文部科学省は2025年8月26日、国内26の大学・研究機関の連携により構築した「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)」事業における蓄積データ約11万件の共用利用を開始すると発表した。サービス開始は9月30日の予定。
半導体分野に関する材料研究開発は従来、専門家の試行錯誤や経験に基づく実験の繰り返しが中心であったが、近年ではAIを用いたマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の利活用が広がり、世界では米国などが早期から国家戦略として取り組んでいる。
日本政府は「マテリアル革新力強化戦略」(2021年策定・2025年6月改定)において、激化するマテリアル開発の国際競争に対応するために、マテリアルDXを推進。文部科学省では「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)」事業において、国内26の大学・研究機関に先端設備の全国的な共用体制を整備するとともに、共用設備の利用により創出されたマテリアルデータを、データサイエンス等に利活用しやすい形式に整えて収集・蓄積してきた。
2025年7月時点で収集・蓄積したデータは約11万件。データ共用サービスは9月30日から、所定の利用料のもとで開始する。利用希望者は、専用サイト「データ共用ポータル」より申請・登録後、利用したいデータセットを検索、ダウンロードする。利用料は、シングルライセンスまたはグループライセンス単位による年間定額制(年会費制)。利用方法の詳細は、後日、ARIM JapanのWebサイトに掲載予定。
利用者要件は、外国為替および外国貿易法その他関連法令の要件を満たす者(日本国に居住する日本人や6か月以上日本国に居住をする外国人など外国為替および外国貿易法の居住者)および、 日本国内で設立された法人に所属し、利用を申し込み、許諾された者。
活用ユースケースとしては、 より効率的なマテリアル研究開発を行うための「計算データ等との統合活用」や、若手研究者や学生がデータサイエンスの思考や計測技術を習得するための「教育コンテンツ等への展開」、再現性の高い実験支援への寄与などが期待されている。
共用データ数は今後も設備利用に応じて増加予定だという。なお、ARIM事業には、東北大や東京大、京都大、名古屋大、九州大など国内26の大学・研究機関が参画し、機器利用やデータ収集・蓄積を行っている。