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【EDIX2025】AIで変わる教育、50周年のマイクロソフトと目指すGIGAの未来

 EDIX東京2025では、マイクロソフトが教育分野でのAI利用をテーマに出展し、Copilot+ PCや教育ソリューションを紹介。特別セッションや体験学習も開催され、校務の効率化と新たな学びが期待されている。

教材・サービス 校務
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日本マイクロソフトの小澤拓史氏
  • 日本マイクロソフトの小澤拓史氏
  • マイクロソフト50周年と教育への取組みを紹介する特設サイト
  • AIとともに進む新しい時代に向けて、充実するCopilot+ PCのラインアップ
  • Copilot+ PCの特徴を説明する小澤拓史氏
  • JAXAとタツナミシュウイチ氏が共同開発したルナクラフト
  • 進行を務めた東京大学大学院 客員研究員 タツナミ シュウイチ氏
  • JAXA地球観測研究センター 主任研究開発員 河村 耕平 氏
  • 実際のワークショップのようす

 EDIX東京2025が2025年4月23日から25日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された。2025年4月に設立50周年を迎えたマイクロソフトは、“AI in Education みんなで創るGIGAの未来”をコンセプトに出展し、Copilot+ PCの展示や最新AIソリューション、先進事例の特別セッション、体験学習セミナー等を多数開催し、注目を集めた。

 日本マイクロソフト 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長の小澤拓史氏に、同社が教育分野にかける思いや取組みについて話を聞いた。あわせて、JAXAとタツナミシュウイチ氏による特別セッション「Minecraft Education×宇宙 ~マインクラフト月面再現教材『ルナクラフト』のすべて~」や盛況だった同社のブースのようすについてもレポートする。

マイクロソフト50周年と教育への取組みを紹介する特設コーナー

教職員の働き方改革を実現する「Copilot+ PC」

 マイクロソフトの教育部門では「Future-ready skills」として、議論しあう力・協働しあう力・好奇心・計算論的思考・創造性・疑問を逃さない思考性の育成を目指して日本の教育を支え続けている。そして現在、そのFuture-ready skillsを培うのに役立ち、教職員の働き方改革を実現する「Copilot+ PC」に注力している。

 小澤氏は「子供たちの個別最適で創造的な学びの深化、教職員の持続可能な働き方、安心安全なインフラの実現に向けて、Copilot+ PCは大きく貢献ができると考えています」と語った。

 Copilot+ PCはWindows史上、もっとも高速で最高峰のセキュリティを備えている。最低ハードウェア要件として16GBのメモリ、256GBのSSD、毎秒40兆回超の高速演算処理性能をもつAI処理に特化したNPU(Neural Processing Unit)を搭載したマシンを「Copilot+ PC」とよぶ。EDIXの会場では各メーカーが特色ある最新のCopilot+ PCを展示していた。2025年5月現在、9社がCopilot+ PCを提供している。

AIとともに進む新しい時代に向けて、充実するCopilot+ PCのラインアップ

 Copilot+ PCの教職員へのメリットとして、小澤氏はまず業務効率化をあげる。「先生方にはデジタルの教材作成やメール対応などさまざまな校務がありますが、AIを利用すれば飛躍的に効率が上がります。たとえば、PCの操作履歴を検索できる『リコール機能』を使えば、画面上で見聞きしたものを簡単にキーワードで探し出せます。弊社の調査によると、パソコンを使われる方は一般的に1週間当たりおよそ5時間を資料の検索に使っていますが、リコール機能を使えばこの時間は大幅に短縮できます」と説明した。

 さらに同社では今後「Project Spark」というCopilot+ PCのみで利用可能な学習支援ツールを展開する予定だ。これにより、PowerPointやWordで作成、あるいはオープンソースの既存のデジタル教材から、個別カスタマイズされたテキストやドリルを迅速に生成できるようになる。また、子供たちの習熟度を測り可視化もできる。

 小澤氏は「Copilot+ PCなら、ネットワークにつながっていなくてもAIを活用して業務を効率化することができるようになります。より多くのことを、より簡単にできるようになるわけです。そして、これらのテキストやドリルは子供たちの端末がCopilot+ PCでなくても、Windows 11であれば利用可能です。この取組みにより、先生方の教材作成の負荷は大幅に改善されるでしょう」と今後の教育現場への期待を語った。なお、「Project Spark」は最低ハードウェア要件を満たすCopilot+ PCであれば無料で利用でき、2025年6月ごろの英語圏でのプレビューを経て、将来的には日本でも対応される予定だ。

 またCopilot+ PCはネットワーク環境が不安定な学校でも活用できるメリットがある。「現在、ネットワーク環境が不安定で、クラウドベースの運用が難しい学校もあります。Copilot+ PCはローカルでAIを利用できるので、ネットワークの不安定さや負荷の影響を受けることなく快適に業務を行うことが可能です」と小澤氏は説明しました。

 セキュリティ面では「Microsoft Pluton」というセキュリティプロセッサを採用し、物理的なハッキングを防止。多くの先生方がAIの処理で心配されるクラウドでの成績表の処理などもローカルで行える。履歴検索機能であるリコール機能はデフォルトでオフになっており、過去のデータや自分のプライバシー情報が他人に見られないよう、ユーザー本人がPCの目の前にいないと使えないWindows Helloの生体認証が必須となっている。

 「お客さまがPCを安心安全にお使いいただくことは最優先事項です。私たちはこの考え方をセキュア フューチャー イニシアティブとよんで全社をあげて取り組んでいます」と小澤氏は同社の考え方を説明した。今後はさらにソフトウェアベンダーがCopilot+ PCに対応した製品・サービスを開発する動きがあり、さらに新たなAI体験が実現する見込みだ。

Copilot+ PCの特徴を説明する小澤拓史氏

「ルナクラフト」で実現する創造的な学び

 特別セッション「Minecraft Education×宇宙 ~マインクラフト月面再現教材『ルナクラフト』のすべて~」では、東京大学大学院 客員研究員でプロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏が進行役を務め、タツナミ氏がJAXAと共同開発した月面再現教材「ルナクラフト」の開発経緯や活用事例が紹介された。JAXAからは宇宙教育センター主任 宮崎直美氏、地球観測研究センター 主任研究開発員 河村耕平氏、昨年までJAXAの職員で現在は相模原市公立中学校教諭の塚脇幸太氏が登壇した。

東京大学大学院 客員研究員 タツナミシュウイチ氏

 ルナクラフトはマインクラフトに登場した月面ワールドで、月や宇宙について遊びながら学ぶことができる教材だ。今から15年前にゲームとして生まれたマインクラフトだが、タツナミ氏は学びの要素を入れ込むことが可能な教育プラットフォームとしての活用に着目した。ルナクラフトでは月に実在する玄武岩や斜長岩、橄欖石(かんらんせき)などを科学的根拠に基づき忠実に再現している。JAXAの「かぐや」衛星によって得られた3Dデータがマインクラフトのブロックのデータに変換され、地表だけでなく地下も含めた広大なワールドが作られた。総ブロック数は4億個を超える。

JAXAとタツナミシュウイチ氏が共同開発したルナクラフト

 河村氏は「鉱石の分布などはまず専門家の方に想像図を描いてもらい、それをもとにExcelの方眼紙に色を塗ってイメージを作りました。場所によって分布が偏っていることも科学的根拠をもとに再現しています」と開発経緯を解説した。

JAXA地球観測研究センター 主任研究開発員の河村耕平氏

 宮崎氏は「宇宙教育センターでは子供たちに宇宙を教えるために教材を作っているのではなく、宇宙をきっかけに宇宙で学ぶという理念があります。ルナクラフトをきっかけに、月での食糧問題や環境問題など、さまざまな事柄に興味をもってもらいたい」と理念を話した。

JAXA宇宙教育センター主任の宮崎直美氏

 ルナクラフトのワークショップでは「子供たちはゲームや端末操作に慣れているので、大人の想像を軽く超える成果物が得られます」と塚脇氏は言う。宮崎氏は「参加した子供たちの熱量が高く、とにかく皆集中していました。いろんな宇宙教育教材を作りましたが、これほど長時間にわたって集中力が切れない教材はないという手応えを感じました」と語った。

相模原市公立中学校教諭の塚脇幸太氏

 続いて行われたワークショップには、埼玉の子供たちがオンラインで参加した。月面開発のアイデアを皆で考えていく。タツナミ氏はルナクラフトの世界で何を作るかを考える前に、月面での生存条件について考えるよう促した。月面では宇宙服なしでは窒息し、重力は地球の6分の1で動きづらく、水や空気、食料の確保、宇宙放射線対策、120度からマイナス180度まである極端な温度差への対応など多くの課題がある。子供たちはこれらを考慮しながら、衣食住や医療、生活を豊かにするエンターテイメントなども含めて、ルナクラフトのワールドで宇宙開発のアイデアを形にしていく。

 質疑応答では、子供たちから宇宙人や宇宙食、ロケット・宇宙ステーションに関する質問が寄せられた。現在ルナクラフトのワールドやワークショップの教材スライド、使い方などの参考資料は、下記のJAXAのWebサイトからダウンロードできる。タツナミ氏は先生方に「ルナクラフトで子供たちと一緒に遊んでください。その中でどういう学びにつなげられるかを考えていただき、科学だけでなくいろんな教科とつなげてください」と呼びかけた。

 またタツナミ氏は「あと数年もすれば、子供たちのほうがAIを使いこなして、自分たちで進んでいく時代になります。そうした学習環境を大人が子供たちと一緒に作っていく。彼らの希望が叶う環境を作っていくのは素晴らしいことだと思います」と教育的意義を語った。

LUNARCRAFT | 教育コンテンツ | JAXA 宇宙教育センター

マイクロソフト50周年とAIで変わる教育の未来

 2025年4月に50周年を迎えたマイクロソフトのブースは、教育現場でのAI利活用のソリューション事例が数多く展示され、来場者はマイクロソフトのスタッフと活発に対話を重ねていた。

 体験学習セミナーでは、Copilot+ PCやReading Progress、マインクラフトなどの学校現場での活用例が紹介され、多くの参加者が体験しながら学んでいた。

 ブース内は、学習・校務アプリケーション、データ、セキュリティ、AIと各テーマで分かれており、Copilot+ PCやTeamsなどを活用した校務の効率化や授業での活用、個別最適な学びの実現に向けた最新のソリューションがスタッフにより紹介された。


 Windowsの最大の利点は、法人90%以上のシェアを背景とした社会とのつながりだ。幼いころからWindowsに触れることで、社会人になってもスムーズにICTを活用できるのは心強いメリットといえよう。新たなAI体験を生むCopilot+ PCの今後の展開に期待が高まる。

AI in Education みんなで創るGIGAの未来
日本マイクロソフト

提供:日本マイクロソフト

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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