アクシス発見スクールは2026年11月4日、早稲田大学の正司豪氏および東京大学の鈴木啓太氏との共同研究成果を発表した。中高生の学習ログ分析から、生徒の「自分軸」の核が構築されるのは最終発表ではなく中間フェーズの対話と示唆された。11月12日に国際学会「ICQE26」でポスター発表する。
探究学習やキャリア教育の広がりとともに、中高生が自らの価値観や生き方の指針となる「自分軸」を育むことの重要性が高まっている。一方で、その評価は最終発表やレポートなど「結果」に頼りがちで、考えや経験がどのように結びついて自分軸が形づくられていくかという「過程」を捉えることが難しい課題があった。
同研究では、自己概念の言語化を「時間や他者との関係の中で紡がれていくもの(ナラティヴ・アイデンティティ理論)」と捉え、対話データの分析手法である「認識ネットワーク分析(ENA:Epistemic Network Analysis)」を応用した。発話を過去の具体的経験、自己の能力・特性評価、感情状態の言語化、価値観・判断基準、他者との関係・影響、未来への投射、具体的行動選択、メタ認知・自己反省の8つの要素に分類し、対話構造の変化を可視化・比較検証した。
分析の結果、認識ネットワーク構造のもっとも大きな変化である自己評価・価値観・メタ認知の強力な結合は、最終日の成果発表ではなくプログラムの中間フェーズで起きていることがわかった。途中の対話で自身の価値観や過去の経験を掘り下げる時間が軸の構築に決定的な役割を果たしている可能性が示された。また、最終フェーズで語られる「将来の計画やビジョン」は単独で生じるのではなく、中間フェーズで構築されたフレームワークに接続される形で表現されることも明らかになった。
同研究は探索的な分析だが、振り返りを最後に置くだけでなく中盤に深い対話を挟み「自分軸の核」を構築する時間を設計することの重要性や、成果物だけでなく対話・記述のログから「過程(構造変化)」として評価するアプローチ、一時的に考えが揺れたり整理がつかなくなったりする時期を「つまずきではなく軸が再構築される兆し」と捉える見方などを教育設計への示唆として提示している。
同研究は、量的エスノグラフィーおよび学習データ分析分野の主要国際学会「ICQE26:The 8th International Conference on Quantitative Ethnography」(会期:2026年11月9日~13日、会場:広島)において査読を経て採択された。ポスター発表は11月12日の午後4時30分~午後6時に行われる予定だ。演題は「Epistemic Network Analysis of Self-Concept Articulation in a Dialogue-Based Identity Exploration Program for Adolescents(対話型アイデンティティ探究プログラムにおける中高生の自己概念言語化に関する認識ネットワーク分析)」。
発表者は正司豪氏(早稲田大学)、吉田直哉氏(アクシス発見スクール)、波多野薫氏(アクシス発見スクール)、鈴木啓太氏(東京大学)。なお、同研究は中高生8名の対話ログを対象とした探索的分析で、今後は大規模データでの検証を進める。
アクシス発見スクール共同代表理事の吉田直哉氏は「単に“将来の夢”を語ってもらうのではなく、途中の対話の中で自身の価値観や過去の経験を掘り下げるプロセスこそが、自分軸の言語化において重要であることが示唆されました。この知見を学校や教育関係者の皆さまとも共有し、より多くの中高生に質の高い対話と自己発見の機会を届けてまいります」とコメントしている。
早稲田大学の正司豪氏は「特に、学習プロセス支援で重要となる『どのタイミングで学習者の学習(自分軸)をみとるか』という問いにおいて、ENAを用いて『最終発表』ではなく『中間フェーズ』という一つの答えがわかったことは重要な知見だと考えております。この知見は、今後探究学習・キャリア教育だけでなく教科横断的な学習などさまざまな教育評価にも応用可能だと考えられます」とコメントしている。
アクシス発見スクールは、中高生が同世代や社会人コーチとの対話を通じて自己理解を深め、自分だけの軸「アクシス」を見つけるプログラムを提供している。







