内田洋行と同社グループのOpen Assessment Technologies S.A.(以下、OAT社)は、2025年12月5日、都内で記者発表会を行い、次世代版CBTプラットフォーム「TAO」のフルラインアップを発表した。
会見では、内田洋行やOAT社のこれまでの実績報告にとどまらず、2026年以降に実装されるAIを活用した機能拡張や、あらゆる学習者が公平に受験できるアクセシビリティへの対応など、CBTの未来像に焦点が当てられた。
100万人規模を支える「マイクロサービス」への構造改革
会見の冒頭、内田洋行 代表取締役社長の大久保昇氏は、「2020年のコロナ禍を機にGIGAスクール構想が一気に進み、日本には約1000万台の端末環境が整った」と振り返る。その環境下で、2025年春には中学3年生の理科において、世界最大級となる100万人規模の全国学力・学習状況調査を、TAOベースのシステムで無事に実施した実績を強調した。
また、2023年にOAT社が内田洋行グループに加わったことに触れ、「PISA2025の実施を106の国と地域で展開するなど、TAOは世界標準としての地位を確立している」と述べた。

続いて登壇したOAT社 共同CEOの町田潔氏は、次世代版TAOの製品ラインアップと技術的な進化について解説した。町田氏が特に強調したのは「公平性」と「アクセシビリティ」だ。「テストを受ける人たちにとって公平な機会を提供することは非常に重要であり、違う環境で受けることによって不利にならないようにしなければならない」と町田氏は語る。

次世代版TAOは、国際的なWebアクセシビリティ基準「WCAG 2.1 AA」に準拠。デモンストレーションでは、視覚障がいのある受検者向けのスクリーンリーダー対応や配色変更、聴覚障がい者向けの字幕表示、肢体不自由者向けのスイッチ入力対応など、多様な特性をもつ受検者に配慮した機能が標準搭載されていることが紹介された。
次世代版TAO内搭載のアクセシビリティ機能例
視覚支援
文字サイズの変更やハイコントラスト表示に加え、スクリーンリーダー(音声読みあげ)に完全対応。点字ディスプレイとの連携も可能となる。識字障がい(ディスレクシア)支援
読みあげ個所をハイライトする機能や、行間・文字間を調整できる「ラインリーダー」機能を搭載し、読みやすさを個別に最適化できる。身体的ハンディキャップへの対応
マウスが使えない受験者でも、キーボード操作やスイッチ入力、視線入力だけで全操作が完結するインターフェースを実現している。
これらの機能は、特別な支援ツールを別途用意することなく、標準機能としてCBTプラットフォームに組み込まれている点が画期的だ。
2026年秋、「TAO Studio」がもたらす作問のDX
会見では、2026年9月に提供開始予定の新たなオーサリングツール「TAO Studio」についても発表された。「単なるデジタル化から、デジタルトランスフォーメーション(DX)へ」と町田氏が語るこの新環境は、従来の問題作成ツールとは一線を画す「クリエイション・スタジオ」として位置付けられている。
1. AIによる「バイアス補正」と作問支援
TAO Studioには、生成AI技術が統合される予定だ。特に重視されているのが「公平性」の担保である。AIが問題文をチェックし、ジェンダーや人種、文化的なバイアスが含まれていないかを自動的に検出し、補正案を提示する機能の実装が計画されている。 また、問題の分類に必要なメタデータの自動付与や、AIによる下書き作成支援により、作問者の負担を劇的に軽減し、より質の高い問題作成に集中できる環境を提供する。
2.過去問を資産化する「問題バンク」
作成した問題は、タグ付けされ検索可能なライブラリとして蓄積される。これにより、過去の問題を容易に再利用・改訂でき、継続的なアセスメントの運用を効率化する。

大学入試・国家試験へ広がるCBTの地平
内田洋行は、この次世代版TAOを武器に、初等中等教育(K-12)にとどまらず、大学入試や国家資格試験、企業の採用試験などへの展開を加速させる方針だ。すでに電気通信大学の入試や、医師国家試験のCBT化実証研究などで採用実績があるが、今後はAIによる不正監視機能の強化なども予定されており、より厳格なセキュリティが求められる試験への対応力が向上する。
次世代版TAOは、大規模運用向けのSaaS版「TAOエンタープライズ」に加え、オープンソース版「TAOコミュニティ・エディション」も提供される。オープンソース版のリリースは2026年1月5日を予定しており、世界中の研究者や開発者がコードを改良し、共に進化させていくエコシステムの形成を目指していく。
世界標準の技術と「公平性」への哲学を融合させた次世代版TAOは、日本の教育DXを次なるステージへと押し上げる原動力となるだろう。












