文部科学省は2024年11月11日、財務省の財政制度分科会で示された「働き方改革を条件とする教職調整額の段階的な10%への引上げ案等」について、反論する見解を示した。教師の時間外労働は改善傾向にあるとしたうえで、勤務時間の縮減を給与改善の条件とする提案は、学校教育の質の低下につながると意見している。
11月11日に財務省が公表した財政制度分科会の資料では、「時間外在校等時間は減少していない」「教職調整額10%を目指して段階的に引き上げる」「その際、時間外在校等時間が一定の水準を下回ることを条件とし、働き方改革のインセンティブとする」「10%に達する際に、教職調整額を廃止し、所定外の勤務時間に見あう手当を支給する仕組みに移行する」といった案が示された。
これに対し、文部科学省は同日に見解を公表。2016年以降、教師の時間外在校等時間が約3割縮減している事実を提示したうえで、いじめや暴力行為事案が過去最多となるなど学校が抱える課題が多く発生する中、「教職員定数の改善等の支援も行わず、勤務時間の縮減を給与改善の条件とする提案は、必要な教育活動の実施を抑制し、子供たちに必要な教育指導が行われなくなるなど、学校教育の質の低下につながる」と反論。
また、所定外の勤務時間に見あう手当を支給する仕組みに移行するとの案については、「仮に残業代を支給する仕組みに移行すれば、勤務時間外の業務に逐一管理職の承認が必要になるなど、教師の裁量が著しく低下し、創意工夫を発揮しにくくなる」との見解を示した。
教育を行うのは「人」であり、教職員定数等の充実のための財政措置が不可欠であること。そして、教職員定数等の充実をすることなく、単に学校現場の業務縮減の努力のみをもって学校における働き方改革を進めようとする提案は、学校現場への支援が欠如している、と文部科学省としての立場と考えを明確にしている。