学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第208回のテーマは「学校と家庭の役割分担をはっきりと示してほしい」。
学校以外が担うべき業務
教員の多忙化などと関係し、平成30年2月8日に文部科学省が「学校における働き方改革に関する緊急対策」というものを公表しています。その中で「基本的には学校以外が担うべき業務」は次のものとしています。
登下校に関する対応
放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導された時の対応
学校徴収金の徴収・管理
地域ボランティアとの連絡調整
さらに「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」としては次のものがあげられています。
調査・統計等への回答等
児童生徒の休み時間における対応
部活動
このような文科省からの発信が5年以上も前にあったにも関わらず、今でも上記のような問題で苦慮している学校がいくつも見られます。文科省や学校現場の教員の認識と親の認識にズレがあると言えるでしょう。両者の認識のズレが新たなトラブルを発生させてしまっている場合もあるのでしょう。
教員と親の認識のズレを補う
保護者としては「学校がやってくれれば楽」「無料だからありがたい」などの気持ちがあるのだと思います。これは良い・悪いの問題ではなく、現在の保護者や子供が置かれた状況をよく表しているものだと思います。両親が共働きの家庭は多いです。また、物価の上昇などに収入が追いつかず、経済的に苦労している家庭もそれなりにあるでしょう。そういった状況において、「学校がやってくれるならありがたい」という保護者の思いも理解ができます。
ところで、社会における仕事において、労働に対して適切な対価が支払われます。また、サービスを利用したり、物品を購入する人は、適切な代金を支払います。現在の学校の学校システムは、社会において当たり前である「適切な対価を払う」というシステムが崩れています。教員の残業に対して適切な残業代が払われていない問題、何でも学校の問題にしてしまう保護者や地域の意識などがそういったものです。
これまで、学校(教員)も「子供のために…」という言葉によって、どんどんと取り組むことを増やしていきました。現在は、担当範囲が広がり過ぎているような状況でしょう。こういった状況はまるで「空気が目一杯に入った風船」のようなものです。ちょっとの刺激で破裂してしまう可能性を抱えています。
冒頭、「文科省や学校」と「保護者」の認識のズレについて書きました。最近、マスコミもそういったテーマを扱う機会が増えてきたように思います。特に「部活の地域移行」については何度もニュースになっています。ただ、それでもまだ十分であるとは言えないでしょう。学校も自分たちで保護者に対して、さまざまな機会に認識のズレを補うべくアナウンスをしていくべきでしょう。たとえば、入学前に行われる「入学説明会」は最適な場です。学校と保護者のより良い関係のためにできることを伝えていきたいです。
また、「学校便り」や「学校ホームページ」などでの発信も有効でしょう。特に4月の学校だよりの一部にこういったテーマを載せていくことは良い取組みでしょう。知らなければ行動を取ることができないものもたくさんあります。知ることは人の行動を変えていきます。保護者にきちんと情報提供をしていくことは、お互いがどのように行動していくことが望ましいのかを考えるベースとなります。そういったことの繰り返しが、子供のより良い育ちへとつながっていくのだと思います。
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