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重度重複障害児者、卒業後に生涯学習の機会減少…文科省調査

 文部科学省は2022年6月9日、2021年度(令和3年度)重度重複障害児者等の生涯学習に関する実態調査の結果を公表した。学校卒業後、生涯学習に取り組めている重度重複障害児者等は半数以下にとどまり、卒業前後で学びの機会が大きく減少していることがわかった。

教育行政 文部科学省
生涯学習への取組みの有無(本人の年齢区分別)
  • 生涯学習への取組みの有無(本人の年齢区分別)
  • 生涯学習に取り組んでいない理由
  • 今後の生涯学習のニーズ(本人の年齢区分別)
  • 重度重複障害者の生涯学習啓発パンフレット「だれでも参加できる生涯学習の機会を作りませんか?」表紙
 文部科学省は2022年6月9日、2021年度(令和3年度)重度重複障害児者等の生涯学習に関する実態調査の結果を公表した。学校卒業後、生涯学習に取り組めている重度重複障害児者等は半数以下にとどまり、卒業前後で学びの機会が大きく減少していることがわかった。

 調査は、重度重複障害児者、医療的ケア児者、重度肢体不自由児者等の生涯学習ニーズ、課題、取組事例等の実態を把握し、整理することを目的に「障害児者・家族を対象とした調査」と「生涯学習提供団体等を対象とする調査」を実施。専門的観点から調査結果を検証・分析し、生涯学習ニーズや実施の阻害要因、今後の学習機会提供のあり方等を報告書に整理している。

 障害児者・家族を対象とした調査の結果によると、「生涯学習の機会がある」という割合は38.6%、「生涯学習の機会が少ない・ない」という割合は41.1%だった。状態像別にみると、「生涯学習の機会が少ない・ない」割合は、外出が困難な場合や高齢な場合で相対的に高かった。卒業前の学校教育課程を含めた生涯学習の機会の充足度をみると、いずれの状態像でも一定程度以上ある割合が6~8割あり、卒業後に充足度が低下していた。

 「現在、生涯学習に取り組んでいる」という割合は44.8%、「現在、生涯学習に取り組んでいない」という割合は50.8%。年齢別では、卒業に近い年齢ほど取り組んでいる割合が高い傾向にあった。卒業後、生涯学習に取り組めている人は半数以下であり、卒業前後で学びの機会が大きく減少している実態が明らかになった。

 取り組んでいない人の理由は「どのような学習があるのか、知らない」43.2%がもっとも多く、「その他」「学習に関心を向けるだけの精神的な余裕がない」「取り組みたい内容の学習を提供する場がない」と続いた。自由記述には、本人の状態や支援面の課題があげられた。

 今後の生涯学習ニーズについては、「生涯学習の機会、取組みを増やしていきたい」34.3%、「現状の機会、取組みを維持できればよい」30.4%、「減らしたい」0.3%、「わからない」25.7%。若い年齢ほど、取組みへのニーズが高い傾向にあった。

 報告書では、卒業後に生涯学習に取り組めている人が半数以下であるとの結果を受け、「本人の状態や支援不足等を理由に生活・ケアを優先せざるを得ない家庭がある一方で、意欲がありながらも、生涯学習に関する情報、学習環境の不足で生涯学習に取り組めていない家庭もある」と指摘。おもに意欲がありながらも取り組めていない家庭に向けた現状と課題として、「ニーズに対応可能な多様な取組・支援」「本人・支援者に対する生涯学習情報、相談先の不足」「特別支援学校と卒業後にかかわる団体・機関等との連携」「生涯学習に対する普及啓発」の4点を示している。

 報告書の他、重度重複障害者の生涯学習啓発パンフレット「だれでも参加できる生涯学習の機会を作りませんか?」も作成。地域の生涯学習にかかわる地方公共団体、特別支援学校、NPO法人、社会教育施設、障害福祉サービス事業所等に向けて、学びのニーズや具体的な取組内容を紹介している。

 報告書とパンフレットは、文部科学省Webサイトで公開している。

《奥山直美》

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