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全学的改革やキャリア支援…53事例「大学院における教育改善の実践事例集」

 文部科学省は2025年5月30日、大学院における教育改善の取組事例の把握等に関する調査研究の取りまとめとして、「大学院における教育改善の実践事例集」を公開した。20大学のべ53事例を紹介している。

教育行政 文部科学省
大学院における教育改善の実践事例集
  • 大学院における教育改善の実践事例集
  • 体系的な大学院教育の取組みの時系列推移
  • 大学院としての学生に対する就職支援に係る取組みの時系列推移
  • 大学院教育改革の取組状況に関するアンケート結果
  • 全学的な大学院教育改革の推進の事例【東北大学 高等大学院機構】

 文部科学省は2025年5月30日、大学院における教育改善の取組事例の把握等に関する調査研究の取りまとめとして、「大学院における教育改善の実践事例集」を公開した。全学的な大学院教育改革の推進や、産業界や国内外の大学等と連携した教育プログラムの構築など、20大学のべ53事例を紹介している。

 高度化・複雑化する社会において、優秀で多様性に富む学生が大学院に進学し質の高い教育研究が行われること、そして、大学院修了者が高い専門性と汎用的能力を有する人材として広く社会に認知・評価されることの重要性が指摘されている。文部科学省では、各大学で行われている質の高い大学院の教育改善の取組みを、他大学や企業などに認知してもらうべく、2024年度先導的大学改革推進委託事業として「大学院における教育改善の取組事例の把握等に関する調査研究」を実施。大学院における教育改善の取組事例を収集し、実践事例集として取りまとめ公表した。

 実践事例集では、冒頭、全国の大学院における大学院教育改革の現状や、大学院教育改革の取組状況に関するアンケート結果を掲載。体系的な大学院教育の取組みとして、研究手法を身に付ける科目の設置は年々増加し、2022年には8割を超えている点、大学院の教育改善に向けた全学的な取組みとしてもっとも多いのは「組織的なキャリアパス支援」64.8%であることなどを示している。一方、専攻や研究科を横断した共通のコア科目の設置や、社会で広く活用できる汎用的なスキルの教育、学外と連携した教育カリキュラムの構築などはあまり進んでいないという。

 メインとなる具体的な事例紹介は、「①全学的な大学院教育改革の推進」「②体系的な大学院教育プログラムの構築」「③汎用的能力の育成・分野横断教育の推進」「④産業界や国内外の大学等と連携した教育プログラムの構築」「⑤多様な学生の受入れ促進」「⑥学修成果の把握・学位の質保証」「⑦組織的なキャリアパス支援」の7つの項目について各大学の事例を紹介。国公私立あわせて20大学、のべ53の先進的な事例を紹介している。

 たとえば、「①全学的な大学院教育改革の推進」の事例の1つとして、東北大学 高等大学院機構による「研究科や学問領域の壁を越えた学位プログラムの成果を大学院全体に展開」した取組みを紹介。東北大学では、研究科の壁を越えた横断的な融合教育と世界を舞台に活躍する若手リーダーの育成を目指し、各研究科に横串を通す「ディシプリン横断型学位プログラム」の拡充を行っている。さらに、取組みを全学的に推進するために、学位プログラムを管理する全学的な組織「高等大学院機構」を設置し、各学位プログラムで行う独自のセミナーなどを、他学位プログラムの学生も受講できるよう調整している。こうした取組みにより、学生の視野やキャリア選択肢も広がっているという。

 このほか、国立大学は東京大学や京都大学、筑波大学、長岡技術科学大学など16校、公立大学は大阪公立大学1校、私立大学は早稲田大学、同志社大学、立命館大学の3校の事例を掲載。複数の実践事例を取り上げられている大学もある。実践事例集は文部科学省Webサイトから全文ダウンロードしてみることができる。

《畑山望》

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