GIGAスクール構想のスタートから約5年が経過し、新たなフェーズ(GIGA2.0)では「端末を最大限に活用し、学びの質を高めること」が重要視されている。デジタル時代の学びを深化させるためには、端末本体の性能はもちろんのこと、その学びを途切れさせず、ICT環境を支える周辺機器が不可欠である。「壊れにくく、迷わず使え、授業を止めない」機器の選定は、GIGA2.0における重要な課題のひとつとなっている。
オーストラリア発のPCアクセサリーブランド「STM(エスティーエム)」は、世界の教育市場で培ったノウハウを生かし、堅牢な設計と運用のしやすさを兼ね備えた製品を展開している。本格的な日本展開は2024年秋からだが、すでに国内で27万台以上が契約されている。
今回はSTMの、最高執行責任者のウェイン・ファルクナー氏(Wayne Faulkner/COO)、共同創設者で製品責任者のアディーナ・ジェイコブス氏(Adina Jacobs/Co-founder, head of product)、教育市場責任者のマシュー・ゴルスキー氏(Matthew Gorski/Director of Education Sales)の3名にインタビューし、GIGA2.0における教育現場に求められる「ICT活用を支える周辺機器の重要性」について聞いた。
壊れない、迷わない…授業を止めないために考えぬかれた設計
--STMが日本で展開しているiPad専用キーボード一体型ケースについて教えてください。
ジェイコブス氏:私たちが日本で展開しているのは、「STM Dux キーボード一体型ケース USB-C(第10世代iPad/A16チップ搭載iPad用)日本語配列(以下、STM Dux キーボード一体型ケース)」です。この製品は、JIS規格の日本語キーボード(かな印字あり)を搭載するなど、日本での運用に特化し、導入後すぐに使えるように設計・開発されました。

接続方式はケース一体型のUSB-Cケーブルによる有線接続を採用しており、ケースに内蔵しているケーブルを直接iPad本体に挿すだけで利用できるので、Bluetoothのようなペアリング設定は不要です。また、キーボードはiPad本体から給電するため、充電も不要です。「授業中につながらない」「電池が切れた」といったトラブルが起きないように設計しているため、ICTに不慣れな先生にも安心して使っていただけます。
--ケーブルをつなぐだけですぐに使えるのは簡単ですね。ほかにはどのような特徴があるのでしょうか。
ゴルスキー氏:製品設計の際、私たちは常に「児童生徒や先生がどのようにiPadを使うか」を考えています。何百台、何千台と同じ端末を使う学校現場では、識別や管理のしやすさがとても重要です。そこで、STM Dux キーボード一体型ケースは背面を透明にして、学校で運用するための管理シールや名前ラベルをケースの内側に貼り付けられるようにしました。これによりラベルがはがれる心配もなく、どの端末が誰のものかをひと目で識別できるようになります。
また、GIGA2.0ではスタイラスペンが必須となりましたが、STMのケースはペンホルダーにも工夫があります。弾力性のあるゴム製のリングを採用し、Apple Pencilをはじめ太さの異なるペンの収納にも柔軟に対応しています。リングを外せばより太いペンも収納でき、持ち運び時に落としてしまう心配もありません。ケース側面にはUSB-Cポートを備えており、ケースを装着したままiPad本体の充電やデータ転送が可能です。iPadから給電してApple Pencilを充電することもできます。さらに、3.5mmのオーディオポートが付いているので、すでに持っているヘッドフォンやイヤホンをケーブルでつなげるだけで使うことができます。

ジェイコブス氏:さらに、端末の堅牢性と軽さの両立にもこだわりました。STM Dux キーボード一体型ケースはわずか584g、iPadを装着した状態でも1,061gとコンパクトで持ち運びやすい設計です。ケースのフレームには軽量で衝撃吸収性能が高い素材を採用し、児童生徒が負担なく日常的に持ち運べます。
スタンド部分は180度まで自由に開く無段階調整構造で、しっかりと端末を支えながらも、上から強く押された場合には壊れずフラットにたたまれる構造になっています。子供たちはときに思いがけない力を加えてしまうものですが、力が加わっても破損しないように設計しました。

さらに、キーボード部分を背面に折り返すと内蔵の磁石が反応し、自動的にスクリーンキーボードモードに切り替わり、同時に物理キーボードが無効化される仕組みになっています。誤入力や勝手に画面が切り替わるといった誤作動を気にすることなく、トラブルなく、タブレットモードでスタイラスペンや指を使って作業をすることができます。
このように私たちは、あらゆる使い方・トラブルを想定し、子供たちに「注意深く使う」ことを強いるのではなく、どのような状況でも「授業を止めず」「ストレスなく」活用できることを念頭に、細部に至るまで工夫しています。
子供の“使い方”を想定した構造、KeyKeepと徹底した耐久テスト
--教育現場のさまざまな場面、児童生徒のあらゆる行動を想定して設計しているのですね。
ファルクナー氏:そのとおりです。キーボードの製品化に着手した8年前は、キーの四隅だけを固定する一般的な構造でした。しかし、実際に学校で使ってもらうと、児童生徒はペンや定規を使って隙間からキーを外したり、日本の事例ではありませんがキーボードにピーナッツバターを塗ってしまったりということもありました。私たちはそうした出来事をひとつひとつ丁寧に受け止め、「なぜそうしたのか」「どのような場面で起きたのか」などを真剣に分析しました。
ジェイコブス氏:結果として誕生したのが、STM独自の「KeyKeep(キーキープ)」構造です。キーキャップの四辺をフレームで囲んで隙間をなくし、こじ開けられないようにしました。また、飲み物をこぼしたとしてもキーボードの内部には水が入りにくく、屋外で使う際には砂埃も入らないようになっているので、安心して使っていただけます。STM Dux キーボード一体型ケースには、教育現場でのさまざまな使われ方に思いを寄せながら改良を重ねてきた成果が細部に生きています。

--どのような耐久テストを行っているのでしょうか。
ゴルスキー氏:STMのケースは、米国国防総省が定めるMIL-STD-810H規格をすべてクリアしています。高さ1.2メートルから26方向に落下させる試験では、さらに一歩踏み込み、通常の合板ではなくコンクリートの床面で試験を行っています。児童生徒が教室や廊下で使用することを想定して、より厳しい条件で検証しています。

このほかにも、スタンドのヒンジは3万回の開閉試験、USB-Cの接続部は1万回の抜き差し試験、カバーのフラップ部に用いた磁石は2万回の開閉試験を実施し、緩みや断線、保持力低下が生じないよう設計しました。キーボード部分では300万回の打鍵試験と、消しゴムやアルコールを使用した複数の耐摩耗・耐久性テストを行い、文字擦れや打鍵感の劣化がないことを確認しています。ケース表面のファブリックは、ジュース、アルコール、油分、クリームなど10種類以上の液体を塗布して劣化や変色の有無を検証するなど、想定される日常環境をほぼ再現して評価しています。
ジェイコブス氏:こうした試験結果は公式サイトで公開しています。「数値」で示すことで、実際に使用する先生方や児童生徒の皆さん、保護者の方の信頼につながると考えているからです。私たちは世界中から得たフィードバックをもとに、常に改良を続けてきました。KeyKeepも、耐久性も、そして小さな改良の積み重ねも、そのすべてが「学びを止めないための設計」へとつながっています。
STM Dux キーボード一体型ケース耐久テストの詳細はこちら
先生にも子供にも優しい“使う人すべて”を想定した設計
--壊れにくいだけでなく、長期にわたって安心して使えるように設計されているのですね。保証期間はどのように設定されているのでしょうか。
ジェイコブス氏:教育市場向けの製品ですので5年間の保証期間を設けています。当社の製品は不良率や故障率がきわめて低く、保証をお使いいただく機会は多くありませんが、約5年とされているGIGA端末のリプレイスサイクルに合わせて設定しました。品質、価格、保証のすべての面で教育現場に貢献できる製品だと自信をもっています。
--実際に使っている学校からはどのような声が寄せられていますか。
ジェイコブス氏:私たちは、先生や児童生徒だけでなく、保護者、ICT支援員まで、すべての利用者が安心して使える製品を目指しています。授業のスムーズさや学習の継続性を損なわないために、あらゆる立場の利用者の声を設計に反映させてきました。私たちの製品は世界中の教育現場で使われていますが、「ストレスなく使える」「学びに集中できる」と評価していただいています。
教育とともに歩むSTMの27年、世界で支持される品質
--STMは創業以来、教育市場に深く関わってきたそうですね。
ファルクナー氏:私たちは1998年の創業以来、教育とともに歩んできました。私たちのスタイルは、製品を売って終わりではなく、導入後も学校を訪問し、使われ方を観察して改善を重ねることです。児童生徒の使い方を理解し、先生や保守担当者の声を聞き、次の設計に生かす。この積み重ねを27年間続けています。
STM Dux キーボード一体型ケースは現在、英語・日本語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・スイス(独語/仏語)・カナダ仏語・ノルディックなど、7言語以上のキーボード配列で世界に提供しています。地域によって教育スタイルはさまざまですが、どの国からも「品質の高さが学びを支えている」という共通のメッセージが届いています。世界中の皆さんが安心して使えることが、私たちの誇りです。
日本の教育市場は、私たちの製品開発姿勢にとても近い部分があると感じています。日本の先生や教育委員会の方たちは、細部にわたる品質や仕上がり、使用感に強いこだわりをもっています。STMも同じく、素材選定から検査工程に至るまで細部を大切にしてきました。いわば「几帳面さ」という共通項で結ばれていると感じており、互いに信頼しあえる関係性を築いていきたいと考えています。
また、日本にはものを丁寧に扱う文化があります。その中で「壊れにくさ」や「長く使えること」は、単なる機能ではなく「ものを大切に使う教育」の一部にもなり得ると思います。私たちは、そうした文化を尊重し、教育を支える製品づくりを意識しています。世界で培った設計力と、日本の教育がもつ丁寧さが融合することで、より高いレベルの品質を提供できると確信しています。
高い機能性と確かな堅牢性で“学びの質”を支える品質を提供したい
--日本の教育現場に向けて、メッセージをお願いします。

ファルクナー氏:先生は教えることに、児童生徒は学ぶことに集中してほしいと考えています。テクノロジーはそのための道具であり、煩わしさを増やすものであってはなりません。学びの現場では、トラブルの少なさや安定した操作感が、児童生徒の集中力や先生の授業の質に直結します。だからこそSTMでは、高い機能性と確かな堅牢性を追求したデザインを心がけているのです。
私たちは「教育のパートナー」として製品を通じて、子供たちが安心して学び、先生が教えることに集中できる環境をサポートし続けたいと思っています。STMの社名であり理念でもある「Smarter Than Most(より賢く)」には、人と人との関係をより賢く築いていきたいとの想いも込められています。製品の品質だけでなく、教育に関わるすべての人との関係性を大切にしてきた27年の歩みを、日本の教育現場にも根付かせていきたいと考えています。
STM製品の、使う人の立場に立った設計が貫かれている“親切さ”が印象的だった。同社の製品は、単なる周辺機器を超えた「学びのパートナー」といえるだろう。人に寄り添う技術が、教育を支える。STMの姿勢は、そのことを改めて気付かせてくれた。「Smarter Than Most」という彼らの理念が、確かな品質となって日本の学びを長きにわたり支えていくことだろう。
STM Dux キーボード一体型ケース USB-C【GIGAスクール・教育市場向け】














