勇治氏

2025年度新課程共通テストはよりタイトなスケジュールに

 新課程移行後初となる2025年度の共通テストは、2025年1月18日、19日と比較的遅い実施日程であり、そのため「共通テストの受験後、すぐに私立大入試や国公立大の2次試験が到来することを意識した準備が必要になる」と光武氏は語る。

 また、次年度の共通テストの試験時間について、国語では10分増えて90分に、2日目の数学②でも、10分増えて70分になる。さらに新しい科目、情報が増えることから、「学力はもちろんだが、体力・集中力が試されるタフな試験になる」と強調した。

 では、新課程移行後の共通テストは具体的にどういった変化があるのだろうか。まず国語に関しては、現代文の大問が1つ追加、試験時間は前述の通り10分増え、全体の配点が調整される。

 次に数学は、数学①の「数学I、数学A」において、旧課程では選択問題だった数学Aの図形の性質、場合の数と確率はいずれも必答となる。また、データの分析には仮説検定の考え方、場合の数と確率では期待値が出題範囲に含まれるなど、新学習指導要領の学習分野に合わせ、出題範囲の変更が生じる。数学②の「数学Ⅱ、数学B」は科目名称が「数学Ⅱ、数学B、数学C」となり、試験時間は10分増える。また、選択問題は数学Bの数列、統計的な推測、数学Cのベクトル、平面上の曲線と複素数平面という4項目から3項目を選択解答する形式に変わる。旧課程では数学Bの数列、ベクトル、確率分布と統計的な推測の3項目から2項目を選択解答する形式であったため、よりタイトな時間配分で解答することが要求されるだろう。

 英語リーディングについても、大学入試センターが公表した試作問題では新たな出題形式が示されている。また、英語リーディングは近年、全体の文章量も増えてきている。光武氏は「大量の文章を短時間で処理するという点では国語、数学などの科目でも同様であり、素早く、正確に情報を読み解く力が共通テストでは一層求められる」とした。そのほか、地理歴史、公民に出題科目の大きな変更がある。

 新たな出題科目である情報については、国立大はほぼ全大学で必須利用とはいえ、配点は各大学が自由に決定できる。受験生がもっとも不安を感じる新科目だが、「情報が共通テスト全体の配点に占める割合を10%以下とする大学が多く、私立大も選択科目の1つとしての利用が中心で、必須化は少ない」と光武氏は述べ、「これまでの傾向から、新規導入科目の初年度は易しい傾向がある。また、情報教育の学校間、地域間の格差などを考慮し、負担軽減の対応をする大学もあることから、情報の本格的な利用は2026年度入試以降になるだろう」と評した。

 なお、数学、情報、地理歴史、公民では旧教育課程履修者に対して経過措置問題が用意される。数学、情報については、旧課程・新課程の問題が同一冊子に掲載される点にも注意したい。

光武勇治氏からは受験指導のテクニックのほか、2025年度入試で特に気を付けたいポイントも示された

移行期の2025年度は旧課程履修者に配慮、過去問題での対策が有効

 国公立大や私立大における新課程への対応について、光武氏は一部の大学を例にあげながら解説した。

 まずは国公立大の事例として東大をあげた。共通テストにおける情報科目の扱いは、文科類、理科類とも同じであり、従来の科目に情報を加えた1,000点満点を110点に圧縮する。

 また、東大は2次試験科目に変更はないものの、数学の出題範囲に統計的な推測が加わり、地理歴史の出題範囲には地理総合や歴史総合は含まないことを発表している。出題内容に関しては「旧課程履修者への配慮を行う」とあることから、光武氏は「基本的には前年通りの出題範囲による出題が中心になるのではないか」という見方を示した。

 もう1つの事例は一橋大。情報をすべての科類で一律に配点する東大に対し、一橋大では学部ごとに異なる配点としており、商学部や経済学部、ソーシャル・データサイエンス学部では配点比率がそのほかの学部に比べて高くなっている。また、光武氏は「一橋大は数学の出題範囲に統計的な推測を含めず、地理歴史においては地理総合や歴史総合を出題範囲に加える対応で、東大とは対照的」だとし、「いわゆる難関国立10大学の数学、地理歴史の出題範囲は、現時点で一橋大と同様のパターンが多い」と述べた。いずれの大学でも東大と同様、2025年度入試においては「旧課程履修者への配慮を行う」としているため、「共通して、これまでの過去問を用いた演習は十分有効になるだろう」と語った。

 私立大については、ほとんどの大学で独自試験や共通テスト利用入試で情報を必須化しない。そのほか、数学や地理歴史の出題範囲についても早稲田大は個別試験において「新課程と旧課程の共通範囲からの出題で対応する」と公表している。難関私立大は既卒受験生も多く、早稲田大と同様に旧課程履修者への配慮を行うケースが多い。総じて、私立大でも国公立大と同じく、過去問を用いた演習は十分有効とした。

教員にとっても未知の新課程入試。参加者は皆熱心にメモをとっていた

駿台でしっかりと新課程入試の対策を

 最後に、駿台での新課程入試への対応を紹介。2024年度の駿台高卒クラスでは、地歴公民や数学では旧課程履修者への経過措置を有効活用したカリキュラムを基本に、新課程入試での受験を希望する学生に対応するカリキュラムも整えている。国語は全コースで新傾向問題対策を充実させ、情報は新課程対応のカリキュラムを準備するなど、新旧課程どちらにも対応した融合型「ハイブリッドカリキュラム」を用意していることを示した。

 未知の部分が多く、不安にかられがちな新課程入試だが、長年積み上げてきたデータと知見から作問する駿台模試は、今もっとも確実で有効な対策になるはずだ。駿台模試を最大限に活用し、2025年度入試の準備をしっかり行っていきたい。


 少子化の進展で、2024年の大学出願者数は、ピークだった1992年の約半数にまで減少。今の中学生あたりから年率2~3%の割合で減っていくとのこと。受験生の減少は待ったなしであり、今後は大学入試も変わらざるを得ないだろう。共通テストや一般入試を受験する母集団も変わっていき、実態把握が難しくなる中、駿台がもつ最前線の情報やノウハウには積極的に頼りながら、子供ひとりひとりに見合った最善の進路選択を実現させたい。

駿台予備学校 中学校・高等学校の先生方へのご案内
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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