旺文社は2026年2月9日、全国の高校におけるICT機器・サービスの導入・利用状況および生成AIの活用実態についてアンケート調査結果を発表した。2026年で10回目となる同調査では、全国547校の高校から回答を集計し、直近の実態調査に加えて10年間の推移データをもとにした動向分析を行った。
高校で導入されている生徒用ICT端末の種類は、引き続き「タブレット型」が主流となっている。端末の機種については「学校指定」の割合が71.5%と多いものの、昨年度より4.4ポイント減となった。対して、「個人費用負担/機種の指定なし」の回答割合が23.2%と昨年度より4.6ポイント増となり、AI需要やメモリ価格の高騰でICT機器が値上がりする中、「家庭が端末費用を負担する代わりに機種の選択は自由」とするケースが増えている。
一方で、生徒の使用する端末の種類が多様になるほど、学校側での対応・管理が煩雑になるという課題もあり、ICT端末活用上の課題として、「充電切れや故障などへの対応」の回答割合が48.6%に上るなど、経済的合理性からの判断が、必ずしも教室現場の良質なICT環境構築には直結していないことがうかがえる。
「ICT活用の必要性を感じるポイント」についての調査では、「映像授業・動画視聴」「オンライン遠隔授業」「リモートでの課題配信」「生徒や保護者との連絡」などの回答割合が増加し、昨年度調査で見られた「リアル回帰」の傾向から一転して、コロナ禍の期間に見られたような需要の揺り戻しが起きている状況である。
生成AIなどの新しい技術を取り入れる動きの影響も受け、ICTだからこそ実現できることの価値が見直されているようである。また、「情報・探究などの授業」「クラブなど課外活動」の回答割合も伸びていることから、高校でのあらゆる活動にICTが浸透し、活用の幅が広がっていることがわかる。
昨年度から設問に加えた生成AIの活用についての調査では、「授業や生徒指導にかかわる校務」「学校運営にかかわる校務」「学校行事や部活動」「保護者への対応」の4項目すべてで、「まあまあ活用できている」の回答割合が大幅増、「まったく活用できていない」の割合が大幅減となった。
「まあまあ活用できている」「あまり活用できていない」を合計した「中間回答層」の割合が全体の8割水準となり、利用実態が過渡期を迎えている状況である。一方で、検索エンジンや映像通話サービスなどにもAI技術が組み込まれるようになり、「もはや利用を避ける方が難しいが、しっかりとした運用ルールがないまま、教員や生徒のリテラシーを養えるか不安」という意見もあがった。
生成AIの利用が、この10年間で急拡大したICT活用と同じような道をたどって浸透していくのか、今後に注目である。
高校におけるネットワーク環境についての調査では、「校内のどこでも無線でのネットワークを使用できる」の回答割合が昨年度調査と変わらず半数を超えた。通常授業で無線ネットワークを利用できる高校は合計85.4%を超えており、インフラ整備率として高止まりしている。
一方で、ICT活用における課題として、「安定したネットワーク環境の整備」の回答割合は54.7%と、昨年度から1.6ポイント増となり、ネットワーク整備率の高さに反して課題がある状況である。「インターネットを使用する機会が増えることに伴い、回線が繋がらなくなることも増えてしまった」という回答も見られ、スムーズな通信を保障するネットワーク回線の質が問われている。
2017年度から開始した同調査で得られた10年間の推移データをもとに、高校を取り巻く教育ICT環境で起きた変化をまとめると、GIGAスクール構想の推進やコロナ禍のオンライン需要もあり、2021~2022年度を境に「有線のみでネットワークを使用できる」高校が大きく減少し、加速度的に無線ネットワーク環境の整備が進んだことがわかる。
モバイル端末配備の拡大とあわせ、2023年度には「通常教室で無線ネットワークを利用できる」高校が8割を超えた。「校内のどこでも無線ネットワークを使用できる」高校の割合は、10年前には1割未満だったが、2025年度に5割を超え、この10年での劇的な変化が見て取れる。
10年前の2017年度調査では、「活用できている」意識と「活用できていない」意識の高校が、およそ半数に二分されていたが、徐々に「活用できている」派が増え、2025年度以降は8割を超えている。「十分活用できている」の強い肯定回答割合はコロナ禍中の2021年度に1割を超え、2025年度以降は2割超の水準を維持している。
10年間の調査を通じ、「ICT活用における課題」として変わらずトップの回答割合だったのは、「教員の活用スキル引き上げ」である。「活用できている」ことの意識が向上する一方で、こちらは不変の課題であると言える。
「十分な端末数の配備」を課題にあげる割合は、1人1台の端末配備が浸透した2022~2023年度に急落。ただし、2025年度から選択肢に加えた「充電切れや故障などへの対応」は5割弱と高い回答割合で、運用面での課題はいまだに根強いようである。
また、コロナ禍中の2022年度から「生徒の情報モラルの向上」の回答割合も急激に伸び、最新の調査では66.2%と存在感を示している。生徒への教育や情報管理については、ICTを通したコミュニケーションの難しさや、利用サービスの増加に伴うアカウント管理の煩雑さも課題にあげられている。
高校でのICT端末配備率とネットワーク環境整備率はほぼ頭打ちとなり、ICTは特別な道具から、なくてはならないインフラのポジションを獲得した。ただし、強力かつ安定した通信回線や、端末・アカウントについての細々とした管理、生徒のモラル教育やルール作りなど、まだ課題も残っている。
同調査も節目となる10年を経て、GIGAスクール構想やコロナ禍などによる大きな変化をデータとして可視化したが、生成AIの登場などにより、高校を取り巻くICT環境は、この先もさらに変わっていくことが予想される。旺文社はこれまでの調査で得た知見をもとに、今後も高校での校務・授業の支援になるようなサービス提供や情報発信を推し進めていく。














