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【クレーム対応Q&A】GIGA端末を持帰りNGにしてほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第160回のテーマは「GIGA端末を持ち帰らせないでほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第160回のテーマは「GIGA端末を持ち帰らせないでほしい」。

GIGA端末は家庭でも積極的に活用すべき

 日本中の学校での学びの形を大きく変えたものが「GIGAスクール構想」です。GIGA端末に関して、最近、保護者から学校に寄せられる訴えとして「GIGA端末を持ち帰らせないでほしい」ということがあります。色々な事情によりこういった保護者の訴えが生じています。私は「家庭に持ち帰らせない」という考え方には反対です。GIGA端末は日常的に家庭に持ち帰り、学校でも家庭でも積極的に活用していくべきだと考えています。

 「1人1台端末」により、明治期より日本の学校で取り組まれてきた「黒板」「ノート」「鉛筆」を使った学びからタブレット/PCを使った学びへと移行しています。この変化は、単に「用具」が変わるということだけでなく、学びの「質」を大きく変えるものです。文科省が示している「個別最適な学び」を実現できる環境が整いつつあることを意味します。

 「GIGA端末」に関しては、2020年の春以降、それぞれの時期によって課題が変化しながら、現在を迎えています。2020年には「GIGA端末を配備してほしい」ということが大きな課題でした。その後、「もっと授業で活用してほしい」「家庭に持ち帰らせてほしい」などの課題に移り、最近では「壊れたGIGA端末を替えてほしい」「机を広げるキットを購入してほしい」などになっています。

 そういった中で注目したいものが「GIGA端末を持ち帰らせないとほしい」というものです。これはさまざまな要因が関係して、こういった保護者の訴えとなっています。2023年7月にGIGA端末に関して文科省が発表したものでは、小学校では8.1%が「持ち帰らせてはいない」、1.5%が「持ち帰ってはいけないこととしている」となっています。「臨時休校などの非常時のみ持ち帰る」は9.2%となっています。約2割の小学校では、日常的に持ち帰りがされていない現状です。

 一部の保護者の「持って帰らせないでほしい」という声もあり、学校や自治体の判断として「基本的には持ち帰らせない」としている学校が約2割あります。これは大きな間違いだと私は思っています。確かにGIGA端末を持ち帰らなければ、その端末を使ってのトラブル(不適切な動画の視聴、SNSのいじめなど)は起こりにくくなります。しかし、それは場当たり的な対応に過ぎず、子供は家庭にあるスマホ・タブレット・PCなどを使って、似たようなことをする可能性は低くありません

情報端末との適切な関わり方を学ぶことは重要

 現代社会では、スマホ・タブレット・PCなどの情報端末は、家庭、職場、学校などほとんどの場所で活用されています。学校が「責任逃れ」的にGIGA端末の使用に制限をかけてもそれは問題に解決にはつながりません。GIGA端末であれ、私物のスマホ・タブレット・PCなどであれ、適切な関わり方を学ぶことが現在の社会では非常に重要となっています。

 GIGA端末の活用は、先述の「黒板」「ノート」「鉛筆」を使った学びとは、質の違った学びの可能性を秘めている一方、大きな問題を抱えていることも事実です。端末を使ってのトラブル(不適切な動画の視聴、SNSのいじめなど)に学校や親はきちんと向き合い、取り組んでいくことが求められます。トラブルを起こさせないために家庭への持ち帰りをしないというような責任放棄のような対応では、状況は悪くなるばかりです。スマホ・タブレット・PCなどの情報機器の適切な使用は、現代の基礎的能力の1つです。これまでの学びにおける「鉛筆の持ち方」や「九九」のようなものでしょう。子供が適切に活用できるよう、学校においても、家庭においてもしっかりと時間をかけて取り組んでいくことが必要でしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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