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【クレーム対応Q&A】名前の呼び方に気を使ってほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第176回のテーマは「名前の呼び方に気を使ってほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第176回のテーマは「名前の呼び方に気を使ってほしい」。

 社会においてLGBTQなどが話題となっています。社会の中の一部である学校ももちろんそういったことに丁寧に対応していく必要があります。学校教育は基本的にすべての子供が受けるものなので、その影響が大きいです。適切に取り組んでいきたいものです。そういったことと関連し、今回のテーマは「名前の呼び方に気を使ってほしい」です。

名前の呼び方は関わり方に影響

 他の人との関わりにおいて、その人の呼び方は関わり方に影響を与えます。たとえば、担任が子供に本を運ぶことを頼むとします。名前に「さん」を付けず、そのまま苗字を呼んだ場合、「鈴木、その本を運べ」「鈴木、その本を運んで」という少し強い言い方になります。同じ状況において「さん」を付けて呼ぶと「鈴木さん、その本を運んでください」「鈴木さん、その本を運んでもらえますか」のように変わります。「さん」を付けることで、後ろに続く言葉も丁寧なものに変わってきます。

 「さん」などの呼称は、単に呼び方だけでなく、関係性にも影響を与えます。教師が「さん」を付けずに名前を呼び捨てで呼ぶような関係では、先ほども書いたようにどうしても荒い感じの関わりになりがちです。感情的に叱る時には呼び捨てになる印象があります。これは教師と子供の関係だけでなく、子供同士の関係でも同様でしょう。そういったことを意識し、互いの呼び方を丁寧にすると子供同士の関わり方も穏やかになっていくことが多いです。それらは、いじめを防ぐことなどにもつながっていきます。形だけですべてが解決する訳ではないですが、形が影響を与えていることも事実でしょう。

場合によって名前の呼び方を考えていく

 また、男女の呼称については「さん」「君」の問題があります。約30年前、私が小学校で働き始めたころ、私が勤めた小学校では教師は子供のことを「さん」「君」で呼んでいました。学校の中は子供の苗字を呼び捨てで呼んでいる教師もいました。異動した2校目の学校では、すべての教師が子供のことを「さん」で呼んでいました。異動した時、教師と子供の関わり方が穏やかだという印象を受けたのを今でも覚えています。はじめにLGBTQについて書きました。現在は、性の多様性についても考えていく必要があります。そういったことを考えると学校での子供の呼び方は「さん」で統一していくことが良いのでしょう。

 ただ、少し考える必要があるのが「あだ名」です。あだ名に関しては変なあだ名を付けることがいじめにつながっていくなどの問題があります。そういったこともあり、子供同士の呼び方であだ名を禁止としている学校があります。いじめにつながるような場合のあだ名は良くないのですが、すべてを一律に不可とするのも違うように私は思います。親しみを込めてあだ名で呼び合う関係もあります。場合によって対応を考えていくことが望ましいのだと思います。

 人の名前の呼び方は単にその呼び方だけの問題ではありません。人と人(教師と子供、子供同士など)の関係に大きく影響を与えます。そういったことを意識し、名前の呼び方を考えていきたいものです。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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