大阪大学では、グローバル競争の激化や優秀な人材の獲得競争、財政的な課題など、現代の大学が直面するさまざまな課題に対応するため、全学的なDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を推進している。これは大阪大学の中長期的な経営ビジョン「OUマスタープラン2027」に基づき進められている。また、教員組織として「OUDX推進室」を、事務部門に「情報推進部デジタル戦略推進室」を設け、教職協働でDXを推進しているという。
今回は、情報イノベーション機構OUDX推進室所属で教授の鎗水徹氏、同じく准教授の釜池聡太氏、情報推進部デジタル戦略推進室長の中村太氏、情報推進部デジタル戦略推進室の喜多真一氏に、その取組みについて詳しく話を聞いた。
DX推進の背景と課題
大学におけるDX推進には、特有の課題が存在する。鎗水氏は「学部・研究科といった各部門単位での自治が深く根付いていることや、教員と職員の壁があることなど、大学全体で変革するのは非常に大変」と語る。また、企業であれば情報システム部門が一括管理するところを、各部門が独自にシステムを構築している状況も課題としてあげられる。
そうした中、大阪大学では、以下のような課題に直面していた。
組織的な課題
・各部門単位での自治が深く根付いており、全学的な改革が困難
・教員と職員の間に意識の壁が存在
・職員は2~3年で人事異動となるため、新規施策の継続性が確保しづらい
・研究者が自身の研究に特化しがちで、大学全体の取り組みへの参画が限定的
システム面の課題
・情報システム部門による一括管理ができていない
・各部門が独自にシステムを構築し、情報が分散
・データの統合や活用が困難
DX推進上の課題
・専門人材の不足
・予算の制約
・明確な戦略の不在
・組織改革のノウハウ不足
これらの課題に対し、大阪大学では「OUID(大阪大学統合ID)プロジェクト」を基盤とし、「OU人財データプラットフォーム」「業務DXと人材育成」という3つの主要プロジェクトで解決を図っている。