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「情報洪水」に飲まれず生きる力を育む、ドルトン東京学園の探究学習

 今回、ブリタニカ・ジャパンがドルトン東京学園で実施した出張授業のようすを取材。生徒が質の良い情報を正しく活用し、自身が設定した課題にどのように向き合うべきなのかを探った。

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「情報洪水」に飲まれず生きる力を育む、ドルトン東京学園の探究学習
  • 「情報洪水」に飲まれず生きる力を育む、ドルトン東京学園の探究学習
  • 授業を担当したブリタニカジャパンの石澤洋平氏
  • 生徒たちは、さまざまな項目にたどり着いた
  • 授業終了後、3名の生徒が感想を話してくれた
  • 「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」では、信頼できる情報のみが表示される。本文中に登場する他の項目を「芋づる式」にたどっていくことも可能だ。
  • 石澤氏も思いつかなかったような使い方が生まれたようだ
  • 石澤氏が考える、情報収集の難しさとは
  • テーマ選定時から信頼できる情報に触れることは重要だ
 インターネット上にあらゆる情報が溢れている現代において、信頼できる情報を見極め、正しく取捨選択する能力は欠かせない。子供たちが課題を解決し、自身の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目的とする初等中等教育の探究学習では、情報をうまく扱う能力を養うことも求められている。

 今回、中学・高等学校向けサービス「ブリタニカ・オンライン中高生版」を提供するブリタニカ・ジャパンがドルトン東京学園で実施した出張授業のようすを取材。生徒が質の良い情報を正しく活用し、自身が設定した課題にどのように向き合うべきなのかを探った。

出張授業「〈情報収集〉を究めよう!」



 東京都調布市に位置するドルトン東京学園中等部・高等部は、2019年に開校した中高一貫校だ。今からおよそ100年前、米国の教育家ヘレン・パーカーストが、それまでの詰め込み型教育への問題意識から提唱した教育メソッド「ドルトンプラン」を柱として、「自由」「協働」の2つの原理を基に「学習者中心の教育」を目指している。生徒の主体性、探究心を養うことを目的とした同校の取組みには、大きな注目が集まっている。

 中等部3年生を対象に実施された今回の出張授業では、ブリタニカ・ジャパンでカリキュラムスペシャリストを務め、経済産業省「未来の教室」事業のSTEAMコンテンツ制作に関わった石澤洋平氏が講師を担当した。

授業を担当したブリタニカジャパンの石澤洋平氏
授業を担当したブリタニカジャパンの石澤洋平氏

 この授業の目的は、各自が決めたテーマについて論文や制作物を提出する「修了研究」を控える中学3年生の生徒たちに正しい情報の調べ方を伝えるとともに、自らが設定する課題を洗練させる方法を知ってもらうことだ。授業で用いられた「ブリタニカ・オンライン中高生版」では、日本語の百科事典データベース「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」に加え、3つの英語レベルで記事を読める「Britannica School」、300万点超の画像データベース「Britannica ImageQuest」を利用することができる。

 授業ではまず、「SDGs」や「調布市」といった身近なテーマで、「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」の使い方のオリエンテーションを行ったあと、本題に入った。

 石澤氏は「宇宙」という単語を例に、インターネットと「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」での情報収集の違いを説明した。インターネット検索で「宇宙」と調べると、数億件のページがヒットする。最新のニュースから個人のブログといったものまで膨大な数の情報が表示されるが、自身が本当に知りたい正しい情報にたどり着くのは容易ではない

 一方、「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」で同じく「宇宙」という単語を検索すると、専門家によって監修・執筆された百科事典項目が114件ヒットする。さらに、たとえば「宇宙開発における日本の役割--リスト集」の項目を開けば、関連する他の項目へのリンクが表示される。各項目の説明文からも他の項目へ移動することができ、「芋づる式」に関連項目を調べることが可能だ

 続いて石澤氏は、グループワークを実施した。まず「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」で「宇宙」と調べ、5分間、各自が気になる関連項目のリンクを次々とたどりながら、各項目の出典情報をWordファイルにコピー&ペーストしていく。最終的にたどり着いた項目をグループ内で共有し、グループごとに1つ選んで発表する、という課題だ。

 生徒たちは、同じ「宇宙」という単語から、それぞれの興味をもとに次々と関連項目をたどっていった。たどり着いたのは、宇宙に直接関連する「宇宙医学」等の項目だけでなく、経済学派のひとつである「ケンブリッジ学派」や、日清食品の創業者「安藤百福」といった宇宙とは一見程遠い項目までさまざまで、生徒ひとりひとりの興味関心を反映する結果となった。

生徒たちは、さまざまな項目にたどり着いた
生徒たちは、さまざまな項目にたどり着いた

 石澤氏は、睡眠に関する研究で著名な医学者・柳沢正史氏がSTEAMコンテンツの中のインタビューで語った「良い問い・切り口を見つけるには、知識がないとだめなんですよ」という言葉を引用。「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」を活用した「芋づる式」の検索により知識を蓄積していき、そこで得た知識をもとにさまざまな切り口やキーワードを見つけていくことで、自身が興味をもつテーマや課題をより一層洗練させることができると説き、授業を終えた。

 出張授業終了後、授業を受けた山崎さん、佐々木さん、後藤さん(いずれも仮名)の3名に話を聞いた。

授業終了後、3名の生徒が感想を話してくれた
授業終了後、3名の生徒が感想を話してくれた

--今回の授業で「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」を使ってみた感想を教えてください。

山崎さん:私のグループでは「宇宙医療」や「航空史」という単語が話題にあがり、それについて話しあいました。人によって異なる単語にたどり着いたことがわかって面白かったです。

佐々木さん:1つの項目から関連する複数の項目を参照できたり、キーワード検索でヒットしなくても本文検索で調べられたりするのが便利でした。

後藤さん:インターネットで検索すると、大量の情報がヒットしますが、その中から自分が知りたい情報を選ぶのは難しいと感じていました。「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」は、百科事典ということもあり、事実のみが客観的に書かれているので助かります。

「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」では、信頼できる情報のみが表示される。本文中に登場する他の項目を「芋づる式」にたどっていくことも可能だ。
「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」では、信頼できる情報のみが表示される。本文中に登場する他の項目を「芋づる式」にたどっていくことも可能だ。

 また、僕のグループでは、「アメリカ合衆国」という項目にだれがいちばん早くたどり着けるか、というミニゲームをしました。グループ内の1人が「アポロ計画」から「アメリカ合衆国」にたどり着き、「そのルートがあったか!」と盛り上がりました。普通に検索エンジンで検索するだけではできない学びだと思います。

石澤氏:面白いですね。ぜひ今後の授業でやってみたいと思います。

石澤氏も思いつかなかったような使い方が生まれたようだ
石澤氏も思いつかなかったような使い方が生まれたようだ

--今後、「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」をどのように活用していきたいですか。

後藤さん:石澤先生が紹介してくださったように、学びの中で何か課題に直面したときには、どれだけ知識をもっているかが重要だと思います。日常生活でわからないことがあったときに調べてみて、そこから深堀りしていくことで知識は身に付いていくと思うので、そういった場面で「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」は役に立つと感じました。ちょっとした疑問をもったときに、インターネットだけではなくて「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」等を活用して、楽しく学んでいきたいと思います。

佐々木さん:特に修了研究等の課題で使う情報となると正確な情報が必要ですが、インターネット検索だと出典元がわかりづらく、不正確な情報が多いことが難点です。その点、「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」は、情報源が明確で信頼できると感じました。わからない単語があったときや知識を蓄えるためにも活用していきたいです。

山崎さん:ドルトン東京学園では、プレゼンテーションをする機会が多くあります。他の人に誤った情報を伝えないためにも、信頼できる情報を活用したいと思いました。

情報の信頼性を見極めるのは、大人でも難しい



 講師を務めた石澤氏は、「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」を活用した探究学習をどのように捉えているのだろうか。

石澤氏が考える、情報収集の難しさとは
石澤氏が考える、情報収集の難しさとは

--ドルトン東京学園での出張授業を行うことになった経緯を教えてください。

石澤氏:今年1月にドルトン東京学園の司書の先生にお話を伺う機会があり、探究学習を行う中で生徒が情報収集を行う場面が多く、能力を強化する必要があるとお聞きしたことがきっかけです。

 他校でも多くの生徒がインターネットで検索して一番上に表示された情報をコピー&ペーストして終わっている現状があると聞いていたので、生徒の情報収集のサポートをしたい、と以前から考えていました。

 今回担当した中学3年生が取り組む「修了研究」のような探究型の学びでは、アウトプットがどのような形であれ、情報収集は必要不可欠です。今回の授業で伝えたかったのは、インターネット上にある真偽不明の膨大な情報ではなく、まずは信頼性の高い情報を入り口として情報収集を行ってほしいということです。

--探究学習において、「ブリタニカ・オンライン中高生版」を使うことのメリットを教えてください。

石澤氏:検索エンジンで「宇宙」と検索すると、膨大な量の情報がヒットしますが、情報は多ければ多いほど良いというものではありません。大量の情報の中から、信頼性が高く、自分が求めている情報を探すという作業はとても大変です。一方で、「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」では、専門の編集者・校閲者が何重にもわたってチェックした信頼できる情報のみが表示されます。

 探究学習において課題やテーマを選定する初期段階においては特に、検索エンジンでヒットした膨大で真偽不明の情報よりも、ブリタニカの信頼できる情報を活用したほうがよりスムーズに進められると考えています。

テーマ選定時から信頼できる情報に触れることは重要だ
テーマ選定時から信頼できる情報に触れることは重要だ

--「ブリタニカ・オンライン中高生版」のお勧めの活用例を教えてください。

石澤氏:探究学習において、生徒が何について探究するのかを決める段階で活用するのがお勧めです。授業でも実践したように、「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」で「芋づる式」に単語を調べ、自分がたどった経路を見返してみることは、自分の興味関心を把握するのに役立ちます。

 情報の信頼性が高く、インターネットと比べて項目数が絞られている「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」を活用していただくことで、探究学習において特に躓きやすい部分であるテーマ設定から、その後の情報収集や提出物の作成まで、有意義な活動を行うことができると思います。

 また、百科事典データベース「Britannica School」では、3段階の英語レベルから選択して項目を表示することができます。音声で再生することもできるので、多聴・多読の教材として英語の授業で活用するのも良いでしょう。

 「Britannica ImageQuest」には図表や図版も豊富に収録しており、教科書や資料集だけではイメージがつかみにくい専門的な用語や概念に出会った際に、ビジュアルで理解することの一助にもなります。探究学習だけでなく、さまざまな学びの場面で活用してほしいですね。

「ブリタニカ・オンライン中高生版」の詳細はこちら

生涯にわたって情報とうまく付き合っていくための力を



 最後に、国語科教員の改発祐一郎先生に、ドルトン東京学園での学びについて聞いた。

ドルトン東京学園で国語科教員を務める改発祐一郎先生
ドルトン東京学園で国語科教員を務める改発祐一郎先生

--ドルトン東京学園における生徒・教員のICT活用状況を教えてください。

改発先生:教員・生徒ともに1人1台端末を持っており、生徒は自身の端末を使用するBYODを採用しており、OSの指定もありません。新しい学校ですのでWi-Fi設備も整っており、比較的恵まれた環境だと思います。どの教科においても、ICTを活用することを教員が意識して授業を行っています。

--探究学習でどのようなことに取り組まれていますか。

改発先生:ドルトン東京学園が採用している教育メソッド「ドルトンプラン」そのものが、探究型の学習を基本としており、どの教科でも探究型の授業を展開しています。特に、中学3年生が修了研究を行う「アカデミック・スキルズ」の授業では、どのような課題を設定し、その解決のためにどのような情報源を参照して情報を選別し、どのようにアウトプットするのか、ということを学ばせています。

--情報収集を行うことについて、どのような指導をされていますか。

改発先生:インターネット上には「情報洪水」とも言われるほど情報が溢れ、情報を取捨選択する以前に、自分の興味関心すらわからない人も多いのではないでしょうか。生徒が今後生きていく中で、情報に振り回されるのではなく、まずは自分が何を知りたいのかを見極める姿勢を身に付けてほしいと思っています。

 また、インターネットで得られる情報は必ずしも正しいわけではありませんが、今の中高生にとってはこれらのサービスの存在が当たり前になっていて、「情報の質に注意しないといけない」という意識すらもっていないことが多い。情報そのものや情報源の質について意識的に教えていく必要があります。社会に出てからも情報に振り回されず、生涯にわたって情報とうまく付き合っていくための力を、修了研究を端緒として身に付けていってほしいですね。

改発先生は「情報を扱う力をライフスキルとして身に付けてほしい」と語る
改発先生は「情報を扱う力を『ライフスキル』として身に付けてほしい」と語る

--今回の出張授業後のアンケートでは、「自分では想像していないところまで行き着いた」「興味を広げる方法はたくさんあるのだなと実感した」という声があがりました。授業の感想をお聞かせください。

改発先生:探究というものは一本道ではないということを生徒が身をもって体感することができたのが、非常にありがたかったです。「テーマを決め、問いを立て、その解決のために情報を収集して…」という探究学習のプロセスを最初に示すと、厳密にそのとおりにやらなければならないと考えてしまう生徒が多くいます。実際には、なんとなく興味をもった問いをもとにテーマが後から決まることがあるように、探究のプロセスはひとりひとり異なるということをどのようにして生徒に伝えればよいか、考えていました。

 今回の授業では、「宇宙」というひとつの単語を起点に、「オーストラリア」のページにたどり着いた生徒や複雑な方程式を見つけた生徒等、それぞれが違った経路をたどっていました。自身の興味関心を探り、課題を見つけるにあたって、さまざまなプロセスがあり得るんだということを生徒が実感できたと思いますし、修了研究の授業を進めていくうえでのヒントをいただくことができました。

授業では、短い時間で生徒ひとりひとりの個性が見られた
授業では、短い時間で生徒ひとりひとりの個性が見られた

--「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」を活用することで、生徒にどのようなことを期待しますか。

改発先生:「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」を活用することのメリットは、やはり質の高い情報だけに絞られていることだと思います。インターネット検索の上位に表示された情報だけを使っていては、表面的な論文しか書けません。今回教えていただいたような手順で「本物の情報」を集め、その中から自分が必要とする情報を選択・編集するというプロセスを経ることで初めてクオリティの高いものが制作できるということを生徒に体験してもらいたいですね。

--ありがとうございました。

 インターネット上に情報が溢れ、大人であってもいつのまにか真偽不明の情報に振り回されていることがある。「ブリタニカ・オンライン中高生版」を活用し、信頼できる情報の重要性を体感したドルトン東京学園の生徒たちは、課題を解決するために必要な「知識」という武器を身に付けていくことだろう。

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《多賀秀明》

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