2026年6月4日から6日までの3日間、NEW EDUCATION EXPO 2026東京(以下、NEE2026東京)が東京・有明のTFTビルで開催された。
会場内は、「ICT基盤・ネットワーク/セキュリティ」「機器・教室設備」「教材・教具」「教育コンテンツ」「校務DX・学校運営・業務改革」「行政・団体」のカテゴリに分かれ、100を超える企業・団体が出展。各分野における専門家によるセミナーも数多く開催され、多くの教育関係者で賑わった。
この記事では、NEE2026東京から展示の一部を紹介する。
ICT・空間・AIが融合した学びの再設計「Future Class Room」(内田洋行)
会場の一角には、未来の教室体験ができる「Future Class Room」が登場し、デモンストレーション授業に多くの来場者が注目した。Future Class Roomの授業は、ICTと空間設計が融合した、これからの学びの姿を体感できる内容だ。1日目の午後に行われた「ようこそ Future Class Roomへ 2026」は、開始前に満席となり、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。
会場内のFuture Class Roomには、プロジェクターやカメラ、サウンドバー、マイクなど、天井や壁の随所にさまざまなICT機器が設置されていた。これらの機器をスムーズに連携させ、最大限に活用するために導入されているのが、コントロールシステム「codemari(コデマリ)」だ。
授業は、内田洋行 地域デジタル化推進部 営業推進2課の小林友愛氏が担当。参加者が、教室の壁いっぱいに映し出されたQRコードを読み取るところから授業は始まった。各自の端末でアクセスすると、「地元の自慢」を入力する画面が表示される。投稿された内容は即座に壁面にカード形式で投影され、教室全体に共有される仕組みだ。教師はその中から特定のカードを拡大表示することもでき、個々の意見をもとに対話を広げられる。短時間で多様な意見を収集・可視化するICTの強みが示された場面だった。

続いて行われたのはグループワーク。「あなたは地域おこし隊のメンバーです。地域外の人が来たくなるようなプロジェクトを考えましょう」というテーマのもと、16人が4人ずつのグループに分かれて議論を行った。可動式の机と椅子により、教室は即座に協働学習に適したレイアウトへと変化する。環境面での柔軟性も、学びの質を支える重要な要素であることを実感させた。
議論を支援する仕掛けとして、中型の電子黒板には「どの課題に取り組むか」「活用する地域資源」「対象とする人」などのヒントが提示される。参加者はこれらを選択しながら思考を整理し、話しあいを進めていく。
さらに特徴的だったのが、ファシリテーションAIの存在だ。AIはあらかじめ地域活性化に関するデータを学習しており、グループの会話をタブレット経由で解析。議論の内容に応じて関連事例やアイデアを提示する。人間同士の対話に、AIが自然に介在し、新たな視点を加えるようすは印象的だった。
グループのワークシートはクラウド上で共有され、複数人が同時に編集可能。入力内容はメンバー全員の端末にリアルタイムで反映されるため、役割分担しながら効率的にアイデアをまとめることができる。最終的に各グループの案がまとまり、代表者が発表した。4チームのワークシートが壁面に並び、発表中の内容は拡大表示される。さらに来場者も参加できる投票が行われ、結果はその場でライブ表示された。

今回の授業は、ICTツール単体の活用にとどまらず、学習空間、協働の仕組み、AIの支援が一体となることで、参加型かつ創造的な学びを実現する可能性を示していた。こうした取組みにより、「個別最適化」「つながりの拡張」「表現の多様化」といったこれからの学びの要素が具体的に体現されていた点も印象的だ。Future Class Roomが描くのは、単なるデジタル化を超えた「学びの再設計」と言えそうだ。
蓄熱を防ぎ高速を維持、次世代AP「WAPM-BETR」(バッファロー)

注目製品は、2026年秋にローンチ予定のWi-Fi 7(IEEE802.11be)対応無線アクセスポイント「WAPM-BETR」だ。厚みのある筐体が特長だが、これは「放熱性能を高め、蓄熱による通信スピードの低下を防ぐため」と同社 首都圏法人営業部の江部彰吾氏は説明する。“教室での学びを止めない”をモットーに開発されており、2.4GHz~6GHz帯を選択できるだけでなく、同時に複数の周波数帯を利用することも可能。用途に応じた柔軟な運用ができる点も特長だという。学校の立地によっては気象・航空レーダーの電波干渉を受けやすい環境もあるが、干渉を検知するとアクセスポイント側が自動的に別チャンネルへ退避する「DFS障害回避機能」を搭載しており、授業中に突然Wi-Fiが使えなくなる事態を未然に防ぐことができる。
安定通信で学びを支える「ACERA EW770」(フルノシステムズ)

フルノシステムズのブースでは、Wi-Fi 7に対応した最新アクセスポイント「ACERA EW770」が展示の中心となっていた。同社 営業部二課 エリアリーダーの原田貴光氏は、オンラインテストなどで通信が滞ると授業全体に影響が及ぶという現場の課題に触れ、「1人でも接続不良があると授業が止まってしまう。その状況をなくしていきたい」と語る。EW770は高速・大容量通信に対応し、1教室に1台設置することで安定した無線環境の構築が可能。壁面や天井への設置に対応するなど、学校現場での柔軟な運用も想定されている。
自治体で導入進む「HENNGE One for Education」(HENNGE)
HENNGE One for Educationは、約2年前にローンチされたゼロトラスト認証と情報漏えい対策を一体で提供するセキュリティサービスだ。現在、府中市や町田市、駿河台大学などで導入されている。Cloud Sales Division Frontier Sales Sectionの崔真帆氏は、「東京都の共同調達が始まり、検討の俎上に上げていただいています」と説明。来年度以降、導入自治体のさらなる拡大に期待が集まっている。

会話内容を守る「情報マスキング音」でプライバシー対策(ヤマハミュージックジャパン)
シーリングスピーカーは、会話の音声を「情報マスキング音」によってカモフラージュし、周囲から聞こえにくくする製品だ。天井埋め込み式のほか、社名看板に設置されるような小型タイプも用意されている。会場では小型スピーカーが稼働しており、雑踏を思わせる中にいるようなざわざわとした音が流れていたが、不快感はなく、自然に感じられるレベルだった。ヤマハミュージックジャパン 音響事業戦略部 東日本法人営業課主事 吉田智之氏は、「学校ではプライバシーへの配慮が求められる保健室やカウンセリングルームなどでの活用が想定される」と説明する。


微光でも充電、ソーラー発電で使えるワイヤレスキーボード(ロジクール)
ワイヤレスキーボード「signature slim solar」は、ソーラー発電で動作する製品だ。同社 シニアプリセールスマネージャーの高井淳氏によると、太陽光だけでなく、オフィス内の照明程度の光でも発電が可能で、平均300ルクス程度とされる室内環境でも、200ルクスあれば充電できるという。仮に光のない場所で充電ができなかった場合でも、約4か月間は使用可能。微光でも充電できるため、充電タイミングを意識せずに使える点が特長だ。

一方、コロンとしたフォルムの環境センサー「SPOT」は、二酸化炭素や温度・湿度・煤塵(PM2.5など)、化学物質(ホルムアルデヒド)を計測できる。人感センサーを搭載しており、会議室予約ソリューション「タップスケジューラ」と連携させることで、会議室の利用状況を自動的に把握・管理できる仕組みだ。高井氏は、「人感センサー搭載の環境センサーは他社からも製品化されていますが、会議予約システムと連動し、入退室管理もできるのは当社ならでは」と説明する。

会場内には、子供たちの学びを豊かにするだけでなく、教員や自治体の負担軽減にも寄与する多様な製品やサービスが展示されていた。ICT機器やAI、通信環境、空間づくり、セキュリティ対策など、それぞれの分野から教育を支える取組みが示され、これからの学びの広がりを感じさせる3日間となった。














