学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第251回のテーマは「給食が美味しくない」。
センター給食の増加・給食無償化が影響
これまでこの連載で給食に関して何度かテーマにしています。「無理やり食べさせられる」「地元の食材を使ってほしい」「食べる時間が足りない」などです。色々なことが話題となる給食ですが、今回のテーマは「給食が美味しくない」です。
「美味しい」「美味しくない」ということは人それぞれによって感じ方が違うものです。ただ「美味しい」「美味しくない」ということに関して、昨今の給食に関する2つのこと(センター給食の増加、給食無償化)が、影響を与えている可能性があると私は考えています。
センター給食の増加
学校の給食は自分の学校で調理をする「自校方式」と自治体でまとめて大きな施設で作る「センター方式」があります。近年は、センター方式が増えてきています。そのことが「美味しさ」にも影響を与えている可能性があります。センター方式は大量に作るので、味に関しては偏ることなく作られることが多いです。ただし、運搬などに時間がかかることが多いです。作る場所と食べる場所が離れていることが影響しています。熱々ではなく、少し冷めてしまうことなども一般的にあります。そういったことが「美味しさ」に影響を与えている可能性があります。自校給食であれば、学校内の給食室で作ったものを温かいものは温かいまま、冷えたものは冷えたままで教室まで運搬し、子供たちが食べることができます。予算に関することでは、センター方式の方が効率良く、少ない予算で実施することができます。そういったことで子供が感じる給食の美味しさに影響を与えているということもできるでしょう。
給食費無償化
また、もう1つ影響を与えていると考えられるものが「給食費無償化」です。親にとっては、給食費が無償化されることはありがたいことだと思います。少し前の資料ですが、2023年9月時点では、全国の約3割にあたる547の自治体が小中学生を対象とした給食費の完全無償化を実施しています。さらに145の自治体は多子世帯や所得などを条件に無償化を実施しています。2025年度から与野党協議により、小学校の給食無償化が進められることが同意されています。
その給食無償化が「美味しさ」に影響を与えている場合があります。給食の無償化は各自治体の財政負担が増えることとなります。財政的に余裕のある自治体は問題ありませんが、余裕の無い自治体の場合、食材費や調理スタッフの人件費に影響が出る可能性があります。特に近年は、食品を含んだ生活必需品の価格が高騰しています。そういったことが、食材の質やメニューの多様性に制約が出て、それが美味しさに影響が出る恐れもあります。
それぞれの自治体の予算には限りがあります。限られた予算の中で給食を効率的に作っていくということは大事なことです。ただ、子供が給食を美味しく食べるということもまた大事なことです。食事の量も質も子供の健全な育ちにおいては大切です。良いバランスで実施されることが望ましいです。
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