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AI時代の校務用PCに求められるものとは? 現場を支える設計思想と次の標準

 教員の日常は、授業と会議の合間を縫って校内を移動し続ける多忙なものだ。1日を通して使える軽量・長時間バッテリーによるモバイル性の高さ、授業を妨げない静音性、そして起動遅延やトラブルによる「授業停止」を防ぐ安定性は、もはや前提条件と言える。3番目のテーマ「ハード設計」では、各社が重視する設計思想と、そのこだわりのポイントについて聞いた。

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日本マイクロソフトとエデュケーションパートナー各社が一堂に会し座談会を開催
  • 日本マイクロソフトとエデュケーションパートナー各社が一堂に会し座談会を開催
  • ASUS JAPAN 鈴木真二氏
  • デル・テクノロジーズ 河野良亮氏
  • デル・テクノロジーズ 永野純氏
  • 日本HP 松本英樹氏
  • レノボ・ジャパン 元嶋亮太氏
  • NECパーソナルコンピュータ 加藤賢一郎氏
  • 日本マイクロソフト 仲西和彦氏

 教員のPC刷新をどう進めるべきかが問われる中、Copilot+ PCは教員の働き方にどのような変化をもたらすのか。日本マイクロソフトとエデュケーションパートナー各社が一堂に会し、「校務で使うPCはどうあるべきか」を再定義する座談会を開催した。テーマは「校務DX×AI」「調達・標準化」「ハード設計」「ビジョン」の4つだ。

 教員の日常は、授業と会議の合間を縫って校内を移動し続ける多忙なものだ。1日を通して使える軽量・長時間バッテリーによるモバイル性、授業を妨げない静音性、そして起動遅延やトラブルによる「授業停止」を防ぐ安定性は、もはや前提条件と言える。加えて、校内Wi-Fi環境が必ずしも万全ではない現実や、ITサポート人材の不足、さらには児童生徒の個人情報を扱うための高いセキュリティ要件など、学校特有の制約も存在する。こうした現場の事情に対し、PCメーカー各社はさまざまな工夫で応えてきた。では、AI時代の教育インフラともいえる校務用PCにおいて、ハード設計はどのように進化し、校務用PCの選定基準にどのような影響を与えるのか。

 3番目のテーマ「ハード設計」では、各社が重視する設計思想と、そのこだわりのポイントについて聞いた。

Copilot+ PC

  AI処理をデバイス上で実行するための専用プロセッサNPU(Neural Processing Unit)と生成AI利用に必要な「言語モデル」(SLM)を搭載した、マイクロソフトが提唱するAI PC。高度なAI処理をローカルで完結できる点が特徴で、応答性とセキュリティを両立する。校務においては、単なる業務効率化にとどまらず、教材作成やデータ活用、指導の高度化を支える基盤となり、教員の創造的な時間を生み出す新たな可能性に期待される。

座談会参加者

ASUS JAPAN鈴木真二氏:システムビジネスグループ コマーシャル事業本部 営業部 シニアビジネスデベロップメントマネージャー

 

デル・テクノロジーズ河野良亮氏:公共営業統括本部 東日本営業本部 自治体・文教営業部 アカウントレプレゼンタティブ

 

デル・テクノロジーズ永野純氏:クライアントソリューションズ営業統括本部 製品スペシャリスト

 

日本HP松本英樹氏:エンタープライズ営業統括/パブリックセクターDX推進営業部 本部長

 

レノボ・ジャパン元嶋亮太氏:エバンジェリスト 製品企画本部 プロダクトマーケティング部 部長

 

NECパーソナルコンピュータ加藤賢一郎氏:コマーシャル営業本部 パートナー営業統括 本部長代理/キーアカウント営業グループ グループ長

 

日本マイクロソフト仲西和彦氏:コマーシャルデバイスソリューションセールス事業本部マーケティング戦略本部長

Copilot+ PCの特徴

--改めてCopilot+ PCの特徴についてお願いします。

仲西氏:Copilot+ PCは生成AIモデルとAI専用チップのNPUを搭載しており、通常のWindows PCよりもパフォーマンスが非常に高いことが特徴です。NPUを搭載しているPCを一般的に「AI PC」とよびますが、Copilot+ PCはその中でも、1秒あたり40兆回以上の処理ができるNPUを搭載するものに限定されます。Copilot+ PCはクラウドに依存せずローカルに搭載されたAIモデルによる処理が行われます。

 教育分野では特に教職員の方々が児童生徒の個人情報などをAIで扱う際に、クラウドに上げることを躊躇されるケースがあります。もちろんMicrosoft 365やAzureのセキュリティは堅牢ですが、いくら安全だとわかっていても、個人データなどを扱う場合、不安を感じることもあるのではないでしょうか。Copilot+ PCの導入により、自分のPC内で処理をし、外部にデータが漏れる心配がなく、外からの干渉も受けないことで、より安心して使えることが大切です。

日本マイクロソフト 仲西和彦氏

各社のハード設計のこだわり

--AI時代の校務用PCに求められる要件を踏まえ、各社が重視する設計思想とこだわりのポイントについてお聞かせください。

ASUS:持ち歩きたくなるPCという価値

鈴木氏:ASUSは、個人向け、いわゆるコンシューマーPCに強みをもつメーカーで、その領域でCopilot+ PCのシェアを拡大してきました。だからこそ、既存の需要に追随するのではなく、新しいトレンドにいち早く取り組む先見性が強みだと考えています。新しいトレンドに向かってマイクロソフトと一緒に、グローバルで素早く取り組む姿勢をもっているといえるでしょう。

 一方で、法人向けPCはまだ発展途上ですが、今後はコンシューマーと法人の垣根自体が薄れていくと見ています。将来的には教育現場でもBYOD(Bring Your Own Device、個人所有の端末を職場や学校に持ち込んで業務や学習に利用すること)が広がる可能性があり、コンシューマーに強いASUSはその流れに適応しやすいポジションにあると思います。

 また、ASUSのCopilot+ PCは高いデザイン性も特徴で、先生方が日常的に持ち歩きたくなるようなデバイスを目指しています。さらに、ゲーミングPCのラインアップもありますので、たとえば高校でeスポーツ部を立ち上げる際には、選択肢としていただきたいと考えています。

ASUS JAPAN 鈴木真二氏

デル:セキュリティを最優先とした設計

永野氏:デルのCopilot+ PCは、セキュリティを最重要視した設計が特徴です。Copilot+ PCはローカルで多様な情報を扱うため、端末そのものの安全性がこれまで以上に重要になります。デルはその点において、PC本体のセキュリティを強固に担保していることを強みとしています。

 具体的には、BIOS(Basic Input/Output System、PCのハードウェアを制御してOSを起動する基本ソフト)への攻撃に対する防御・検知・復旧(レジリエンス)機能を備えているほか、認証情報をメモリーではなく専用チップで管理することで、より高いセキュリティを実現しています。

 さらに、ハードウェア単体にとどまらず、OSやサードパーティーのアプリケーションベンダーとも連携し、セキュリティ情報を一元的に管理・検知できる仕組みを構築しています。今後、ローカルAIの活用が進むことで、端末内で扱う情報はさらに増えていくと考えられます。そうした時代において、安心安全に使える校務用PCの選択肢として提案していきたいと考えています。

デル・テクノロジーズ 永野純氏

HP:通信・セキュリティ・音/映像の最適化

松本氏:HPのCopilot+ PCは、「通信」「セキュリティ」「音/映像」の3点を重視しています。音/映像は、スピーカーやマイク、カメラといったコラボレーション機能をさします。HPは2年前にビデオ会議システム大手のPoly社を買収しており、その技術を生かすことで、音の拾い方や聞こえやすさ、映像品質などが強化されています。これにより、オンライン会議や遠隔授業といった場面でも、円滑にコミュニケーションが取れる環境を実現しています。

 セキュリティについては、米国企業として厳格な基準(NIST SP800シリーズ)に基づいた設計がなされている点が特徴です。加えて、端末の紛失時に対応できる仕組みとして、電源がオフの状態でも位置の特定が可能な機能や背後から人が近づくと自動的にプライバシーフィルターがONになる機能も備えています。PCをさまざまな場所で使うことが多い先生方にとって、こうした点は安心材料のひとつになると考えています。

 通信面では、KDDIとの協業により5G通信を5年間定額使い放題の「HP eSIM Connect」対応モデルを提供しています。これにより、校外や移動中でも通信環境に左右されずに業務を行うことが可能です。

 「通信」「セキュリティ」「音/映像」の3つの要素を組み合わせることで、場所を問わず安全かつ快適に使える環境を提供している点が、HPのCopilot+ PCの特徴です。

日本HP 松本英樹氏

レノボ:法人向け品質とメンテナンス性

元嶋氏:Copilot+ PCにも、従来のPCと変わる部分と変わらない部分があると考えています。その中でレノボは、校務を含めた法人向けに特化した設計を行っている点が特徴です。個人と法人ではニーズが異なるため、明確に分けて考えています。特に法人向けでは、長期間安心して使える堅牢性やメンテナンス性に注力しており、厳しいテストを経て製品化しています。ThinkPadは2025年以降のすべてのモデルで、ユーザーや販売店によるバッテリー交換が可能な設計に変更しており、裏蓋のネジも交換しやすい構造になっています。

 また、AI時代においても、先生が何かを作り、創造するための道具としてPCは重要な存在であり、その役割は他のデバイスでは代替できない部分があります。そこで私たちは、疲れにくく打ち間違いの少ないキーボードやタッチパッドといったインプットデバイスにもこだわり、しっかりコストをかけて最良の体験を追求しています。これはスペックには表れにくい部分です。

 さらに、Copilot+ PCのスペックは特別なものではないと考えています。ハイエンドモデルに限定するのではなく、従来から職員室で使われてきたA4ノートPCのような普及モデルまで、Copilot+ PCとして幅広く対応。学校でのさまざまな用途を考えたときに必要な要件を満たせるかを重視し、フラッグシップから普及モデルまでのラインアップを用意しています。インテル、AMD、クアルコムといった複数のプロセッサに対応し、自治体や学校のニーズに応じて幅広く提供していきたいと考えています。

レノボ・ジャパン 元嶋亮太氏

NEC:バッテリーと軽量性で現場を支える

加藤氏:NECでは「止まらないあなたに、止まらないPCを。」というコンセプトのもと、製品を展開しています。先生方の仕事は、朝、児童生徒を迎えるところから、授業や会議、事務作業へと業務が途切れることなく続くため、PCが途中で使えなくなることは、そのまま業務の停滞につながります。そのため、世界最強クラスのバッテリー性能を重視しており、忙しい先生が1日中持ち歩いてもバッテリー切れの心配なく使える設計としています。こうした安心感は、日々の校務を支えるうえで非常に重要だと考えています。

 これまでは職員室にPCを据え置いて使うケースが一般的で、教務用と校務用のPC2台持ちの運用が多く見られました。その負担は大きく、今も2台持ちはしたくないと感じている先生はいらっしゃると思います。校内を移動しながら業務を行う場面が多い中で、職員室に戻らないと作業ができない、あるいは用途ごとに端末を使い分けるといった運用は、現場の負担につながっている側面もあります。

 NECのCopilot+ PCでは、こうした現場の課題を踏まえ、長時間バッテリーを維持しながらも1kgを切る軽量モデルを実現しています。先生が場所に縛られず、どこでも同じ環境で業務ができる。そうした働き方を支える製品として、教育現場に貢献していきたいと考えています。

NECパーソナルコンピュータ 加藤賢一郎氏
Copilot+ PC特集はこちら

 各社のCopilot+ PCのハード設計には、セキュリティや堅牢性、バッテリー性能、軽量化といった校務に不可欠な要素が押さえられている一方で、音・映像の品質やメンテナンス性、デザイン性など、メーカーごとに異なる強みやこだわりがあることも明らかになった。教員が1日中PCを持ち歩き、場所にとらわれずに業務を行うことが前提となる中で、校務用PCは単なる高性能PCではなく、「AI時代の教育を支えるインフラ」へと位置付けが変わりつつある。各社が教育現場のニーズに応じた機能を提供しているからこそ、学校や自治体の方針にあわせて選択できる豊かな選択肢が広がっており、その選択がこれからの校務のあり方や教育の質を左右していくことになりそうだ。

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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