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学校の枠を越えて広がる新しい学びの形、「tomoLinks」が実現する遠隔・協働学習

 園田学園女子大学人間教育学部・教授の堀田博史氏および、箕面市教育委員会子ども未来創造局学校教育室指導主事の岩永泰典氏に、tomoLinks導入の経緯と同サービスの今後の役割や期待などについて話を聞いた。

事例 活用例
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2021年夏に実用が開始された「tomoLinks」の基本機能
  • 2021年夏に実用が開始された「tomoLinks」の基本機能
  • コニカミノルタ「Innovation Garden OSAKA Front」での対談のようす。左が園田学園女子大学人間教育学部・教授 堀田博史氏、右が箕面市教育委員会子ども未来創造局学校教育室指導主事 岩永泰典氏
  • 対談終了後のようす
  • 箕面市での「tomoLinks」使用説明会のようす
  • 箕面市小学校 30人ほどの学級での実用のようす
  • 「tomoLinks」に搭載された「デジタル連絡帳」の基本機能
  • 学びの分析サービスについて
 複合機の導入実績などで全国の学校とネットワークをもつコニカミノルタが、新しい教育事業を展開している。同社の強みである光学・画像解析などの技術を活かし、学びの効率化・見える化を実現するクラウド型の学習支援サービス「tomoLinks」を今夏開始した。

 tomoLinksは遠隔学習、協働学習、学校生活デジタル情報を1つに統合したマルチブラウザ対応のWebアプリで、先生・子供たちの校内外の授業および協働学習を支援する。動画教材や問題集を安全に共有・利用できる「学習用ライブラリ」、先生の自作教材への子供たちの取組みを遠隔でもリアルタイムに進捗確認・共有できる「遠隔を含む協働学習支援(とも学)」や、保護者への一斉・個別連絡ができる「デジタル連絡帳」、子供たちの心の元気度をチェックする「にこにこケア」の機能などを備え、1アプリで遠隔・校内の学習を繋ぐサービスとなっている。さらに現在、学習履歴の可視化や授業の振り返り支援、行動解析など学びの分析サービスも開発しており、今後搭載される予定だ。

 今回は教育工学やICT活用の研究者の園田学園女子大学人間教育学部・教授の堀田博史氏および、大阪府箕面市の新しい学習支援システム導入に携わった箕面市教育委員会子ども未来創造局学校教育室指導主事の岩永泰典氏に、tomoLinksを採用した経緯と同サービスの今後の役割や期待などについて話を聞いた。

ほしい機能がすべてある



--箕面市のICT教育の取組みと、tomoLinks導入について教えてください。

コニカミノルタ「Innovation Garden OSAKA Front」での対談のようす。左が園田学園女子大学人間教育学部・教授 堀田博史氏、右が箕面市教育委員会子ども未来創造局学校教育室指導主事 岩永泰典氏
コニカミノルタ「Innovation Garden OSAKA Front」での対談のようす。左が園田学園女子大学人間教育学部・教授 堀田博史氏、右が箕面市教育委員会子ども未来創造局学校教育室指導主事 岩永泰典氏

岩永氏:箕面市では2018年度からクラウド構築を行い、市費で小学校4~6年生に1人1台タブレットを配備し、2020年度にはGIGAスクール構想によって小中学校の全児童・生徒に1人1台タブレットを配備しています。私自身は5年前から教育委員会でICTを担当していて、今回のtomoLinks導入にあたってもソフトの精査などを行いました。

 導入の決め手になったのは機能面です。箕面市は昨年のコロナ休校中に、授業動画などをタブレットに入れて貸し出し、家にパソコンがある家庭はYouTubeにアップした授業動画を見てもらう試みを行いましたが、教職員の中には、授業を広く配信してしまうことへの懸念や、不特定多数が見られる状態で子供たちに伝えたいことが本当に伝わっているのかどうかわからないといった不安がありました。教育委員会にも、先生たちに生き生きと授業をしてもらうためには何か考えなければならないという思いがあり、その点、tomoLinksは動画の格納もできるので、先生たちの懸念が払拭されるのではないかと思いました。

 さらに、休校中の学びを振り返ったとき、学習支援サービスが有効的に活用できればプリント配布や授業もオンラインでできたのではないかというのが課題として上がっていました。tomoLinksはこうした我々教育委員会が求めている機能がほぼ入っていた。これが、導入決定の一押しになったと感じています。

 なかには、休校時にZoomでオンライン授業を行ったクラスで、不登校児がオンラインで授業参加できた、休校期間明けにまずは保健室から出席したいという子供がいた、という報告を受けています。tomoLinksは遠隔のさまざまな場所から学校・教室をシンプルな操作でつなぐことができます。ですので、こういった「場所を選ばない、子供の希望に最適化された学び」の提供もtomoLinksに期待する成果の1つです。

箕面市での「tomoLinks」使用説明会のようす
箕面市での「tomoLinks」使用説明会の様子

--現場の先生や子供たちの反応はいかがでしょうか。

岩永氏:子供たち自身もサクサクと操作しており、心配することはないと思います。

 一方の先生方、特にICTが得意ではない先生は導入前に不安があったようですが、tomoLinksは視覚的にも直感的にも、操作がわかりやすくて、ICTが苦手な先生でも操作がしやすかったようです。子供たちに感想を聞いてみましたが、「スムーズに使えたのがよかった」とか、「先生がすごく楽しそう」という意見もありました。ICTが得意ではない先生も「これは面白い」と言いながら授業をされていたようです。子供たちもそれを見て楽しみながら、先生が何かするたびに拍手するといったやり取りがありました。

堀田氏:そんなに使いやすいのですね。

岩永氏:そうですね。これまでは学習支援サービスとテレビ会議システムとで別のツールが入っていて、学校現場から「使い方がわからない」といった声がありました。教育委員会としては1つのツールでテレビ会議も、授業支援も、動画登録配信もできるものがあったらと希望していた中で、tomoLinksはそのすべての機能を備えていたのです。これさえ操作できるようになれば良いという安心感もよかったですね。

箕面市小学校 30人ほどの学級での実用のようす
箕面市小学校 30人ほどの学級での実用のようす

ニーズが高いデジタル連絡帳とにこにこケア



--保護者からの反応はいかがでしょう。

岩永氏:連絡帳をデジタル化してほしいという保護者のニーズは、非常に強いと思います。箕面市では、9月から一斉にtomoLinksのデジタル連絡帳機能を利用開始したいと考えており、保護者からの期待が大きいですね。

「tomoLinks」に搭載された「デジタル連絡帳」の基本機能
「tomoLinks」に搭載された「デジタル連絡帳」の基本機能

--「にこにこケア」とはどういうものなのでしょうか。機能や使い方について教えてください。

岩永氏:子供が朝ログインした際に、そのときの気持ちによってニコニコ度合いを選ぶというもので、先生はその内容をすぐに見ることができます。ですので、もし子供たちが悲しい気持ちをつけていたら、「どうしたの」と声をかけることができます。箕面市の課題の1つである、子供の心の声をいかに拾っていくか、ということに対応できます。

 声に出して先生に伝えられない子や、実は相談したいもののなかなか切り出す方法がない子というのが現場には必ずいます。「にこにこケア」機能には、子供たちが自分の気持ちを口頭で伝える以外の新たな手段として、非常に期待できると思っています。

 この機能を用いることで担任だけではなく、多くの先生の目によって子供たちの心の状態を確認できます。不登校の子供や欠席している子供であっても家から発信してもらえれば、学校側でその子の心の状態をキャッチすることができるのです。そうすることで学校側の行動の仕方や、教育委員会のアプローチの仕方も変わっていくのではと期待しています。

--現状は学校で利用されていますが、今後は学童保育での活用についても想定されているのでしょうか。

岩永氏:学童保育はいろいろな課題がありますが、tomoLinksの活用で解決できる部分が多くあると思います。

 たとえば、学童保育の先生たちの出退勤や、子供の急な出席・欠席の連絡などのその都度変わる状況を、ICTで連絡可能にして把握できるようになれば、保護者も先生方もそれを束ねている教育委員会の担当部署も楽になるのではないかと思います。学童保育も学校も、通う子供と保護者は共通しているので、同じアプリを使えるほうが効率的ですので、導入に向けて検討している段階です。

学校内外の学び全体を支える



--現在の小・中学校における課題と、「tomoLinks」で解決できる可能性についてどのようにお考えですか。

堀田氏:GIGAスクール構想で各校に端末が入って、その操作スキルなどを子供たちが比較的簡単に身に付け、先生方がそれを追いかけるように活用が進み始めているというのが現状だと思います。そういう中で、学びが授業の中だけに留まらなくなってきています。授業でおさまらなかった課題は、グループや個人が授業外で解決するようになっています。ただ、子供たちが学校外で課題の続きをやることを考えると、データはクラウドに保存されていないといけません。

 それを解決するのがtomoLinksです。クラウドはもちろん、テレビ会議のシステムも一元的にシステム化されているので、授業外の学びが非常に促進されると期待できます。

 そもそも、1人1台端末の導入によって先生が子供たちへ与える課題自体もこれまでとは変わりつつあり、教室の中で閉じられた課題ではなく、教室の外にも持っていける、授業と授業外をシームレスにつなぐような学習展開が起こってきています。そのときにtomoLinksは、子供たちにとってわかりやすい、操作性のいいシステムなのではないでしょうか。

 遠隔学習と協働学習がきちんとコラボレートされていて、学校の中だけでなく、学び全体を支えるような授業支援・学習支援を考えていく必要があります。現在はこういった授業と授業外の学習をスムーズに進められるようなシステムが求められていると思います。そして、今の段階でそれを実現しているのがtomoLinksなのではないでしょうか。

岩永氏:堀田先生のおっしゃるとおりで、コロナ禍に伴い、教室だけで授業をするという意識は大きく変わってきています。先生が出す課題もそうですし、オンラインありきでの授業が展開されている。家にいる子供たちに向けてオンライン配信をしながら、教室で授業もしているといった形が当たり前になり、先生たちもそうした授業を展開しています。学校というもの自体が大きく変わってきていると思います。

 子供たちのほうも柔軟で、学ぶ場としての認識が1つの教室や学校にとらわれていない。なので、授業支援サービスは先生や子供たちの自由な発想から生まれた学習スタイルを実現できるべきと思っています。

 また、保護者や先生方にもタブレットを持ち帰ると子供がずっと学習とは無関係な動画を見るとか、好ましくないWebサイトを閲覧してしまうのではといった不安があるようなのですが、tomoLinksのWebフィルタリング機能を活用しています。

 そういう意味で、tomoLinksは教育委員会や教員、保護者がほしいと思う機能がすべて搭載されていると思います。教員、保護者の思いをICTで支えてもらっているので、教育委員会としても、tomoLinksの活用をしっかり進めていきたいですね。

1人1台端末により遠隔学習が増えていく



--今後の遠隔学習のあり方や展望についてはどのようにお考えでしょうか。

堀田氏:遠隔学習には2つのタイプがあって、1つはスポット的に、たとえば遠方の科学者と学校をテレビ会議でつないで講義してもらうといった遠隔学習ですね。もう1つは、学校と外部を繋げた交流学習を、定期的にカリキュラムを組んで行うパターンです。

 1人1台端末や高速ネットワークが整備されることで、どちらのタイプの遠隔学習も手軽に行われるようになりますし、これからは教室の中でもグループごとに異なる内容を議論する遠隔学習が実現するようになると思っています。というのも1人1台の端末があると、自分が必要とするグループとつないでコミュニケーションをとる形に変わると考えているからです。

 クラスで毎日一緒にいる子供同士のコミュニケーションでは、その場の空気を読んでしまいがち。すると意図が伝わっているように感じ、自分が言いたいことが本当に伝わっているかどうかを確認できないのです。遠隔学習システムがあると、手軽に遠隔地とつなぐことができるため、自分の意見を相手に伝えて、伝わらなかったらその都度伝え方を変えていく工夫が授業内でできるようになります。遠隔でのコミュニケーションが必須になる世の中を見据えると、遠隔学習はこれから増えていかないといけないし、さらに言えば海外ともつながっていけると良いと思います。

--tomoLinksは今後、学びの分析・活用サービスを展開予定ですが、これを活用することについてはどのような期待をしていますか。

堀田氏:これからの時代は、教師は指導の個別化を進め、一方では児童・生徒は自分に合った学習を選択して取り込まなければなりません。そのためには、学習したデータに基づいて、どういう学習が自分には最適なのかといった分析が必要になると思います。

 その点で、tomoLinksによる学びの分析・活用サービスで自分に適した学びを提案されるのは望ましいでしょう。自分の学習状態を分析して、今後どんな学びが必要なのかがフィードバックされてくるのが、次の学びへの進化につながっていきます。

学びの分析サービスについて
学びの分析・活用サービス

岩永氏:箕面市では14~15年前から、「ステップアップ調査」を行っています。これは小1から中3まで、学力と体力、生活習慣をすべて調査するテストのようなもので、その子がどういう経緯をたどっていったかが把握できるようになっています。

 ただ、先生方はとても多忙なので、データを示されても活用するのがなかなか難しかった。一方で、教員として子供ひとりひとりに寄り添い、個性や学力などを伸ばしてやりたい気持ちがある。「学びの分析・活用サービス」を駆使すれば、今までなかなか実現するのが難しかった、「個別最適化したアプローチ」をサポートしてもらえます。先生たちのこれまで培ったノウハウと組み合わせることでより良い指導につながると考えています

対談終了後のようす
対談終了後のようす

--ありがとうございました。

 堀田氏や岩永氏からは、tomoLinksを活用した新しい学びの形が示された。それは、教室や授業の枠にとどまらない、学校外に開かれた学びである。今後、tomoLinksに学びの分析・活用サービスが実装すれば、個々のデータの分析により、先生は子供ひとりひとりに寄り添ったアプローチに役立てることができ、子供は自分に合った最適な学びを深めることができる。tomoLinksが切り拓く新しい学習スタイルにより、子供たちは個人の特性に合った、いきいきとした学びを進めることができるだろう。

 なお、コニカミノルタは2021年8月5日と6日にインテックス大阪にて開催される「第6回関西教育ICT」にて「tomoLinks」を出展する。

tomoLinksについてはこちら
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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