学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第232回のテーマは「不登校中の学習成果を成績に反映してほしい」。
不登校の子供の学びの場が増加
近年、不登校の子供の学びの場は全国で増えてきています。以前からあるフリースクールなどだけでなく、この数年は公的な居場所も増えてきています。「学びの多様化学校」という名称で、たとえば、東京都にある「八王子市立高尾山学園小学部・中学部」や、東京都大田区立御園中学校の分教室として設置されている「みらい学園中等部」などです。
不登校の子供の学びの場が増えてきている中、新たに問題となっているものが「成績」です。特に中学校の場合、成績が高校への進学に影響を与えることも多いです。教科に関する評定が未記入の場合、高校の入学試験に大きく影響を与えます。自治体によっても違うのですが、中学での評定を何らかの形で点数化し、入学試験の点数と合わせて合否判定をしているケースがあります。そうなると、評定がない場合は、著しく不利な状況となります。
特別支援学級の在籍者にも教科の評定が付かないことがある
これは、特別支援学級に在籍する児童・生徒の問題でも共通するものです。中学において特別支援学級に在籍すると、教科の評定が付かないことが多くなります。そういったことが影響し、高校進学の際の選択肢が狭まることにつながります。個別支援学級は、個別でのケアという点では優れているのですが、評定に関することで高校進学までを考えると、親としては悩んでしまうという話を聞いたことがあります。
成績が付かないことで選択肢が狭まる
不登校の場合、先ほども書いたように教科の成績が付かないことで、選択肢が狭まることとなります。選択肢としては通信制の高校などが主なものとなります。角川ドワンゴ学園が運営しているN高、S高、R高の生徒数は3万人を超えています。不登校の子供だけが通っているわけではありませんが、中学で不登校だった子供の受け皿になっていることは事実です。フルオンラインで学ぶ形から、週に数回学校へ通う形、毎日通う形などさまざまな学び方を選ぶことができます。現在、通信制の高校は学びの形が多様になっている中、選択されることが増えてきています。特に、新型コロナウイルスの流行以降、オンラインを用いた学びが一気にしやすくなりました。
通信制の学びの選択肢が増えたことは良いことなのですが、可能であるのであれば、中学時代に不登校だった子どもが通学制の高校へ通うという選択肢もあることが望ましいです。現在の学校での学びは「個に応じた学び」が大切とされています。不登校の子供であっても学びができているケースはたくさんあります。そういった場合、通学できている子供には成績が付き、通学できていない子供には成績が付かないという状況は、成績を付ける際に、「通学している」ことが評価の基準の1つになってしまっています。本来、学びができているか(理解しているか)が評価の基準であるはずです。そういった部分での公平性の問題とも関わってくるでしょう。
GIGAスクール構想により学びのツールが増えました。そういったものを適切に使っていくことで、不登校の子供でもきちんと評価をしていくことは十分に可能でしょう。そういったことが進んでいくことが望まれます。
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