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大学等の「フルタイム換算値」理学・保健分野ともに増加…文科省

 文部科学省は2024年6月26日、2023年度「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」結果を公表。学問分野別にみると、理学・保健分野において、ヘッドカウント値、フルタイム換算値ともに増加していることがわかった。

教育行政 文部科学省
調査対象別の母集団数および標本数
  • 調査対象別の母集団数および標本数
  • 大学等における研究者のフルタイム換算係数(研究活動時間割合)/大学等における教員のフルタイム換算値
  • 大学等における教員の職務活動時間割合(2023年度)
  • 大学等における教員の職務活動時間割合(学問分野別・2023年度)
  • 教授/准教授の学問分野別職務活動時間割合(2023年度)
  • 講師/助教の学問分野別職務活動時間割合(2023年度)
  • 研究パフォーマンスを高める上で最も制約となっていること(研究人材)
  • 研究パフォーマンスを高める上で最も制約となっていること(研究時間)

 文部科学省は2024年6月26日、2023年度「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」結果を公表。学問分野別にみると、理学・保健分野において、ヘッドカウント値、フルタイム換算値ともに増加していることがわかった。

 調査は、大学等における研究者数を国際比較可能なフルタイム換算値に補正するための係数(フルタイム換算係数)を得るとともに、大学等における研究者の活動の実態を把握し、研究や教育などにかける時間の利用実態を明らかにすることを目的に実施。統計法に基づく一般統計調査としてOECDの勧告に従い5年に1度、調査・分析している。

 対象は、総務省統計局が実施している「科学技術研究調査」における大学等の「教員」「大学院博士課程の在籍者」「医局員」および「その他の研究員」(本務者)。調査期間は、2023年(令和5年)11月13日に調査票を送付した後、2024年(令和6年)1月15日までに提出された回答を集計した。設問は2022年度(令和4年度)における状況の回答を求めた。回答数は教員4,903人、大学院博士課程の在籍者1,682人、医局員283人、その他の研究員1,911人の計8,779人。

 2023年度の大学等における研究者のフルタイム換算係数(研究活動時間割合)は、教員0.321、大学院博士課程の在籍者0.838、医局員0.168、その他の研究員0.708。大学等教員の頭数(ヘッドカウント値)にフルタイム換算係数を掛けて得られるフルタイム換算値は、全体で6万3,014人。内訳は理学5,455人、工学1万2,344人、農学2,655人、保健2万156人、人文・社会科学およびその他2万2,292人となった。

 推移をみると、大学等教員全体のヘッドカウント値は2002年度(平成14年度)から2023年度にかけて増加しているものの、フルタイム換算係数の減少傾向により、フルタイム換算値は減少している。また、学問分野別にみると、工学・農学分野および人文・社会科学分野においてはフルタイム換算値、ヘッドカウント値ともに大きな変化はないが、理学・保健分野においては、ヘッドカウント値、フルタイム換算値ともに増加していることがわかった。

 大学等における教員の職務活動時間割合では研究活動が32.1%ともっとも多く、ついで教育活動が30.1%。研究時間割合でみると、理学がもっとも多く48.3%で、保健分野が28.4%ともっとも少ない。ただし、保健分野は社会サービス活動(その他・診療活動等)の割合が23.6%を占める。また、教授、准教授、講師の、助教のいずれの職位でも理学では研究時間割合が40%以上を維持しており、特に助教では62.9%となっている。教育活動時間割合については、いずれの分野でも講師がもっとも高い結果となり、特に工学で41.9%、人文・社会科学は40.7%だった。

 また、研究活動時間割合の減少の要因を検討するため、教員が研究パフォーマンスを高めるうえで制約を感じている要素を「研究人材」「研究時間」「研究環境」「研究資金」の4つに分類し、それぞれについてどの程度制約を感じているかを前回調査に引き続き実施した。前回調査と比較し、全体として制約を感じていると回答した教員の割合はすべての要素において減少していた。

 「研究人材」においては、「修士課程や博士課程学生の不足」を制約と感じている教員がもっとも多く、若手研究者(ポスドク)の不足、そのほかの研究者の不足がそれに続いた。「研究時間」においては、大学運営業務(教授会など学内会議への参加およびそれらにともなう業務)を制約と感じている教員がもっとも多く、教育専任教員の不足などによる過重な教育負担がそれに続く一方で、学内事務手続き(備品購入手続き、施設使用申請、出張手続等)は大学運営業務の半数程度となっている。このことから、教員は事務手続きと比較して大学運営業務により負担感を感じている傾向が前回調査時点から続いていることが示唆された。

 調査の詳細は、文部科学省のWebサイトに掲載している。

《田中志実》

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