学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第165回のテーマは「先生が休みがち」。
学校のあり方を考えるチャンス
学校に対して「先生が休みがち…」という親からの訴えがあった場合、状況によって考えるべきことが違ってきます。教員(学校)に寄り添ってくれる親の場合は「先生が休みがちで心配…」となります。逆に不満を抱いている親の場合は「先生が休みがちで困る…」となります。「勉強が遅れる」「子供が落ち着かない」などが具体的な訴えでしょう。
今回のテーマは、学校のあり方を考えるような重要なものだと私は考えています。単に何か1つを変えれば解決するというものではありません。学校というものが、子供にとって、教員にとって、親にとってどういったものなのか、どういったものであることが望ましいのかということを考えていく良い機会となります。
文科省の調査によると2022年度に精神疾患で休職をした全校の公立学校の教員は6,539人だったそうです。前年と比べて642人増えており、2年連続で過去最多でした。細かい数値を見ていくと、精神疾患による休職などの割合は全体では1.42%ですが、20代では2.02%と若手ほど苦労しているようすがうかがえます。
学校現場を見ると、年度の始めの時点からすでに教員の欠員が出ている状態でスタートしているケースがあります。学校での人手が足りないというものの1つが「非正規教員の欠員」です。現在の仕組みでは、育休などで休暇に入った人の代わりは非正規(臨時適任用職員など)の人を充てることとなっています。ただし昨今の倍率低下などと関連し、代わりとなる非正規の人を見つけにくいのが現状です。その結果、本来は担任外だった教員(音楽や家庭科、理科などの専科)、教務主任、教頭・副校長など)がクラス担任を兼ねる形で対応している学校がたくさんあります。
その状態は明らかに色々な人に負荷がかかっています。短期であればそれでも維持できるのですが、長期となると、色々な形で不具合が発生する可能性が高まります。そういったものが具体的な形となったものの1つが先ほど記した「教員の精神疾患による休職」です。
学校単位でできる改善を
国レベルでの法律の改正や予算の大幅の増額などがあれば状況の改善が望めます。ただそういったことを待っているのでは状況がどんどん悪化してしまうでしょう。国レベルの大きな変化を待つのではなく、学校でできる小さな変化(改善)をいくつも行なっていくことなどが良いでしょう。たとえば、小学校において学年単位のチーム制、教科担任制などを導入していくことです。中学校・高校と比べ、小学校は学級担任という色が濃いです。悪い見方では「学級王国」的な意識が残っているということでしょう。その点、中学校・高校は教科担任制なので、1つのクラスに多くの教員が関わります。多くの教員が関わることで、クラスに対する担任の負担の軽減にもつながります。小学校においてチーム制や教科担任制を取り入れていくことで、1人の担任への負担が減る可能性が高くなります。これは、精神疾患などを防ぐということだけではありません。教員が普通に休みを取ることができるようにすることを意味します。
当たり前ですが、教員も普通の人です。家族がいれば、その対応(育児、看護、介護など)が必要になることもあります。自分の子供が学校に通っていれば、授業参観や入学式などの学校行事もあります。そういった時に対応ができるような仕組みを作ることが学校が持続可能であることに繋がります。「その人(担任)がいないと仕事が成り立たない」という状況ではなく、何かあれば他の人でも対応できるような状況を作ることが必要です。そういったことが適切に取り組まれていくことで、結果として、親からの「先生が休みがちで困る…」という訴えなどが減ってくるのだと思います。
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