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【特別支援学級】「できない・やりたくない」という子供への寄り添い方

 特別支援学級の子供たちに寄り添うためには、どんなことが大切なのか? 長年小学校の特別支援学級で支援員として勤務してきた ももあいり氏に接し方の工夫等を聞いた。今回は、子供が「できない・やりたくない」と言ったときの対応のヒントを紹介する。

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 特別支援学級の子供たちに寄り添うためには、どんなことが大切なのか? 長年小学校の特別支援学級で支援員として勤務してきた ももあいり氏に日々子供たちと接する中で心がけていること、接し方の工夫等を聞いた。今回は、子供が「できない・やりたくない」と言ったときの対応のヒントを紹介する。

「できる」のに、「やらない」のはどうして?



 新年度が始まってまもなく、特別支援学級に新たに配属された先生から「できることでも『できない・やりたくない』と言う子供にはどんな風に接したら良いのでしょうか?」と聞かれたことがありました。私自身、初めて支援級に配属されたとき、やろうともせずに「できない」と言われることに戸惑った経験がありましたので、先生の気持ちが良くわかるような気がしました。

 算数や体育、音楽等、科目に関わらず「やりたくない・できない」と言われたときは、やり方を説明します。しかし、鉛筆すら持たない、「できるよ、一緒にやってみよう」と声を掛けても目を合わせようとしない等、普段できる子・やる子でも取り組まないということもあります。

 そんなときは体調を確認します。体調に問題がないのであれば、気持ちが乗らないのか、苦手意識が強いのか、疲れているのか、眠いのか等、毎日子供たちのようすを良く見ながら理由を探すようにしています。

その子によって苦手なものがたくさんある



 子供たちと接していくうちに支援級の子供たちには敏感な子が多く、天候・気圧に左右されること、特に月曜の朝は調子が乗りにくいこと、金曜は1週間の疲れが出てなかなかやる気になれないこと等がわかってきました。

 もちろん、ひとりひとり違いますし、性格や家庭環境によるところもあるので一概には言えませんが、台風のころは落ち着きなくハイテンションになる子が多いように感じています。午前中にプール授業があると、午後はもう疲れて寝てしまう子もいます。とても食が細い子の場合は、「体力があまりもたないのかな」と感じることもあります。

 ちょっとしたひと言が気になって一日中引きずってしまう子もいれば、全校集会のように大勢集まる場所や大きな音、高音が苦手な子、風船が怖い子、光が苦手な子、食べ物の食感、化繊が苦手等、「えっ、これもダメなの?」と驚くことも多く、苦手はその子によっていろいろです。また、自分のテリトリーが決まっていて、そこに入られることにものすごく反応してしまい、手や足が出てしまう子もいます。

 子供が不安定な状態では、できそうなことも「できない・やりたくない」と感じてしまうと思いますし、「どうしてイヤなの?」と聞かれてもそれをうまく説明できる子は多くありません。一斉に同じことを行うのが難しい場合は工夫し、その子の苦手なものをあらかじめ避ける等の配慮が必要になります。

「できない」が「やってみる」に変わる、声かけと配慮



 その子に合うような声かけをし、そばにいて一緒に作業する、勉強する、見守ることで不安材料を減らすと、「できない」と言っていたことも「やってみる」に変わります。経験値の低さや成功体験の少なさから「やってもできないからやらない」という子には、「できなくても良いからやってみよう、一緒にやるよ」と促すことで、やる気になることもあります。褒められる経験が少なくて自信がない子も多いので、大袈裟なくらいに褒めることも効果的な場合があります。

 できなくても「やってみようかな」と思えた気持ちは、その子にとってとても大きな成長です。ひとりひとりのスピードは違うので、その子のそのときのペースを尊重して、少しずつ成功体験を増やし、自信がついて自己肯定感を高められたら良いなと思います。

 ただ気を付けたいのは、その子のペースを大切にしながらも、もうひと踏ん張りできるときに、子供のようすをよく観察しないと後に響くこともあるということです。「あと5分あるからもう1枚やろう」等、頑張らせすぎると、次回の学習時には「もう嫌だ」となってしまう場合もあります。

子供たちにとって支援級が居心地の良い場所であること、そして笑顔を大切に



 学校は集団の場なのでルールがあり、時間が決まっていて、子供の思いどおりにはなりません。特別支援学級は子供たちのお世話をする場所ではなく、子供の自立を支援するための場であり、子供たちが自立に向けて学習するところです。そこで私は、子供たちが安心して楽しく通え、居心地の良い場であるようにと心がけています。

 私がこれまで勤務してきた特別支援学級は、基本的におうちの方が送迎します。雨の日も風の日も台風の日も雪の日も、毎日の送迎は大変でしょうし、時にはぐずる子供と登校するのは、ご苦労なことです。「毎日学校に来てくれてありがとう、今日も会えて嬉しいよ」という気持ちで、おうちの方にも子供たちにも挨拶しています。

先生はひとりで抱え込まず、チームワークを大切に



 子供たちの心に寄り添いながら特別支援学級で勤務する中で、子供たちからはたくさんのパワーをもらうことができ、面白くて楽しいと感じます。しかし一方で、とても体力気力を消耗しますし、仕事が終わるとどっと疲れる日もあります。

 日々の出来事を振り返ることはよくありますが、切り替えて前を向いたほうが建設的なので、引っかかることがあれば仲間や先生に相談しています。支援級では先生と子供との関係が濃いので、大人同士の協力、チームワークがとても大切です。

 先生方もあまり考えすぎず、ひとりで抱え込むことなく、子供たちのちょっとした変化や成長を共有して、子供たちと一緒に楽しく過ごせるように応援しています。

もも あいり


 大学卒業後、教育系出版社で約5年間勤務し、進路指導教材や心理学に関する書籍の企画編集を担当。小学校の特別支援学級で支援者として複数の学校に計12年間勤務。保育園、子育てひろばでの勤務経験も含めると、約30年間教育に携わっている。子育て支援員、子育てアドバイザー資格取得。著書は、「魔法のことばかけで子供がゴキゲン!~子育てを楽しむための悩むママへおくる本~(Kindle)」等。
《もも あいり》

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