2025年4月23日から25日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された国内最大級の教育総合展「EDIX東京2025」。EDIX東京では、GIGA第1期の課題を踏まえ、子供たちのより良い学びを目指す学習者用端末や、校務DXの実現に向けた教職員用端末が各社から出展された。
Dynabookは、ブース内に教室をイメージしたスペースを設けて、学校と同じ机の上に教材や筆記用具とともに学習者用端末「dynabook K70」を設置。来場者は子供たちの机の上の実際のようすを確認しながら、端末の使い勝手を体験していた。ブース内には教職員向け端末として注目されているCopilot+ PC「dynabook X94」も展示されていた。
Dynabook国内PC事業本部 公共・文教営業部 主任の林田亮氏に、同社の教育への思いやGIGA第2期に向けた端末の特徴などを聞いた。

Dynabookの学習者用Windows端末
日本の教育環境に常に寄り添ってきたDynabook
Dynabookは「誰ひとり取り残さない教育を」というGIGAスクール構想の理念に共感し、ハード、ソフト両面で学校現場での使用を想定した端末を探究。企画・開発・製造・販売・サポートまでをワンストップで行うことで、学校での利用に適した製品とサービスを追求している。Dynabookの林田氏は「弊社は教育におけるICT活用黎明期から、産学官連携のさまざまなプロジェクトにも参画し、教育におけるICT利活用の推進に一緒に取り組んできました。Dynabookは国内メーカーとして日本の教育環境に常に寄り添うことで、教育現場に最適な端末の提供ができると考えています」と同社の教育に対する思いを語った。

“とことんこども目線”で作られた「dynabook K70」
同社の端末の最大の特徴は、徹底したユーザー目線からの製品開発だ。特に学習者用端末におけるコンセプトの“とことんこども目線”から生まれた「dynabook K70」は、誰ひとり取り残さないというGIGAスクール構想の理念の実現に向けて、考え抜かれた仕様となっている。
特徴的な仕様のひとつが、画面とキーボードドックが外れ、タブレットとしてもノートPCとしても使用できる「2in1デタッチャブルタイプ」の採用だ。たとえば教室の授業ではキーボード入力ができるノートPCとして使用し、校外学習や自宅への持ち帰り時には、タブレットとして手軽に持ち出すといった使い方も可能となる。サイズは幅約248.5mm×奥行約177.0mmとコンパクトで、本体重量はわずか約590gだという。ディスプレイはタッチパネル付きの10.1型WXGA液晶。高精細で、かつ「ノングレア液晶」のため、教室の蛍光灯の反射を抑えて画面が見やすいのも利便性が高い。
また、教室でも校外学習でも電池切れを心配せずに学習に集中できるよう、長時間使用できるバッテリーが搭載されている。これら数々の機能は、子供たちの学びの幅を広げることに寄与するに違いない。

一方で気になるのは、「壊れにくさ」だ。GIGAスクール第1期のモデルのころから壊れにくい端末を目指していたが、第2期ではさらに改良を重ねたという。
新モデルをリリースするにあたり調査したところ、メーカーを問わず、GIGA端末の故障理由の約6割近くが机の上からの落下による破損だったそうだ。落下につながる原因のひとつは、端末のサイズが大きいこと。机の端からはみ出してしまい、教材が当たることで落下しやすいのだという。「本体の滑りやすさも落下の原因のひとつ。そこで、この『dynabook K70』は周囲にTPUという熱可塑性ポリウレタンを使用し、滑りにくさや対衝撃性・対摩耗性を追求しました」と、林田氏は堅牢性を高めた背景を語った。なおこの端末の堅牢性は、アメリカ国防総省制定「MIL規格」に準拠した過酷な耐久テスト10項目をクリアしているという。


本体とキーボードドックの接続も改善された。故障のリスクを軽減するため、従来からマグネットによる接続方式を採用。前期モデルではキーボードドックとヒンジ両側にガイドを設け差し込む形だった。ところがこの形式だと、誤装着による脱落するケースがあったという。今回のモデルではそれを防ぐためにヒンジ部分のガイドをなくし、誤装着が発生しない構造へと変更した。

USBポートなどのインターフェースは、K70では本体前面からみて左側に集約された。右側に設置してあると鉛筆の芯や消しゴムかすがポートの中に入ってトラブルが起きることが多く、これを防ぐためだという。
また落下の衝撃を受けないよう、これらのポートは左側側面の中央付近に配置されている。USB Power Delivery(PD)はType-Cが2つあり、一方で不具合が起きても、もうひとつのポートで使用できる安心感がある。
林田氏は「『5年前に導入したモデルは、今でも1日充電無しで使えます。バッテリーのもちが本当に良いですね』と先生方から言われます。K70も同様にバッテリー寿命を延ばす制御技術は受け継いでいます。また学校現場からの声を生かして、K70ではペンの収納スペースを設けています」と現場との対話が開発に反映されていることを教えてくれた。

子供たちが等しく学べる環境を提供「せっていのとびら」
ハード面だけでなく、ソフト面でも“こども目線”が生かされている。そのひとつが、子供たちが等しく学べる環境を提供するためのアクセシビリティ向上ソフトウェア「せっていのとびら」だ。これは、色覚特性に対応するカラーフィルターの設定や文字の大きさの変更、画面の明るさ調整、読み上げ機能などを直感的でわかりやすい文字やアイコンで構成し、障害特性をもつ人だけでなく、誰もが自然にその便利さに気付けるアプリとなっている。
林田氏は島根県益田市とICT活用を進めていく中で、「実際に子供たちは色がわからなかったり、文字が読みにくかったりしても、言い出せずに手を止めたまま黙って授業を受けている」といった課題が浮かび上がったことに言及。「せっていのとびら」を開発したことで、この課題を解決したことを語った。

Dynabookの教職員用Windows端末
AIによる校務の負担軽減を実現するCopilot+ PC「dynabook X94」
教育現場でも、AIの利活用シーンは増えている。
教職員用PCではDynabook初となるCopilot+ PCの14.0型プレミアムノート「dynabook X94」が展示されていた。このモデルにはインテルCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)が搭載されており、PCに高負荷がかかるAI処理もスムーズだ。
「AIの活用によって、たとえば保護者会などの文書の作成やイラスト、写真などを容易に生成できるので、先生方のタイムパフォーマンスの向上が期待されます」(林田氏)。
重量は約953gと軽量。マイクロソフトのCopilot+ PC独自の機能に加え、「dynabook AI アシスタント」「AIパワーオプティマイズ」「AIプライバシーアシスト」「AIハンドコントロール」といったDynabookオリジナルのAI機能を搭載。ネットワークに接続しなくとも文章の翻訳や要約などを簡単に行えたり、高度なバッテリー管理を行ったりすることができる。また、PC画面の覗き見防止のための顔探知プライバシー保護、遠隔からのハンドサインによる操作など、AIが校務を強力にサポートしてくれる。

PCを使い続けると必ず直面する問題が、バッテリーの消耗だ。「dynabook X94」にはユーザー自身で手軽にバッテリー交換※ができる「セルフ交換バッテリー」を搭載しており、メーカーに依頼する修理・交換のダウンタイムを削減することができる。バッテリーパックは、マニュアル不要で、一般的なドライバーを利用して誰でも簡単に取り外しができる。蓋を外してもねじが落ちないようストッパーが効いており、静電気の対策も施してあるので安心だ。なお、従来どおりメーカーのバッテリー交換サービスも利用可能となっている。 ※オプション(別売)のバッテリーが必要となる

インターフェースは、左右両サイドにひとつずつ高速なデータ転送、高画質出力、電源供給に対応するUSB Type-C Thunderbolt4ポートが搭載されている。両サイドにあれば、外出先で使用する際、電源の差込口にアクセスが良いほうで利用できる。USB Type-Aポートも両側にひとつずつあり、右サイドには有線LAN、左サイドにはHDMI出力端子やマイク入力/ヘッドホン出力端子、microSDカードスロットが搭載されている。19mm弱と薄い筐体だが、インターフェースが充実している。

タブレットに一瞬で切替わる利便性の高い「dynabook V83」
また現在、同社で指導用および校務の両方に兼用端末として多く利用されているという、13.3型タッチパネルの5in1プレミアムPenノートPC「dynabook V83」も紹介された。タブレットに一瞬で切替わるコンバーチブルタイプで、目的に合わせて多彩な使い方ができる。

薄さ約17.9mm、約979gと軽量ながら、タブレットスタイル時に画面を見ながら写真撮影が可能な約800万画素4Kのアウトカメラを、キーボードの上部に配置。児童生徒のようすや報告書用の写真など、必要なときにすぐに撮影・保存でき、撮った後にペンで書き込みや編集もできる。林田氏は「議事録や報告書の作成も、これ1台で完結できるのが強みです。先生方の作業の時短につながることでしょう」と校務効率化の具体例を紹介してくれた。
「dynabook V83」は小型ながらHDMI出力端子が搭載されており、心強い。USB Type-Cに対応していないディスプレイも多いため、HDMIを直に接続できるのはメリットといえそうだ。また、高い性能を維持しながら、動画再生時は約8.5時間、アイドル時は約24.0時間という長時間バッテリー駆動を実現しているため、業務のパフォーマンスを落とすことなく、長時間のモバイルワークをサポートしてくれる。

用途によって、ディスプレイを前にした「ノートパソコンスタイル」、ディスプレイを背面にひっくり返して使う「タブレットスタイル」、キーボードを裏にして立てて映像を見る「モニタースタイル」、専用のWacom製の静電ペンで書ける「ペンスタイル」、180度に開いて対面している人に画面を見せられる「フラットスタイル」の5通りで使用できるのも便利だ。なお、ディスプレイは映り込みが少なく、斜めからでも見やすいノングレア・広視野角液晶を搭載している。多彩なスタイルと高性能なマシンは、校務の多様なシーンで役立てることができるだろう。

GIGAスクール構想の理念にある「誰ひとり取り残されない教育」に向けて、学校へのインタビューや現地調査を重ねるなど、徹底したユーザー目線を追求するDynabook。今後もさまざまな産官学の連携プロジェクトへの参画や学校との密なコミュニケーションを通じて、子供たちのより良い学びに結び付くのではないかと感じた。さらにCopilot+ PCの投入によって、現在、激務が続く教職員の業務効率が一層、高まることにも期待したい。
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