学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第233回のテーマは「傘を壊されたので弁償してほしい」。
持ち物の破損・紛失時の対応
子供の持ち物が壊れる、紛失するなどのトラブルは学校ではそれなりの頻度で起こります。その中でも梅雨の時期に起こる「傘の破損」は対応が少し面倒になります。また、学校の対応の仕方を考える良い機会にもなります。
傘が壊れた場合、壊れた傘の持ち主の子供は傘を「壊された」と教師に訴えてくることが多いです。朝に傘立てに置いたものが、帰る時に使おうとしたら、布が切れていた、骨が折れていたなどの状態になっていたからです。家に帰って、そういったことを親に伝えます。親も学校に「傘が壊されたので、弁償してほしい」という訴えになります。
傘の破損でも、通学時に傘を遊び道具として、友達同士でチャンバラをしていて壊れてしまったのであれば、相手がわかります。また、チャンバラであれば、両者とも悪いので、壊れても弁償という話にはなりにくいです。
学校の傘立てで壊れた場合は対応が難しくなります。子供は学校に着いた順に傘を傘立てに入れていきます。その際、きちんと傘をネームバンドでまとめてから傘立てに入れていない場合、後から入れる子供の傘によって、壊れてしまう可能性があります。布が切れたり、骨が折れたりという状況です。帰りになり、傘を使おうとして手に取った時に、自分の傘が壊れていることを発見します。教師に訴えた時には、すでに子供たちはバラバラになっており、どの傘によって壊れたのかなどの確認ができない状態であることが多いです。また、壊れたことの原因の1つが、傘をネームバンドでまとめていなかったことです。これは壊れた傘の子供にもある部分で責任があります。
親はそういったさまざまな事情は理解しないまま、「弁償をしてほしい」「壊した子供を指導してほしい」という訴えをしてきます。こういった状態では、先程も書いたように誰の傘によって、破損が発生したのかなどはわからないことが多いです。傘が壊れた子供も、その親も、教員もなんとなくモヤモヤしたものを抱えたままとなってしまいます。親や子供から学校(担任)への信頼感が揺らぐことにも繋がりかねません。
トラブルが起こる前に、先手で対応することが重要
今回の傘の破損のように明らかにトラブルが起こりそうな場面では、学校(教師)は先手で対応することが重要です。ルールが増えることは望ましいことではありませんが、「傘はネームバンドでまとめてから傘立てに入れること」をきちんと取り組めるようにすることが大切です。トラブルの対応は、何かが起こった後の対応よりも、トラブルを起こさないようにする対応の方が小さなエネルギーで済みます。ただ、何も起こっていない状況でアクションを起こすことは心理的に少し手間がかかります。また、忙しい時はそういったことが後回しになりがちです。結果として、トラブルが発生し、さらに忙しくなってしまいます。
現在の学校は非常に忙しい組織です。可能な限り不必要なトラブルが発生しないように、先手での対応が望ましいです。そうやって良いリズムの循環ができてくると、それがさまざまなことにも影響を与えます。授業準備に時間を取れるようになれば、授業の質が上がり、子供の満足度も上がります。今回は、傘を題材としましたが、他のものも似たようなものです。生活を見まわし、教師がどういったことに配慮すべきかを考えていくことが大切でしょう。
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