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【相談対応Q&A】モンペと思われそうで学校に意見を言いにくい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第234回のテーマは「モンペと思われそうで学校に意見を言いにくい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第234回のテーマは「モンペと思われそうで学校に意見を言いにくい」。

相手を尊重し、互いに信頼感があるか

 保護者や地域の人から多様な意見が集まる学校は良い学校だと私は考えています。多くの学校で年度末にアンケートなどが実施されていますが、それが形だけであまり実のあるものになっていない場合もあります。このように意見を集める際に難しいことが「多様な意見」と「理不尽な苦情」の境目です。この2つは厳密に分けることができるわけではありません。ただ保護者や地域の人の思いがどちら寄りなのかということを教員は常に感じ取りながら意見を聞いていきたいです。「多様な意見」と「理不尽な苦情」の違いとは、少し言い方(見方)を変えると「協力的な保護者」と「モンスターペアレント」の違いとも言えます。相手を尊重する気持ちがあるのか、互いに信頼感があるのかということが関係してくると言えるでしょう。これは保護者だけのものではありません。学校(教員)が保護者を信頼しているのかということも関係してきます。

モンスターペアレントになる前段階がある

 ところで、モンスターペアレント(モンペ)は、急にモンペになる訳ではないと私は考えています。学校へのクレームに関しては「クレームのピラミッドモデル」があります。「クレームのピラミッドモデル」では「クレーム」の前の段階として「相談」「質問」の段階があるとされています。モンペの理不尽な苦情も、前段階があったのだと思われます。急に激情して、理不尽なことを学校に言ってくるわけではないでしょう。何らかの疑問や納得のできないことがあり、それに関して学校とのやり取りをしたうえで、思いが爆発してしまった状態が「モンスターペアレント」なのでしょう。

 2025年5月8日に東京都立川市で小学校に保護者などが侵入し、教員が負傷するという事件がありました。このケースでは、保護者が自分の子供のいじめのことで学校に相談に来たのですが、そのことで納得ができず、一度校外に出た後、知人(2人)を連れて、学校に侵入し、教員への暴力に至ったとのことです。もちろん暴力を振るう人が悪いのは当然ですが、そこに至るまでに学校(教員)としてできることはなかったのかということを考えていくことは意味のあることだと思います。

学校と保護者で良好な関係を築くことが大切

 また、日頃からの人間関係も大切でしょう。保護者と教員の人間関係で良好であれば、何かのトラブルが発生したとしても問題は大きなことにはならないことも多いです。それが、人間関係が良好で無い場合は、問題は小さなことだったとしても、ボタンの掛け違いのようなことが重なって、大きな問題に発展してしまうこともあります。相手に対して不信感を抱いてしまうと相手の言うことをきちんと聞く(理解する)ことができなくなってしまいます。

 学校(教員)としては、保護者と良好な関係を築き、そのうえで、さまざまな情報(意見)が集まる状況を作っていくことが大切となります。色々な意見をもらう中で、問題点は早めに改善し、より良い学校教育活動が続けられるようにしていくことが望まれます。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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