スタディポケットは2025年11月25日、全国の小中高校における教員・生徒の生成AI利用データ約500万件を分析した「学校現場の生成AI活用実態レポート(2025年冬版)」を公表した。調査から、一部の教員が活用を牽引している実態などが明らかになった。
同調査は、2025年5月17日から11月11日までの180日間にわたる約500万件の利用ログをもとに、特に教員の活用に焦点をあて、「誰が」「どの教科で」「どれくらい深く」生成AIを活用しているのかを定量的に分析したもの。分析にあたっては、文部科学省のガイドラインなどに則り、個人を特定できない統計情報のみを使用するなど、情報セキュリティおよびプライバシー保護に配慮している。
教員の生成AI利用量を分析したところ、上位5%の教員だけで全体の約38%のメッセージを生成していることが判明した。上位20%の教員までみると全体の約73%を占めており、特定の活用頻度の高い教員が学校内のAI活用を牽引している実態が浮き彫りになった。
一方で、学校ごとの活用状況は二極化する傾向がみられた。トップ20%の教員がメッセージの90%以上を占める「特定教員依存型」の学校と、多くの教員が日常的に利用している「組織浸透型」の学校に分かれており、校内普及のフェーズに応じた支援の重要性がうかがえた。特に「特定教員依存型」の学校は、活用が進んでいるように見えても、属人性が高く、異動などで失速するリスクがあると分析している。
教科別のメッセージ総量では「英語」が1位となった。翻訳や英作文添削、会話文の生成など、大規模言語モデル(LLM)の得意領域と教科特性が合致していることが要因とみられる。1人あたりの平均活用回数では、「公民」「地理歴史」「探究学習」「総合的な学習の時間」などが上位に入った。これらの教科では、正解が1つではない社会課題に対する議論の整理や多角的な視点の提示など、生成AIを「思考のパートナー」として深く活用しているようすがうかがえる。
主要5教科の中では、「数学」の1人あたり平均利用数が相対的に低かった。これは、従来のテキストベースの生成AIが数式の正確な処理などを苦手としていたことや、授業スタイルとの親和性が模索段階にあることを示唆している。しかし、練習問題の大量生成など補助的な利用での可能性も指摘されている。
生徒の利用が教員の活用に与える影響についても分析。生徒も生成AIを利用している学校では、教員のみが利用している学校と比較して、教員1人あたりの平均メッセージ数が約1.6倍に達した。活用頻度の高いヘビーユーザーの出現度合いも約1.6倍となっており、「生徒が使い始めることで、教員自身の活用も加速する」という好循環が確認された。生徒への活用指導や質問への対応が、教員自身の学習意欲を刺激するためと考えられる。
さらに、スタディポケットの機能である「プロンプトテンプレート作成」を行っている教員がいる学校では、そうでない学校に比べて教員自身のメッセージ数が約2.6倍に達していることもわかった。
管理職のAI活用度と、その学校の一般教員の活用度の関係性も明らかになった。校長・教頭などの管理職が生成AIを積極的に活用している学校では、一般教員のアクティブ利用率が88.5%に達し、管理職が未利用の学校(72.2%)より16ポイント以上高い結果となった。また、管理職が深く活用している学校では、一般教員のヘビーユーザー率が管理職未利用校の約1.6倍にのぼり、管理職自らがAIを使いこなす姿勢が、組織全体の活用文化を醸成する鍵であることがデータから示された。
同調査の詳細は、2025年12月4日にオンラインで開催される「スタディポケット カンファレンス 2025冬」のセッション「500万件のデータ分析に基づく知見」にて発表される。参加費は無料で、事前申込みが必要。対象は学校・教育委員会関係者、塾・教育産業関係者、保護者、学生など。
◆スタディポケット カンファレンス 2025 冬
日時:2025年12月4日(木)16:00~18:15
形式:オンライン(Zoomウェビナー)
対象:学校・教育委員会関係者、塾・教育産業関係者、自治体、官公庁・省庁、教育関連企業、パートナー企業、保護者、学生・教職課程など
参加費:無料
定員:500名(先着順)
申込方法:Webサイトより申し込む












