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探究学習を支えるのは心理的安全性…データ活用に挑む取手聖徳女子中学校・高等学校

 聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校の増田瑞綺先生と信州大学名誉教授の東原義訓先生による対談から、生徒主体の探究学習を実現する教員・保護者による「ワンチーム教育」の取組みやICTの役割、データ活用への期待を紹介する。

事例 ICT活用
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探究学習を支えるのは心理的安全性…データ活用に挑む取手聖徳女子中学校・高等学校
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 自立した女性の育成を目指す茨城県取手市の聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校(以下、取手聖徳)。今回は同校のICT教育を担う増田瑞綺先生(担当教科は理科)と、小中高におけるICT活用に深い知見をもつ信州大学名誉教授 東原義訓先生の対談から、生徒主体の探究学習を実現する教員・保護者による「ワンチーム教育」の取組みやICTの役割、データ活用への期待を紹介する。

増田瑞綺先生と東原義訓先生の対談がオンラインで実施された

取手聖徳は「学び屋さん」の育成を目指す

東原先生:先日は訪問させていただき、ありがとうございました。

増田先生:お越しいただいて、本当にありがとうございました。

東原先生:高校でこれほど「探究」や「課題解決」に正面から取り組んでいることに驚きました。御校は1学年あたり何クラスでしたっけ。

増田先生:全校生徒は中高あわせて184名で、高校は1学年で基本3クラス、高校3年生だけ今は2クラスです。

東原先生:これまで小中高を訪問してきましたが、御校は良い意味で小学校のようでした。ほとんどの高校の授業は講義形式で先生がずっと喋っていることが多い。それが御校はそうではありませんでした。

増田先生:授業では確かに先生と生徒、生徒同士のコミュニケーションが多いですね。

東原先生:高2の「現代文B」を拝見しましたが、生徒たちが自然に話をしていました。生徒の興味・関心を捉えて、個別最適な学びや対話的な学びを実現されている。また夏休みの宿題を外部のコンテストに出そうとしていましたね。教室だけにとどまらず、本物志向で外にも挑戦する。だから生徒の意欲もかきたてられる。御校の目指す学びには何かキーワードがあるのでしょうか。

増田先生:やはり「探究」を重視していますが、それを実現するためのキーワードが「学び屋さん」です。自分で課題を見つけて仲間と協力して課題を解決する。そうやって自走できる生徒、「学び屋さん」を育てたいと考えています。

取手聖徳は自ら探究学習を進める「学び屋さん」の育成を目指す

東原先生:拝見した授業を振り返ると、確かに「問いを見つける」ことが重視されていましたね。質問することが促され、物事を当たり前で済ませずに疑問をもつという視点が強調されていました。

増田先生:高1では、その当たり前に対して疑問を感じる力を少しずつ身に付けて、そこから話しあいを通じて、「どうして?」と思ったことを膨らませます。そして、それが課題ならばどう解決できるか、疑問ならばどう解消できるのかを考える。総合的な探究の時間だけでは実現できないので、すべての授業で「探究」を取り入れようと、どの先生もかなり意識されて取り組んでいます。

Teamsはコミュニケーションの幅を広げ、ワンチームで探究を支える

東原先生:高校でも1人1台環境をベースにICTやクラウドの活用が進みつつあります。探究活動ではどのように活用されていますか。

増田先生:探究とICTは両輪です。たとえば、生徒が「学び屋さん」になっていくと、授業以外での学習活動がどんどん増えます。Microsoft Teams(以下、Teams)でのコミュニケーションはその学びの場としてとても有効です。

 Teamsはコミュニケーションの幅を広げます。課外活動での利用も盛んで、地域にある休耕地を活用するために、ひまわりを植えて生徒たちが商品開発をする「ひまわりプロジェクト」では、生徒同士が学校での直接的なコミュニケーションだけでなく、Teamsのチャットでも情報や意見を交換しています。このプロジェクトはTeamsで全校生徒が見られるので、やってみたいと思えば参加することもできます。教員の視点では、担任している生徒がどういう活動をしているのかも見られますし、先生同士の情報共有や連携もしています。

地域と連携した「ひまわりプロジェクト」でもTeamsは重要な役割を果たしている

東原先生:Teamsの中の「ひまわりプロジェクト」を覗けば、どんな活動が行われているかがわかり、そこに興味・関心をもった生徒が徐々に参加して、先生方もワンチームで支えていく。それは探究活動の理想的な形かもしれません。

増田先生:勝手に広がっていく感じが面白いです。また国際交流のチャネルもあって、今年の夏は、先生の知り合いで海外に住んでいる方とオンラインで話す活動も実現しました。好きな時間と場所からアクセスできるので、やりたいことや興味・関心がある生徒はとても行動しやすいと思います。

東原先生:さまざまな学校を訪問すると情報検索の結果をPowerPointに貼りつけて発表するスタイルがとても多いですが、御校ではいかがですか。

増田先生:もちろん、そのような形でPowerPointを使うことは多いですね。グループワークで調べてわかったことをTeamsで共有しながらPowerPointで発表することもあります。私の化学の授業では事前に資料をTeamsで配布して、それを読んでいる前提で実験を行い、そのようすを生徒が写真や動画で撮ってTeamsにアップ。課題もすべてTeamsで実施し、授業では拾えなかった生徒からの質問にもTeamsで対応しています。また卒業研究論文の添削指導もTeamsで行っています。グループ活動の全体共有や発表もやりやすいですね。

東原先生:PowerPointのみですと単なる発表で終わってしまう懸念もありますが、Teamsの活用によって、協働的な学びになり、継続的な学習活動が実現しているのですね。

School Data Syncでアカウント管理の手間を削減、保護者連絡もデジタル化

東原先生:授業以外ではICTをどのように利用しているのでしょうか。

増田先生:コロナ禍で保護者面談が難しいときに、Teamsのビデオ会議を使いました。また先生同士がTeamsで生徒の情報を交換することも多くなり、「あの生徒は今日もちゃんと過ごせたかな」といった、生徒ひとりひとりのキャッチアップもやりやすくなりました。OneNoteでは学校行事、受けてきた検定、オープンキャンパス等で生徒自身が感じたことや体験したことを記録して、経験を次に生かすための振り返りにも活用できています。今は、生徒のポートフォリオとしてもOneNoteが使われています。

東原先生:先生方が普段からワンチームで生徒を支えているのは素晴らしいですね。OneNoteによる学習の広がりにも期待できます。保護者とのコミュニケーションでは他にどんな活用をしていますか。

増田先生:今年の4月から全校生徒の保護者をゲストユーザーとしてTeamsに招待し、それまで紙で行っていた学校からの連絡をすべてTeamsに移行しました。それに加えて、Teamsでメッセージが届くと保護者へメールが送信されるよう、Power Automateも設定しています。紙で連絡していたときは、生徒がなくしてしまったり、渡し忘れてしまったりといったことが起きていましたが、その心配もなくなりそうです。保護者とこれまでよりも密な情報共有ができるように感じます。

東原先生:保護者のTeamsアカウントを登録するのは大変ではありませんでしたか。保護者や生徒の情報がバラバラに保存されているということもよく聞きます。

増田先生:メールアドレス等の保護者情報と学年、クラス、授業等の生徒情報は年度更新をしたうえで、校務支援システムで管理しています。Teamsのアカウント作成時には、校務支援システムの情報と紐づけるためにMicrosoftのSchool Data Sync(以下、SDS)を利用しました。前と比べればアカウントの登録もかなり楽になり、二重に管理されていたものが1つにまとまったので管理の負担も軽減されたと思います。

School Data Sync(SDS)とは

School Data Sync(学校データ同期、SDS)は、学校の管理者が校務支援システムにある学校・生徒情報のデータをAzure ADに読み込むための無償のツール。生徒や教員のMicrosoft 365アカウントの作成や履修情報をベースとしたTeamsを作成することができる。また保護者情報をCSVファイルで取り込んで生徒アカウントと紐づけて同期することも可能だ。

リアルとICTによるコミュニケーションが子供たちの成長を促す

東原先生:探究活動をはじめとして学校内外でICTを自然に利用してコミュニケーションを取っているのがとても印象的ですが、そもそも入学時からICT活用が得意な生徒が多いのでしょうか。

増田先生:学校説明会等で、取手聖徳の生徒はこんなことをやっていますと紹介すると、どの保護者さんも「それは最初からできる子たちが入っているからでしょう」と言われます。でも、そんなことは本当になくて、中学校で大変な経験をしたり、勉強でなかなかうまくいかなかったり、人前での発表も難しく、友達と話すのにも気を使ったりといった子も多いんです。それが取手聖徳の一体感のあるアットホームな雰囲気のおかげで自然とコミュニケーションが生まれてくる。委員会活動をはじめ、学年やクラスを問わず生徒同士が話せる関係は、入学後に生徒自身が成長していった結果だと感じています。

東原先生:先日、授業を拝見していても思いましたが、まずリアルでのコミュニケーションがうまくできているからこそ、より自由に、いつでもどこでもコミュニケーションを取るためにデジタルツールを活用している感じですね。

増田先生:入学後に「SEITOKU Freshmen’s Camp」という宿泊行事を2泊3日で実施しています。そこでは構成的グループエンカウンターという人間関係づくりを促す取組みを3日間かけて行います。映画の「E.T.」のように指と指を合わせてみるところからはじまり、体育館で歩きながら、次は挨拶をしてみよう、自己紹介をしてみよう、名刺交換をしてみようと、知らない人や初めて会う人とのコミュニケーションを学んでいく。この取組みを通じて、ここなら話して良いんだ、ここなら自己開示して良いんだ、と気付いてもらい、徐々に話せる関係性にしていきます。これがないと探究の授業は成り立ちません。

東原先生:それは素晴らしいですね。

生徒同士のコミュニケーション力が取手聖徳の探究学習の基盤となっている

増田先生:私が昨年まで担当していた生徒たちは、高1から高3までずっと同じメンバーでした。彼女たちの中には、中学校では講義型の授業で取り残されて自己肯定感が低かった子もいたのですが、取手聖徳のアットホームな雰囲気で過ごすうちに、段々と話せるようになり、自己開示ができるようになったようでした。その助けになったのはTeamsです。口頭での会話が得意な生徒と同じようにテキストでのコミュニケーションが得意な生徒もいます。Teamsを活用することで、話せる場も広がり、話せる子がどんどん増えて自然とみんなが話せるようになりました。高3では「聖徳祭」で校外の見学者の前で卒業研究の発表ができるまでに成長してくれました。

今後のデータ分析への期待と挑戦

東原先生:探究の取組みをデータで可視化して、さらに質を向上させることも視野にありますでしょうか。特に、Teamsには「Education Insights Premium(以下、Insights) ※」があり、Teams上の生徒のアクティビティがデータで可視化できます。

※Education Insights Premiumで課題提出やOneNote編集、投稿に対するリアクション等、Teams上のアクティビティを集計し可視化することができる。

増田先生:Insightsには期待しています。今後、さらにデータが蓄積されれば、さまざまな角度からさまざまなことが見えるようになるでしょう。先日、Insightsはどんな感じかとチェックしていましたが、生徒のTeams上の投稿数に対して、返信数がとても多いことに気付きました。積極的に発言しているクラスのチャネルでは、投稿数に対しておよそ5倍の返信があります。これは取手聖徳の雰囲気の良さを表すデータだと感じました。たとえば、入学から卒業までの生徒の変化をデータで可視化できるかもしれませんね。

東原先生:他校では、投稿してもまったく返信がない状態で、単に授業内容を知らせる掲示板になっているケースも耳にします。御校は授業でも疑問や質問をベースにしているので、データにもそれが明確に現れるかもしれません。今後はペーパーテストで測れる力だけでなく、御校で取り組む探究の力がどう養われているのかを、蓄積されているデータやポートフォリオ等から多角的に可視化できると良いですね。

増田先生:そうですね。探究しているということがどういう状態なのか、またコミュニケーションの質がどう変わったかを数値で表して、それをまた先生方と共有できれば良いと思います。

東原先生:たとえば、生徒が書き込むときにハッシュタグを付けて発言すると、生徒の書き込みの傾向がどのように探究に結び付いているか、そのための問いになっているかが分析できるかもしれません。

増田先生:今の子供たちはSNSでハッシュタグに慣れているでしょうから、それは試してみたいです。

東原先生:どんなハッシュタグを付ければ良いかを、みんなで考えるのもお勧めです。また、高校生ならば、たとえばExcelでクロス集計してみるなど自分でデータを分析してみるのも良いと思います。

増田先生:たしかに、データを教員が見るだけではなく生徒に還元したいですよね。生徒自身が行動を可視化して、成長を促せたら良さそうです。

※より高度なテキスト分析はOpen Edu Analyticsで使用できる。

探究による学びは「挑戦」

東原先生:御校を見ていて感じたのは、やはり探究の学びや活動は「挑戦」だということです。

増田先生:私たちの探究活動は「取手聖徳プロジェクト」とよばれていますが、そのプロジェクトの部長は「みんなで“なぜ”を大事にしよう」とよく言っています。

東原先生:その“なぜ”を繰り返せば、学校の外にも活動は広がりますよね。それもやはり「挑戦」で、挑戦するためには安心できる家庭や学校がとても大事です。御校は、先生や保護者が密に連絡を取りあい、ワンチームでアットホームな環境を作り出している。その安心感があるからこそ生徒は「挑戦しよう」という気持ちになるのだと思います。そしてデジタルツールを活用して挑戦のようすをみんなで見守り、情報交換もできる。理想的な環境ですね。

増田先生:今後はデータ分析によって、できることも広がるかもしれません。私たちも楽しんで挑戦したいと思います。

東原先生:期待しています。ありがとうございました。

 現在、多くの学校で「探究」をキーワードとした教育活動が実践されているが、その成否は教員・保護者がワンチームとなって実現する「心理的安全性」に根差すということが、この対談を通じて理解できた。SDSの導入でアカウント管理のしやすさによる校務負担の軽減やInsightsによるデータ可視化のメリットがあるが、そのどちらもが結果的に生徒の心理的安全性を支える環境を作り出している。教員・保護者が一丸となり新たな挑戦を続ける取手聖徳のさらなる進化に期待したい。

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《佐久間武》
佐久間武

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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