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日本の基礎研究力に危機感、国際的地位が大幅低下…NISTEP定点調査2025

 文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は2026年4月24日、科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2025)の報告書を公表した。日本の基礎研究力に強い警鐘が鳴らされるとともに、産学官で危機感が共有された。

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  • 物価高騰等の影響についての認識 (2025年度深掘調査)

 文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は2026年4月24日、科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2025)の報告書を公表した。日本の基礎研究力に強い警鐘が鳴らされ、産学官で危機感が共有された。

 NISTEP定点調査は、科学技術やイノベーション創出の状況変化を定性的に把握するため、継続的に実施している意識調査。2025年度調査は2025年9月から2026年1月にかけて実施し、第一線で研究開発に取り組む研究者や有識者2,154人のうち1,826人から回答を得た。回答率は84.8%。

 研究資源や政府の研究費マネジメントについては、第6期基本計画期間(2021~2025年度)を通じて厳しい認識が示された。円安や人件費・光熱費・物価の高騰により、研究者は消耗品費や旅費の不足を、マネジメント層は光熱費や人件費の圧迫を実感しており、物価連動型の予算配分を求める声が多数を占めた。大学の基礎研究強化には、安定的な雇用財源となる基盤的経費の拡充が最優先事項にあげられた。

 基礎研究の現状については、依然として「不十分」との認識が続いている。成果が十分にイノベーションにつながっていない点については、産学官で認識が一致した。過去15年間の長期変化では、「基礎研究における国際的に突出した成果」の相対順位が15年前の1位から16位へと大きく低下しており、日本の注目論文数(Top10%論文数)の世界順位の低下とも整合している。

 一方、若手研究者の自立支援や博士後期課程進学に向けた環境整備、博士号取得者のキャリアパスの多様化については、過去15年間で長期的な好転の兆しが見られる。自由記述では、「創発的研究支援事業」や「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」といった具体的施策が改善に寄与しているとの声が多くあがり、政策の効果がうかがえた。

 また直近1年間では、論文数シェアの大きい第1グループの大学(大阪大、京都大、東京大、東北大)を中心に、外国人研究者の受入れや大学経営に関する指数が上昇するなど、改善傾向が見られた。ただし博士後期課程では、経済的支援は改善傾向にあるものの、「望ましい能力をもつ進学者数」については「著しく不十分」との認識が示されている。なお、大学グループとは、NISTEPが論文数シェアをもとに大学を4つにグループ分けしたものであり、第1グループは上位4大学が該当する。

 海外大学との格差については、研究時間の確保と研究支援体制に大きな課題があることが浮き彫りとなった。日本では教員が事務処理や学生対応、入試業務、機器管理の多くを担っているのに対し、海外では分業化が進み、専門スタッフやリサーチアドミニストレーター(URA)が充実しているため、研究者が創造的な活動に集中できる環境にあると指摘されている。

 イノベーション創出に向け、大学にもっとも期待される役割は「基礎研究の継続的な実施」。企業では困難な原理解明や、0から1を生む挑戦的研究といった大学の基礎研究こそが、イノベーションの源泉であるとの共通認識が示された。

 第7期基本計画の実行に向けては、改善が見られる取組みを継続・強化しつつ、基盤的経費や研究時間の確保といった長年の課題に対し、より一層の対応が求められる。

《川端珠紀》

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