教育業界ニュース

【クレーム対応Q&A】汚れるので習字はさせないでほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第161回のテーマは「汚れるので習字はさせないでほしい」。

事例 その他
画像はイメージ
  • 画像はイメージ

 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第161回のテーマは「汚れるので習字はさせないでほしい」。

習字は学習指導要領で規定されている

 年の初めに自分の想いを込めた字を書く「書き初め」は多くの学校で行われています。冬休みの宿題として「書き初め練習」が出されている学校もあります。ただ、保護者から習字に取り組むことで、「服が汚れる(汚れが取れない)」「床や机が汚れる」などのクレームが学校に寄せられることがあります。極端な意見として「習字はやらないでほしい」という場合もあります。

 まず、習字(書写)に扱いについて確認をします。小学校の学習指導要領において「国語」の中で位置付けられています。低学年(第1学年および第2学年)では「姿勢や筆記具の持ち方」「点画の書き方や文字の形」などが学習内容として定められています。中学年(第3学年および第4学年)では「毛筆を使用して点画の書き方への理解を深め、筆圧などに注意して書くこと」などとなっています。高学年(第5学年および第6学年)では「毛筆を使用して、穂先の動きと点画のつながりを意識して書くこと」などとなっています。

 「学習指導要領」は学校における学習のベースとなるものです。そこに示されているものを適切に取り組んでいくことは学校として大事なことです。保護者から「汚れる」「面倒」などの理由で習字に関して苦情が寄せられたとしても、上で書いたような法的根拠を示し、説明することが必要でしょう。

自治体や学校による違い

 ただ今回の習字(書写)の件で、学校として考えていきたいことがあります。学習として取り組むことは必須なのですが、取組みに対する力の入れ方は自治体や学校によって違いがあるということです。私はかつて公立小学校の教員をしていました。神奈川県横浜市で14年、埼玉県深谷市で8年です。2つの自治体では、習字に関する力に入れ方が違っていました。埼玉県深谷市の学校では、横浜の学校と比べ、非常に力を入れていました。春には「硬筆」、冬には「書き初め」に熱心に取り組んでいました。どちらも授業でも宿題でも時間をかけて取り組んでいました。その後、学校で書いたものを校内で審査し、その後、市町村の単位で審査をしていました。さらに優秀な作品は県の展覧会に出展するという形でした。私の勤めていた小学校では、硬筆でも書き初めでもクラスの代表として選ばれた子供は放課後に居残りで教員の指導のもと、練習に取り組んでいました。

 埼玉県での習字に対する取組みは良い面がたくさんあると感じていました。ただ昨今話題となっているように「学校の多忙化」は、問題でもあります。習字だけではありませんが、これまで取り組んできたものを盲目的にそのまま続けるのではなく、今の子供にとって何が必要なのかということを考えることは大切なのだと思います。私のように都道府県をまたいで異動をしたり、公立小学校を辞めて大学などに移ったりすることで、気づくこともあるのだと思います。それまで取り組んできた自分たちのやり方がすべて正しい(当たり前)と思うのではなく、色々な人(違う自治体の教員、教員以外の他業種の人など)と関わることで見える景色が変わってくる場合もあります。

汚れが気になる保護者へアドバイスを

 また、汚れが気になる保護者に対して、適切なアドバイスをしていくことも良いでしょう。スーパーなどにおいて「衣服に付いても落としやすい墨」などが販売されています。こういったものを保護者に紹介することで、保護者として助かる場合もあるでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

質問をする
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

+ 続きを読む

この記事はいかがでしたか?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top