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【NEE2025】Future Class Room、高速印刷複合機など、展示ブースレポート

 2025年6月5日~7日、NEW WDUCATION EXPO 2025東京がTFTビルで開催された。会場内は、GIGAスクール構想をはじめとする教育ICT、教育DXに関するさまざまな製品・サービスが展示されたほか、各分野における専門家によるセミナーも数多く開催され、多くの教育関係者で賑わった。

イベント 教員
NEE2025東京
  • NEE2025東京
  • 大盛況で立ち見の人も大勢
  • 参加者・観客から集められたアンケート結果を、AIが瞬時に分類して表示
  • テーマに沿った提案がなされた。ユニークな提案で会場中が笑いに包まれる場面も
  • カメラで撮影された観客の表情や動きのデータから、観客の状態を分析しグラフにしてくれる
  • 内田洋行「L-Gate」
  • エプソンの高速印刷複合機。サブスクリプションサービスの「アカデミックプラン」なら印刷コストを抑えられるため、カラー比率をあげられるはずだ
  • カシオの「Class Pad」は、2026年3月よりLibryと共同で新サービスを提供予定

 2025年6月5日から7日の3日間、NEW EDUCATION EXPO 2025東京(以下、NEE2025東京)がTFTビルで開催された。会場内は、ICT&ネットワーク/セキュリティ」「ハードウェア&学校設備」「教材・教具&理化学機器」「教育ソフトウェア&コンテンツ」「未来の教室を体験!Future Class Room」のカテゴリ別に100社を超える企業が出展したほか、各分野における専門家によるセミナーも数多く開催され、多くの教育関係者で賑わった。

 この記事では、NEE2025の注目の展示製品を紹介する。

AIがアシストする未来の教室「Future Class Room」

大盛況で立ち見の人も大勢

 会場に設置されたブースで会期の3日間実施された「Future Class Room ライブ」。内田洋行の製品の数々が集結し、会場の一角に「教室」が作り出され、デモンストレーション授業が繰り広げられた。

 2日目の午後2時50分からの「ようこそ Future Class Roomへ2025」では、開始前から行列ができた。この授業のテーマは、「疲れた大人向けのツアーを提案する」というグループワーク。参加者16名が4グループに分かれて話し合いをし、まとめ、最後にグループ代表がプレゼンテーションを行う。

 冒頭のアイスブレークでは、授業参加者のみならず、大勢の観客も自身の所有する端末からQRコードを読み取り、アンケートに参加。そこで集められた情報は瞬時に全面の大画面に映し出される。講師の操作でAIが瞬時にアンケート結果を分類し、表示するさまも見ることができた。立ち見の観客からは「そんなことがこんなにすぐにできるの?」という驚きの声も上がった。

参加者・観客から集められたアンケート結果を、AIが瞬時に分類して表示

 グループワークでまとめられたシートも、タイムロスなく大型画面に表示。複数グループのシートが横に並べられ、見比べるのも容易だった。

テーマに沿った提案がなされた。ユニークな提案で会場中が笑いに包まれる場面も

 また、ライブ中の観客のようすはカメラで撮影されており、ライブ終盤でその撮影データから分析された観客の状態(積極的なのか静的なのか、など)も映し出され、多くの人が食い入るように大型画面を見詰める姿も印象的だった。

カメラで撮影された観客の表情や動きのデータから、観客の状態を分析しグラフにしてくれる

学びを深めるために必要な環境の整備に焦点

 デジタル端末の1人1台環境が整備されたことで、「学び方」にも変化が訪れている。

 手元の端末を使用して子供たちが学ぶ際、さまざまなアプリが点在している状況だと、子供たちも教員も負担が大きい。そうしたシステムの「ハブ」となるのが、学習eポータル「L-Gate」だ。文部科学省が提供しているCBTシステムのMEXCBT(以下、メクビット)にも対応。メクビットは「全国学力・学習状況調査」の受験に必須となるシステムであり、「L-Gate」にアクセスすることで子供たちもスムーズにテストが受けられるうえ、試験終了後に自動採点が行われ、テスト結果をすぐに手にすることができる。「L-Gate」に登録されている各種アプリ等とメクビットとのデータ連携も行われるため、児童・生徒の学習到達度を把握しやすいのも特長だ。

内田洋行「L-Gate」

 学校現場の「印刷」の実情はモノクロ印刷が優勢で、カラー印刷の比率は、対策の進んでいる東京都でも全体の印刷物の3%に過ぎないそうだ。普及を阻む大きな要因は「印刷代がかかる」こと。エプソン販売では、「アカデミックプラン」というサブスクリプションサービスを提供。導入校ではカラー率が約50%まで向上したという。カラー比率が高まれば見やすい教材が増えることとなり、授業の質の向上につながるはずだ。

 また、1分間で片面100枚印刷できるカラー印刷の高速印刷複合機は、先生方の業務の時短にもつながる。インクジェット式のため、レーザープリント方式に比べて消費電力が4分の1以下に抑えられるといい、カーボンニュートラルにも寄与する。1台で3つの課題を解決してくれる。

エプソンの高速印刷複合機。サブスクリプションサービスの「アカデミックプラン」なら印刷コストを抑えられるため、カラー比率をあげられるはずだ

 カシオのブース前も、足を止めている人が常に複数名いた。そんなカシオは今回、探究の観点で「Class Pad」に着目する人が多いと感じているという。

 2026年3月には、デジタル教材プラットフォームのLibryと共同で、複数の出版社の問題を自由に選んで編集できるという新たなサービス「Q.Bank」の提供を開始する。学校におけるテスト作成やプリント作成時の手間を軽減してくれると考えられ、教師の働き方改革伸展への期待がかかる。

カシオの「Class Pad」は、2026年3月よりLibryと共同で新サービスを提供予定

 GIGAスクール構想第1期開始の2020年から、はや5年。1人1台のPC環境は整備されたものの、なかなか繋がらない、繋がったとしても回線速度が遅い、一斉に使用すると固まってしまう…などの課題も浮き彫りになった。GIGA2期に向け、こうした通信環境の改善も急務ではないだろうか。フルノシステムズでは、新規格のWiFi-7の性能を最大限に利用できる無線LANアクセスポイントの「ACERA EW770」を展示。GIGA端末のリプレイス時期を迎えている今、1期よりも高性能となるであろうPCの教室での一斉使用を支えるための環境整備の必要性を訴えていた。

フルノシステムズ「ACERA EW770」

個別最適な「支援」を

 「特別支援・不登校支援ブース」で足を止める人が多かったのが「入出力支援装置・療育デバイスCOSMO」だ。この製品は専用セッティングアプリと連動。PCやタブレット、スマートフォンの「アクセシビリティ機能」と紐づけることで、外部入力スイッチとして利用できるだけでなく、iPadの専用アプリと連動させて「スイッチトイ」としての使用も可能だ。アプリに搭載されているアクティビティは、無料のもので20タイトルあり、課金することでさらに17タイトルが利用できる(2025年6月6日現在)。これらのアプリはヨーロッパのセラピスト200人が共同開発。それぞれのアクティビティに療育したい能力や対象とする障害種が想定されていて、個別の困難に応じて最適なアクティビティを選べる。楽しく遊びながら、鍛えたい能力を伸ばすことができるという。

 このほか、視線を感知してPCを操作できる「視線入力装置」や、動かせる体の部分が限定される人がPC等を操作するための「ポイントタッチスイッチ」などの展示もあった。

視線入力装置やポイントタッチスイッチの展示も

 GIGAスクール構想の中では「入出力支援装置」の整備についても予算がついており、その補助率は10分の10だという。「COSMO」を含むこれらの装置はすべて、補助の対象となっている。

STEAM教材はより低学年を対象に…

STEAM教育教材ブース

 STEAM教育教材ブースには、新しい時代の学びを実現するSTEAMシリーズの各種製品が展示されていた。中でも印象的だったのはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「toio」。これまでは、使用する際にコントローラーなどの附属品や、ディスプレイでさまざまな機能を設定したり情報表示を行ったりする「コンソール」が必要だったが、今回展示されていた「プレイグラウンド」では、キューブ型の小さなロボットトイと、動きを指示する「カード」のみで動かすことが可能になった。よりシンプルで直感的にロボットトイを操作できるので、未就学児でも楽しめるという。現に、2024年6月の発売から1年程にもかかわらず、すでに数百の保育園・幼稚園・こども園で使用されているそうだ。

SIEの「toio」の「プレイグラウンド」。ロボットトイとカードだけで動かすことができるため、未就学児でも簡単に操作可能

 このようなSTEAM教材で低年齢から知的好奇心を揺さぶられる経験をし、楽しい遊びを通してプログラミングの理論を身に付けた人材の中から、将来の日本のエンターテインメント業界を支えるクリエーターが登場するかもしれない、と明るい将来を想像し、心が明るくなるような展示だった。


 会場内には、子供たちの学びをサポートするのみならず、教員や、学校を管轄する自治体の負担を軽減するためのさまざまな製品が数多く展示されていた。これからの教育がさらに伸展するための、可能性の萌芽が感じられるNEE2025東京の3日間だった。この後、6月13日・14日の2日間、大阪マーチャンダイズ・マート(OMM)にて、NEE2025大阪が開催される予定だ。

《鶴田雅美》

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