家庭学習用の通信機器整備支援事業におけるルーターの貸与状況について、約17万8,000台のうち、およそ63%にあたる約11万3,000台が未使用であることが会計検査院の調査で判明。検査院は2022年10月19日、文部科学大臣に活用策を検討するよう意見を提出した。
文部科学省は、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で実現させることを目的として、地方公共団体等に対して公立学校情報機器整備費補助金を交付。補助金の対象となる事業のうち 「家庭学習のための通信機器整備支援事業」において、2020年度~2021年度に新型コロナウイルスの感染拡大で休校となった場合でも家庭学習が継続できるようモバイルWi-Fiルーター等の購入費を補助していた。
2020年度に補助事業を実施した242事業主体が整備したルータは、約17万8,000台(補助金交付額計16億1,000万円)。会計検査院が、補助事業により整備したルータが有効に使用されているか等に着眼して検査したところ、納品から1年以上経過したルータの最大貸与台数(家庭へ貸与されていたピーク時点での台数)は、およそ6万5,000台であることがわかった。
差分となったのはルーター約11万3,000台、補助金相当額にすると約10億2,700万円。これらが、2021年度までに一度も貸与されておらず、教育委員会で保管される等していた。そこで、141事業主体にルータの最大貸与率が低調となっている要因を尋ねたところ、そのうち74事業主体が「ルータの貸出希望者が想定より少ないため」、56事業主体が「家庭学習が進んでいないため」と回答した。
また、補助事業で整備したルータの有効活用を図るための用途や方法、情報提供が十分でないこと等も原因として認められた。今後のルータの使用については一定程度見込まれるものの、家庭学習が進まない事業主体や家庭におけるインターネット環境の整備が進んだ事業主体においては、今後、大幅な増加は必ずしも期待できないと思われる。
会計検査院は、補助事業により整備したルータが無駄にならないよう文部科学大臣に対し10月19日付で、「ルータの家庭学習における使用が低調となっている理由を事業主体に確認させたうえで、これを踏まえ、ルータの家庭学習における使用を促進するための方策を検討し、その結果を事業主体に対して周知すること」「家庭学習における使用の妨げとならない範囲でルータの家庭学習以外での有効活用を図るための用途や方法を検討し、その結果を踏まえ、参考となる事例を紹介する等適切な活用方法を事業主体に対して周知すること」の2点を、会計検査院法第36条の規定により意見表示している。