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自己決定を促す自由な学び、立命館守山高等学校の個別最適化した情報授業と一貫校の強み

 立命館守山高等学校の情報科を担当している伊藤久泰先生と、さまざまな学びや学校教材を提供しているライフイズテックの執行役員・丸本徳之氏の対談から、新しい情報教育の在り方や「主体的で対話的で深い学び」への授業変革について探る。

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自己決定を促す自由な学び、立命館守山高等学校の個別最適化した情報授業と一貫校の強み
  • 自己決定を促す自由な学び、立命館守山高等学校の個別最適化した情報授業と一貫校の強み
  • 立命館守山高等学校 情報科 伊藤久泰先生
  • ライフイズテックの執行役員・丸本徳之氏
  • ライフイズテック レッスン コンテスト
  • 生徒ごとの進捗を確認できる画面の例
  • Webデザインの授業のようす
  • Pythonプログラミングの授業のようす
  • 伊藤先生は、授業中に生徒ひとりひとりに向き合う時間が増えたと語る
 1人1台端末を実装するGIGAスクール構想、2022年度からの高校での「情報I」の必履修化、プログラミングを含む「情報」の大学入学共通テストへの採用等、教育界をめぐる環境の大きな変化により、学校の授業の在り方にも進化や適応が求められている。新学習指導要領が目指す「主体的で対話的で深い学び」を実現するためには、先生が一方的に教える従来の一斉授業スタイルを見直し、生徒が自ら考え、判断・決定して行動する能動的な授業への変革が求められているが、その実践への道を迷い悩む現場も多いことだろう。

 そうした変革をEdTech教材の力でいち早く成し遂げつつあるのが立命館守山中学校・高等学校である。同校はライフイズテックが提供するEdTech教材「ライフイズテック レッスン」を中高で導入。生徒が自らのペースで自由に学ぶ個別最適化の情報教育を行い、テクノロジーでものづくりやアウトプットをする成功体験を早いうちから積み重ねて、生徒たちの情報に対する興味や意欲を引き出し、主体的に学ぶ楽しさを提供している。

 同校では「ライフイズテック レッスン」を用いてどんな情報教育を行い、それによって生徒たちはどう変わってきたのだろうか。立命館守山高等学校の情報科を担当している伊藤久泰先生と、さまざまな学びや学校教材を提供しているライフイズテックの執行役員・丸本徳之氏の対談から、新しい情報教育の在り方や「主体的で対話的で深い学び」への授業変革について探る。

立命館守山高等学校 情報科 伊藤久泰先生
立命館守山高等学校 情報科 伊藤久泰先生

ライフイズテックの執行役員・丸本徳之氏
ライフイズテックの執行役員・丸本徳之氏

コンテストを通じてWebサイトを世界に発信



--立命館守山中学校・高等学校の情報教育の取組みを教えてください。

伊藤先生:数年前に学習指導要領の改訂や大学入学共通テストへの採用可能性の話が出た際に、早く準備をしていこうということで、2018年ごろから新しい時代に合わせたプログラミング教育について検討を始めました。本校では中学生・高校生のどちらも1人1台iPadを持っているので、生徒の興味を引き出すような楽しいことに取り組みたいと思っていたんです。

 本校は、高校では2020年度から、中学校では2021年度から「ライフイズテック レッスン」を導入しています。高校では1年生がWebデザインのパートを学習し、これをメインに授業やテストを組み立て、課題に取り組みました。「ライフイズテック レッスン コンテスト」に応募したこともあって、テーマを「自分の好きなもの」の他、「身の回りのSDGs」、「身の回りの問題解決」の3つに設定して、生徒ひとりひとりがWEBページを制作しました。そうすると、何がSDGsや問題解決に当てはまるのか、自ら考えテーマを探して、深掘りしていくんです。

 さらに、コンテストに出す基準でWebサイトを作ったので、ここでも生徒たちは新たなチャレンジをしていました。学校内だけでなく世の中に出ても問題のないように、オリジナルの写真や文章を工夫したり、既製品を使う場合には著作権・肖像権に加え、商標等にも配慮したりと、高い意識で取り組めたのが良かったですね。

ライフイズテック レッスン コンテスト
ライフイズテック レッスン コンテスト

ライフイズテック レッスン コンテスト2021総合結果発表ページ

丸本氏:コンテストでは、ライフイズテック レッスンで学習したプログラミングスキルを使って、「身の回りの問題解決」と「SDGs問題解決」の2つのテーマからオリジナル作品を募集しています。昨年度は全国44校716作品が集まり、立命館守山高校の生徒が敢闘賞を受賞しましたね。

伊藤先生:ありがとうございます。誰かに見てもらいたいと思うことや、実際に見てもらうことで成長できた点がたくさんあって、そうした経験を積むきっかけを作ってもらえたのはありがたいですね。今度はテーマの深掘りやフィードバックにもっと時間をかけてコンテストに挑戦したいと思います。

--2022年度の「情報I」が始まりましたが、状況はいかがですか。

伊藤先生:本校では新学習指導要領の「情報I」を高校2年生に配置しているため、2022年度は授業がないものの、今までの取組みも生かしつつ新学習指導要領で追加された点も加えてカリキュラムを組み立てています。本校は高校から入学する生徒もいるので、ほとんどパソコンを触ったことがない生徒から非常にスキルの高い生徒まで幅広い。

 そこで、2年生で「情報I」をスムーズに進められるように、2022年度は1年生を対象に朝や放課後の時間を活用してコンピュータの基礎を学ぶ講座をやろうと考えています。ID配布やモラル教育、iPadの最低限の使い方等の必修講座の他、タイピング等テーマごとの講座を設けて、特にパソコンに苦手意識をもっている生徒に向けて、少しでも苦手意識を払拭してもらえるように準備していく予定です。

一斉授業に違和感を覚える中で体験した個別最適化教材



--「ライフイズテック レッスン」の導入に至った経緯を教えてください。

伊藤先生:2018年8月に行われた教員向けのプログラム「Tech for Teachers キャンプ」に参加したのがきっかけです。大学生のメンターにもついてもらって、プログラミングを体験したのが始まりでした。あのころはまだ「ライフイズテック レッスン」はなかったんですよね。

丸本氏:はい。先生向けキャンプも初めての取組みでした。2018年当時、3~4年後にプログラミングや「情報」が学校に導入されるのに対して、早めに準備されている先生方にまずは楽しくアプリやゲームを作っていただこうと、これまで私たちが届けてきたものを3日間のプログラムの中で体験していただきました。

 そのキャンプで、今の教材の元となるものを使って、先生方にITプロダクトを作っていただいたんです。当時からオンライン型で個別最適で学べる教材だったので、学校には絶対に適していると思っていました。すると体験が終わった後、伊藤先生から「これを授業で使えないか?」とお話をいただいて。そこから実証とフィードバックを重ねて、「ライフイズテック レッスン」をスタートしました。

伊藤先生:それまでの授業で、一斉授業の限界を感じていました。教材や進め方、スピードをすべて同じように行う教育方法だけでは行き詰まると思い、また生徒が1人1台のタブレットを持ったことでそれ以外の選択肢もできつつあると感じていたんです。タブレットで協働学習も高度化したし、個別学習も可能になり始めていた。そうした個別最適化学習のツールがほしいと思っていたときに出会ったのが「ライフイズテック レッスン」でした。

 導入の際は、環境整備等でライフイズテック担当者に親切にサポートをしてもらいました。「ライフイズテック レッスン」は製品改善の頻度が高くて、すぐに意見が反映され、日に日に良いものにアップデートされていくのも良いですね。特に最近では、何%までこのレッスンを進めているのかといった生徒の進捗がオンラインで見られるようになったのが非常に助かっています。オンライン授業でも、対面とのハイブリッド授業でも、生徒の状況をリアルタイムに確認できるので役立っていますね。

生徒ごとの進捗を確認できる画面の例
生徒ごとの進捗を確認できる画面の例

丸本氏:製品改善はかなりの高頻度で進めています。先生方が授業の中で思ったこと、良いところや改善してほしい要望等をすぐに連絡していただける機能を用意していまして、その情報を蓄積して優先度の高いところから改善をしています。先生方からは「言ったことが改善される」「進化し続ける」という信頼をいただいていますね。

中学・高校の連携学習でより高度な情報教育を展開



--中学校にも導入していますが、どんな取組みをしましたか。

伊藤先生:中学校では中学2年生で、Webデザインの教材として授業で活用して、技術担当の先生にも好評でした。

 中学校で「ライフイズテック レッスン」を学んでおくと、高校の情報の授業でもっと高度なことができるようになると思います。本校では半分以上の生徒が中学からの持ち上がりなので、一度Webデザインを経験した状態で高校に進むと、高校ではWeb+プログラミング等の発展的な学習が可能になる。さらに中学生でWebデザインが面白いとわかった生徒は、その後も自分で学び続け、高校での授業でさらに深い学びができる。そういう力を早い段階から身に付けさせられるのはとても大きい。早い段階からきっかけを与えてもらうことで、自分でどんどん調べたり、友達や大人に聞いたりして進めていくことができるのはすごく良いことだと思います。

丸本氏:そうした中高での連続性のある学習体験をもっと届けていきたいですし、それは個別最適のEdTech教材だからこそ叶えられることだと思っています。中学からWebデザインに触れていることによって、高校では一段上の学習ができ、より専門的な知識やスキルを身につけることができます。さらに、早い段階から「Webサイトって自分で作れるんだ」と思って興味をもつと、見える世界も変わってきて、能動的に学ぶこともできるようになる。結果として、進路選択の幅も広がりますし、そういった切れ目ない学びを届けられるのは、中高一貫の大きな魅力ですよね。

Webデザインの授業のようす
Webデザインの授業のようす

情報理工学部志望が倍増



--「ライフイズテック レッスン」導入後、生徒にはどのような変化や影響がありましたか。

伊藤先生:授業への取り組み方が全然違いますね。一斉授業だと、できる生徒にとってはつまらないし、先生の他に情報実習助手がサポートで授業に入っていても、操作や手順で1つでも躓いたら授業についていけなくなる生徒が多かった。先生の説明や演示の時間が長くなりがちで、非常に受動的な授業になり、私たちも40人の生徒をサポートするのに限界を感じていました。

 それが「ライフイズテック レッスン」をやるようになって、生徒が自分のペースでテキストを読んで進めたり、Webやヒント集で調べたりと能動的になりました。資料でできることを確認して、イメージを膨らませて、どう使えば良いのかというところまで自ら調べてできるようになるなど、より深い学びを行うようになった。今までだったら、生徒の質問に教員が知っている知識だけで応えていたので世界がそれ以上広がらなかったのが、学びにいろんな選択肢ができたわけです。

 今年卒業した生徒のアンケートで「本校の学び全体を通じて自分に影響を与えた授業は何ですか」という質問をしたのですが、「プログラミングは遠い存在だと思っていたが、伊藤先生の情報の授業でプログラミングに初めて触れて、これなら自分もできると気が付いた」と書いてくれた生徒がいて嬉しかったですね。

Pythonプログラミングの授業のようす
Pythonプログラミングの授業のようす

 実は、「ライフイズテック レッスン」を導入してから、学内進学先として立命館大学情報理工学部への進学希望者が2倍に増えているんです。女子生徒の志望も増えていますね。卒業前の面談で情報理工学部志望の生徒たちは皆口々に「『ライフイズテック レッスン』で学んだことがきっかけで、もっとやってみたいと思った」とか「もっとアプリを作りたい」、「セキュリティスペシャリストになりたい」と夢を語っていました。そうした大きな夢や理想を語れる生徒が増えてきたのが嬉しいですね。「ライフイズテック レッスン」で学んだ卒業生が大学生になったときに、メンターとして高校生をサポートしてくれたら良いなと思っています。

丸本氏:それは非常に嬉しいお話です。本教材は「公教育のイノベーション・インフラ」でありたいと思っています。生徒さんたちが授業を通して、「テクノロジーを使って、自分たちは世界を変えられるんだ」という実感を持って欲しい。我々の教材をきっかけにして、人生で初めてのイノベーション体験をして欲しいですし、その成功体験が将来の夢や目標に繋がれば、こんなに嬉しいことはありません。

生徒が能動的に自己決定し続ける授業に



--EdTech教材によってひとりひとりにあった学びができるようになったという先ほどの話は、まさに新学習指導要領が目指す「主体的で対話的で深い学び」ができているということだと思います。先生方にも変化はありましたか。

伊藤先生:授業中に生徒ひとりひとりにアドバイスしたり疑問に答えたり等、ゆっくり向きあう時間が増えました。「頑張ったね」とか「これすごいね」とか、やっている過程や状態に対して励ましやフィードバックをする機会が増えたんですね。前向きな声かけが増えることで、生徒たちも「できました」とニコニコと教えてくれたり、やっているところを見てもらえているとわかって、集中して進めていたりして、授業中に寝ている生徒もまったくいなくなりました。

伊藤先生は、授業中に生徒ひとりひとりに向きあう時間が増えたと語る
伊藤先生は、授業中に生徒ひとりひとりに向きあう時間が増えたと語る

 教員の役割も教える立場から、生徒たちを応援してサポートやアドバイスをする立場に変わってきていますし、授業も変わりつつあると思います。今までの一斉授業でうなずいている生徒は40人中数人しかおらず、それ以外の生徒には伝わっていないと感じて、それがずっと違和感になっていたんです。でも、1人1台の端末が実装されてEdTech教材による個別最適化した学びが実現可能になり、学校もさまざまな学び方を用意するようになりました。

 リアルタイムでやる必要がない授業は動画をYouTubeで公開し、学び方も開放しました。授業動画を見る生徒もいれば、見ないでテキストを読む生徒もいて、どんな学び方をしても良い。学びながら自分でノートにまとめていく生徒もいれば、スクリーンショットを取って要点をまとめている生徒もいます。生徒それぞれにあったやり方を自由に決めてもらって、学ぶ内容や基準を示して、結果はテストで計るという方法にしています。

丸本氏:生徒が自分にあった方法を選択し、「自己決定をし続けられる」という学びが実現したのですね。伊藤先生の授業は、先生に決められたことを、決められた方法でインプットする受け身の時間ではなく、「生徒が自己決定し続ける時間」になっているのだと感じます。

伊藤先生:自分が習ってきたやり方では限界がある、違う方法に変えたいという思いがあるんです。そのツールの1つとして、個別最適化できる教材は核になっていくんじゃないかと思いますね。将来的には一斉授業と協働授業と個別最適化学習を組みあわせたブレンディッド・ラーニングができないかと模索しているところです。

 情報科で扱う内容は日々飛躍的に進歩を遂げる世界で、それにあわせて授業を変え続けるには、教員だけでは限界がある。教員は年に1度しか教材をブラッシュアップできませんが、EdTech教材の導入によって年度中にも進化し続ける教材を取り入れることができて頼もしく思っています。

丸本氏:そう捉えていただけることはとてもありがたいですね。EdTech教材によって、学びの環境はガラリと変化したと思います。この環境の中で、先生たちと協働しながら進化し続ける学びを届けていきたいと思います。

「ライフイズテック レッスン」で情報を学ぶ面白さを伝え、主体的な学習を促す



 ライフイズテックが提供しているEdTech教材「ライフイズテック レッスン」は、中学・高校の新学習指導要領に対応したオンラインプログラミング学習教材。2021年度導入実績は全国1,650校、32万人が利用とトップクラスの導入実績を誇る。

 2022年4月からは高等学校「情報I」必履修化に合わせ、これまでの【Python・AIコース】を【情報I全対応コース】としてリニューアルし、「情報I」の全単元に対応。これまでは「情報I」の(3)にあたる、プログラミングやAIを使った問題解決の学習までをカバーしていたが、【情報I全対応コース】では、新たに(4)データの活用(データサイエンス)の分野をはじめとする(1)~(4)のすべての単元に対応した。「つくる」ことで学びながら、体系的に知識も身に付くワンストップ型教材となっている。

「ライフイズテック レッスン」サービスページ

 またライフイズテックでは、経済産業省「EdTech導入補助金2022」を活用した「ライフイズテック レッスン」導入に関するオンライン説明会を、自治体・学校向けに実施している。詳細は下記ページから確認いただきたい。

「ライフイズテック レッスン 情報I全対応コース」特設ページ

 立命館守山中学校・高等学校では、「ライフイズテック レッスン」をはじめとするEdTech教材を活用して、生徒が自分にあった方法で能動的に学ぶ授業を展開している。中学生の早い段階からプログラミングに出会い、自分の興味を広げ、高校では個別最適な教材の強みを生かしながら、将来の夢や目標へとつながる学びの環境を提供している。そして先生はそれを応援・サポートする役割として伴走し、生徒の自己決定を促していく。主体的に学び、自ら考え決定していく経験は、進路決定をはじめ生徒の今後の人生において基盤の力になりうるのだろう。
《羽田美里》
羽田美里

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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