学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第110回のテーマは「今の学校が合わないので転校したい」。
通学区域外の学校への通学が
認められる場合
公立学校(小中学校)は基本的には居住地(住民票がある場所)によって通う学校が決まります。ただ文科省は例外を認めています。そういったこともあり、保護者が「学校が合わないので転校をしたい」という相談をしてくる場合があります。
文科省は通う学校の指定変更について具体的に次のように示しています。
・留守家庭を理由とした指定変更(山形県米沢市)
・不登校解消のための指定学校変更(静岡県静岡市)
・友人関係に配慮した就学校の指定(鳥取県米子市)
・通学する距離等に配慮した就学校の変更(和歌山県白浜市)
・部活動を理由とする指定学校変更(高知県高知市)
・学校選択の自由度拡大と学校運営の活性化を目指して(神奈川県横須賀市)
・外国人の児童・生徒の受け入れ体制(日本語教室)のある学校への指定校変更(長野県諏訪市)
・学区外及び区域外就学事務取扱要綱に定める学区外就学許可事由の見直し(千葉県市原市)
学校を変える際、トラブルもなく、スムーズに変える方法として「転居」があります。自宅を買い替える、借りている家を変える等です。そういったことが可能な家庭では、そういったことを選択肢として検討します。ただ、一定額のお金が掛かることなので、すべての家庭がそういったことができる訳ではありません。それなので、住んでいる家を変えることなく、学校を変えることができる方法ないかと考え、学校にコンタクトを取ってきます。
転居すること無く、子供が通っている学校を変えたいと思っている保護者は、自分でも色々と調べます。上に書いたような文科省の事例紹介等を読んだうえで学校へ相談してくることが想定されます。米子市の例はいじめ等が関連していると思われます。保護者としては、米子市で認められ、それを文科省が紹介しているのだから、自分たちのケースも認めてほしいと主張する可能性があります。
学校には決定権が無い
学校としては、文科省が上記のように紹介しているということをまず知ることが大切でしょう。そのうえで実際に保護者と関わる際には「学校には決定権が無い」ということを伝えていく必要があるでしょう。通う学校の決定権は市区町村教育委員会にあります。学校教育法施行令第5条第2項において「市町村教育委員会は、当該市町村の設置する小学校又は中学校が2校以上ある場合に おいては、入学期日の通知において当該就学予定者の就学すべき小学校又は中学校を指定しなければならない。」と定めています。そういったことを保護者に伝えていくことは大事なことでしょう。
今回のようなケースで難しいものが、どの程度のものが文科省が示す就学校の指定変更に当たるものなのかという判断です。「クラスの居心地が悪いから」や「周りの子供にいじわるをされたから」等の場合、程度判断が難しいです。多くのケースでそういったものを認めていくとそういった訴えをするケースが増えてしまう可能性があります。学校としては、市区町村教育委員会と情報交換しながら対応していくことが大切でしょう。
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