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堀田龍也教授が語る「個別最適な学び」を叶える良質なデジタルコンテンツ

 学習指導要領の改訂ならびにGIGAスクール構想の推進により、教育現場にGIGA端末が導入され、ICTを活用した個別最適な学びの実現が求められている。2022年5月20日に開催したウェビナー「オンライン百科事典と学びの個別化」から、堀田龍也教授の講演を振り返る。

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堀田龍也教授が語る「個別最適な学び」を叶える良質なデジタルコンテンツ
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  • ブリタニカ・スクールエディション

 学習指導要領の改訂ならびにGIGAスクール構想の推進により、教育現場にGIGA端末が導入され、ICTを活用した個別最適な学びの実現が求められている。新しい学びをどう進めていくべきか、具体的にどうするべきか迷う場面も多いのではないだろうか。ここでは、リシードがオンライン百科事典「ブリタニカ・スクールエディション」を提供するブリタニカ・ジャパン協賛のもと、2022年5月20日に開催したウェビナー「オンライン百科事典と学びの個別化」での、東北大学大学院 情報科学研究科 教授、東京学芸大学大学院 教育学研究科 教授で、中央教育審議会などで数多くの委員を務める堀田龍也氏の講演から、新学習指導要領が示す新しい学びのポイントと、それを実現するICTの活用について紹介する。

 堀田教授は「『個別最適な学び』の考え方とICTの活用」を演題に掲げ、GIGAスクール端末とICTを用いた個別最適な学びについて、「オンライン百科事典のようなクラウド上の良質なコンテンツが重要になる」と説いた。

個別最適な学び、学習の個性化が求められている

 「学びの地図」である学習指導要領は2020年度から改訂が行われた。新学習指導要領では「生きる力 学びの、その先へ」を掲げ、社会が非常に速いスピードで変化していくことを前提に、(1)学びに向かう力・人間性など (2)知識および技能 (3)思考力・判断力・表現力などの3本柱の資質・能力を育成することを通して、子供たちの「生きる力」を確実に育むことを目指している。そして、その大きな特徴は、子供たちが「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」を重視して授業を改善している点である。

 それについて、堀田教授は講演で「新学習指導要領では学び方の多様性が担保されることが重要になっている」と指摘。「新しいことを、常に、生涯学び続ける人材を育てるために、従来の先生に教わって学ぶやり方以外にも、さまざまな学び方の経験をしておく学びの多様性にフォーカスがあたっている」と述べた。その際のテーマになっているのが「個別最適な学び」である。

 講演では、堀田教授も委員を務めた中央教育審議会の令和3年1月の答申が示され、新学習指導要領が描く新時代の学びとして「個別最適な学び」がキーワードになっていると説明された。令和の日本型学校教育における学びでは、個別最適な学びと協働的な学びが一体的に充実することによって「主体的・対話的で深い学び=アクティブラーニング」となる授業の改善が起こり、子供の資質・能力の育成につながるという全体図が提示されていた。

 そこで核とされる個別最適な学びには、「指導の個別化」「学習の個性化」の2つがある。前者はおのおのの特性や進度にあわせて学習内容が確実に定着するように子供のペースにあわせる学びで、AIドリルなどによって行われているものだが、後者の子供ひとりひとりが自分の興味や関心、こだわりに向けて各自のペースで自分の学びの広がりを理解しながら学んでいく「学習の個性化」が探究的な学びや協働的な学びにつながっている。

 「学びを個別最適にするのは教師やシステムではなく、学び手である子供自身であることを忘れてはなりません」と堀田教授は言う。「子供自身がデータに基づいて自ら最適化していくことが、自己調整学習や学習適性の理解につながる」(堀田教授)ため、「学習の個性化」で自らの知りたい意欲を元にした探究的な学びを進める中で、多様な他者と協働を行い、他の人の意見を取り入れながら自らの学びを深めていくやり方が求められている。

ICTを活用し児童生徒が自ら個別最適な学びを進める

 そうした個別最適な学びと協働的な学びを児童生徒が自ら実際に進めていくツールとして整備されたのが、今回のGIGAスクール構想だ。子供ひとりひとりが端末を持ち、さまざまなデータにアクセスして学び、先生は子供たちの活動のようすを把握しながら支援していくというもの。教育現場に導入された端末はさまざまであるが、クラウドにアクセスしてクラウド上のデータ、各種サービスを活用することを前提としているため、クラウド上の良質な学習コンテンツが豊富に提供されることや、高速大容量のネットワークが安定的に確保されることなど、環境整備が重要となっている。

 すでに実際の授業においても、堀田教授が講演で示したように、グループで話しあいながらGoogleのJamboard(デジタルホワイトボードツール)にて資料を共同作成したり、友達とオンライン議論をしながらデジタル付箋で意見を出しあうなど、ICTツールが幅広く活用されている。「わからない言葉や関心のある事項はすぐに検索を行うなど、いろいろなリソースにあたれるのがオンラインの強みだ」と堀田教授は語る。

 「ある言葉をネットで調べたときに、意味以外にも同じ表現が使われている他の文章が出たり、この表現はどう味わえば良いのかといったコンテンツが出るのがネットの良さ。先生から解釈を教わるだけではなく、いろんなリソースにあたって、先生の解釈もそのひとつであると知る。その中でどれを採択するかを自分で決められるようになり、自分のこだわりに返ることができる」という。GIGAスクール構想により、子供がオンラインでさまざまなリソースにあたれるようになることで、個別の学びがより広がり、深まっていくのである。

良質で安全なデジタルコンテンツの重要性

 しかし、そうしたICTを活用した個別最適な学びを進めるにあたり、ネット上のコンテンツがすべて学術的に正しいとは限らない。また、コンテンツの表現が子供たちにとってふさわしく、わかりやすいかどうかも玉石混淆である。つまり、クラウド上に提供される学習コンテンツは、学びを深めていくのに欠かせないツールであるものの、その質が担保されていることが重要となるのだ。

 子供にわかりやすい表現で書かれていて、質が保証されており、「もっと知りたい」という知的好奇心がくすぐられ、そこに戻ってくることで頭が整理されるような良質で安全なデジタルコンテンツが重要となる。そして、そうしたコンテンツがきちんと用意され、いつでも好きなときにアクセスできることが求められるのである。

 堀田教授はそうした良質なデジタルコンテンツとして、検定教科書をデジタル化した「デジタル教科書」と「他の良質なデジタル教材」を示し、双方を組み合わせることでさらなる学習効果が期待できると語った。デジタル教科書は紙の教科書を端末でも見られるようにしたものなので、もちろん質は保証されており、学習の軸として欠かせない。さらにデジタル教科書・教材は情報端末で見られるため、拡大や書き込み、音声読み上げ、ルビ振りなど、より理解を深めるデジタルの合理的配慮といわれる機能がついているのが特徴だ。

学習の個性化を進める、質の高いデジタルコンテンツ

 そのうえで堀田教授は、「個別最適な学びのうち、『学習の個性化』は教科書とそのドリルだけでは足りず、良質なリソースにあたって学ぶことが必要となる。そうしたときに長い時間をかけて作られた百科事典のような質が高いコンテンツが求められる」と指摘し、学習の個性化に適した良質なデジタルコンテンツとして、百科事典を例示した。百科事典は長い歴史をかけて知見が蓄積された書物であり、質が高いことはお墨付きである。さらに近年はビジュアル的にも配慮され、絵などのビジュアルだけでもおおいに子供たちの興味を引き、興味関心を深める入口や探究の芽の育みになっている。

 昨今はオンライン百科事典「ブリタニカ・スクールエディション」のようなデジタル教材が提供されているが、こうしたオンライン百科事典では音声が出たり、関心をもった項目のページやデータにアクセスできたり、探究に値するような大きなテーマの中で話しあう・調べるきっかけを提供したりとデジタルの強みを生かした内容に進化している。

 実際にオンライン百科事典の内容をみると、書いてある言葉自体がわからなくても絵が目を引くため、子供たちが飽きずに見ることができ、繰り返し活用できる。たとえば「アフリカ」を調べると、アフリカの地理、気象、人口など多様な項目があり、見ているだけで「なぜ国境がまっすぐなのか」などの疑問がわき、それが探究の目となるのである。もちろん、そこから関連ページにリンクでとべたり、データにあたることもできる。堀田教授は「子供たちにとってワクワクする材料になっている」と高く評した。

 さらに堀田教授は今後について「探究的な学びは一層重視されていく」と指摘。人口減少社会でAIやロボットの導入が進む中、人間がやるべき仕事は機械ができるルーティーンではなく、その人のこだわりや個性を生かしたものとなり、それらは探究的な学びで培われるとし、自分のこだわりを個別最適に探究することが重要になるという。「探究的な学びで生じるような、デジタルテキストをしっかりとアクセスして、スキャンして読み取って、自分の意見をもつ、そういう学習活動がこれからさらに重視されるのではないか」と堀田教授。今後さらに探究的な学びの推進が求められる中で、良質な知的コンテンツが結集したオンライン百科事典は、デジタル教科書のお供として高いシナジー効果を発揮し、子供ひとりひとりの学習の個性化を支えるツールとして役に立つだろう。

オンライン百科事典で子供の好奇心と探究心を広げる

 オンライン百科事典「ブリタニカ・スクールエディション」は、小・中学校に提供している信頼できる百科事典データベースに各種コンテンツが入ったオンライン百科事典で、個別最適な学びを支援する良質なデジタル教材である。使い方は、各自の端末にてオンライン(Webブラウザ)で利用するため、ソフトのインストールの必要がなく、OSやPC・タブレットといった端末の形態による制限なく利用できる。同百科事典を提供するブリタニカ社は1771年に百科事典の出版社として創立し250年の歴史をもつ。かつてはアインシュタインやキュリー夫人なども百科事典に執筆しており、昨今は時代の変化に伴いデジタルコンテンツを制作して教育現場にソリューションを提供している。

オンライン百科事典と学びの個別化(アーカイブ)

登壇者

東北大学大学院 情報科学研究科 教授/東京学芸大学大学院 教育学研究科 教授
堀田龍也氏
早稲田実業学校 初中高連携担当
竹林和彦氏


ブリタニカ・スクールエディション
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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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