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【相談対応Q&A】紙の宿題に戻してほしい

 学校に寄せられる相談「紙の宿題に戻してほしい」について、クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、対応する際のポイントを聞いた。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第242回のテーマは「GIGA端末でなく紙の宿題に戻してほしい」。

バランスが大事

 欧米諸国で教育においてタブレット/PCなどを積極的に活用していくことをやめたというニュースがありました。そういったことと関連して、保護者がGIGA端末の使い方について何らかの申し出をしてくることがあります。保護者が直接関わるところで宿題に関してGIGA端末を使った宿題ではなく、従来行われていた紙などを使った宿題の形にしてほしいという申し出をしてくることがあります。

 このテーマに関しては、結論から言うと「バランスが大事」ということになると思います。GIGA端末を活用した宿題や日常的な学習は大切です。個に応じた学びに対応しやすいですし、これから大人になり、社会の一員となっていく今の子供たちは、将来、仕事でもプライベートでも、タブレット/PCなどを使っていくはずです。そういったものを適切に活用していくことはこれからを生きていく彼らにとっては必須なことでしょう。GIGA端末を使うことによるトラブルなどが発生した場合は、それを将来に生かす形で学びの機会としていくことが大切でしょう。

 ただ、「紙の方が良い」という意見も一理あります。何でもデジタルを活用して学ぶことで良い学びができる訳ではありません。手を使って、紙を使って取り組むことの方が効率よく学ぶことができる内容もあります。形だけGIGA端末を活用するような授業や宿題では良い学びにはつながりません。

その状況における最適解を考える

 今回のテーマだけでなく、多くの物事は、「白か、黒か」ではないと思います。白でもなく、黒でもなく、「どのようなグレーが良いのか」を考えていくことが求められています。白か、黒かのようにわかりやすく決められるものの場合、考えるまでもなく、それで決まります。極端な例ですが、「人を殺して良いか」というテーマでは、「殺してはならない」に決まっています。そうではなく、少し悩ましいテーマだからこそ、何が最適なのかを探ることが必要となります。「人に嘘をついて良いか」というテーマでは、「嘘をついてはダメだ」という絶対的な答えではなくなります。基本的には嘘はつくべきではないですが、状況によっては、嘘をつく方が良い状況もあります。病気の告知などがそれにあたります。真実を伝えることで、その人が大きな悲しみやダメージを受けてしまう場合、嘘をつくことが良い場合もあります。どんなグレーがその状況においては最適なのかを考えることが求められます。

 それなのに、学校を含めた社会においては、白か黒かのような極端なことを主張する人がいます。特に政治の世界においてはそういった人が多いように感じます。わかりやすく、伝わりやすい言葉を選ぶ必要があるからなのだと思いますが、あまりに思慮に欠け、配慮が足りない、しっかりと考えていないような話が聞こえてきます。

 そういった状況だからこそ、学校においては、しっかりと考えることができる人を育成していきたいです。学校では、多くのことで、何が最適なのかを探すことが求められます。今回のテーマであるGIGA端末に関しても、いくつもの考える必要のあることがあります。宿題に関しては、子供の年齢や学びの取り組み方などによって、GIGA端末が良いか、紙が良いかが変わってきます。もちろん、内容によっても変わります。そういった状況を踏まえながら、どういったものが良いのかを学校(教員)、家庭(保護者)、そして子供を交えて探っていくことが大切でしょう。それぞれの学校、学級、家庭にとっての最適(グレー)が見つかるはずです。見つけていく過程も良い学びとなるはずです。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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