内田洋行は2025年5月7日、京都大学学術情報メディアセンター教育情報学研究分野が開発したラーニング・アナリティクスツール「LEAFシステム」の販売を初等中等教育機関向けに開始した。「LEAFシステム」は、デジタル教材の閲覧履歴や教材に書き込まれた内容などの学習履歴データを教職員や児童生徒が簡単に分析できるツールで、学習者個々人に寄り添ったよりきめ細かい学習・指導を実現する。
GIGAスクール構想により、小・中学校・高等学校では児童生徒1人1台の端末と高速ネットワーク環境が整備され、各種のデジタル教材の活用による新たな学習が加速している。一方、それらの環境で収集されたデータを教育にどう生かし、子供たちの個に応じた学びにどう反映するかは大きな課題となっている。
2020年より、内田洋行教育総合研究所と京都大学学術情報メディアセンター教育情報学研究分野は協業を開始し、京都市や滋賀県の研究協力校において、「LEAFシステム」を利用することによる児童生徒の理解度向上や教職員の負担軽減に関するデータを集計分析し授業改善に生かすなど、学校現場に適したデータ活用についての実証研究を進めてきた。
また、「LEAFシステム」は、2022年に実施された文部科学省のデジタル教科書の実証事業において採用され、デジタル教材の配信基盤としての有効性が示された。今回、製品化にあたり、「LEAFシステム」のユーザーインターフェースや各機能を大幅に刷新し、児童生徒や教職員にとってより直感的で使いやすいシステムへと進化した。これらを踏まえ、全国の初等中等教育機関向けに「LEAFシステム」の提供を開始する。
「LEAFシステム」は、デジタル教材配信システム(E-Bookリーダー)のBookRollとデータ分析ツールであるログパレット、学習履歴データベースLRS(Learning Record Store)からなる。BookRollは、教職員がデジタル教材(PDF)を登録すれば、児童生徒が端末上のWebブラウザでその教材を簡単に閲覧できるデジタル教材配信システム。児童生徒は、教材上でマーカーを引いたり、メモを書き込んだり、ページをめくったりして、BookRoll上でさまざまな学習活動を行うことができ、それらの活動は、学習活動に関するさまざまなデータを管理するLRSに蓄積される。
ログパレットは、LRSに蓄積された「学習ログ」を分析し可視化するデータ分析システム。たとえば、マーカー分析では、児童生徒が引いたマーカーを教材上に重ねあわせて着目点を明確にするマーカーヒートマップや、引かれたマーカーの単語を集約するワードクラウドを自動的に表示することができる。手書き(ペンストローク)分析では、児童生徒の筆跡をあとから再現することができ、計算過程でつまずいた点やかかった時間を把握することができる。教職員はログパレットでの分析結果から得られた知見を次の授業準備に生かしたり、児童生徒の個に応じた学習指導に役立てたりすることができるという。
「LEAFシステム」の提供価格は600円(税別)で、小・中学校・高等学校向け児童生徒1人あたりの年間ライセンス金額である。人数により変動するが、別途、導入費用などが必要となる。
内田洋行の学習eポータル「L-Gate」と「LEAFシステム」の連携により、学習eポータル「L-Gate」に登録された児童生徒の名簿情報と連携することで「L-Gate」からIDやパスワードを入力しなくても自動的にログイン(シングルサインオン)できる。すでに「L-Gate」を利用中の人は、そこから簡単にアクセスするだけで、BookRollやログパレットをすぐに使い始めることが可能だという。
今後、国際技術標準xAPI(Experience API)に基づいて「L-Gate」と「LEAFシステム」の学習ログをLRSに集約し、「L-Gate」と連携するアプリケーションの学習ログと「LEAFシステム」で得られる分析データを多角的に表現することにより、児童生徒の個別最適な学びに資するデータの利活用を提案していくとしている。