文部科学省は2021年6月8日、「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の第一次報告を公表した。2024年度(令和6年度)からの学習者用デジタル教科書の本格的な導入を目指すにあたり、必要となる取組みや留意すべき事項等をまとめている。 文部科学省は、GIGAスクール構想による児童生徒1人1台端末環境を見据え、デジタル教科書・教材の活用促進について専門的な検討を行うため、「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」を2020年6月に設置。2021年3月の中間まとめ公表後、教育関係団体等からの意見や、意見募集に寄せられた意見を踏まえてさらに検討を進め、第一次報告を取りまとめた。 第一次報告では、デジタル教科書をめぐる現状や導入の意義を示したうえで、本格的な導入に向けて必要となる取組みを整理。2020年3月1日現在、デジタル教科書の普及率は公立の小学校7.7%、中学校9.2%、高校5.2%と低く、活用の実践例が少ないことから、全国規模で実証的な研究を行いつつ検討することが必要とした。 デジタル教科書の本格的な導入に向けては、「新たな教科書検定の在り方の検討が求められる」と指摘。デジタルの特性を生かした動画や音声等を取り入れることやそのための検定の在り方については、将来的に検討すべき事項とした。 紙の教科書との関係をどのようにすべきか等、デジタル教科書の今後の在り方については、教育上の効果や健康面への影響も含めた全国的な実証研究の成果等を踏まえつつ、さらには財政負担も考慮しながら、今後詳細に検討する必要があると説明。デジタル教科書の普及状況や活用状況も注視し、検討を進めていくことを求めている。 2024年度からの本格的な導入を目指すにあたり、技術的な課題については、実証研究と並行してワーキンググループで専門的に検討することが必要と記載。技術的な課題の例には、「デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等」「デジタル教科書の供給をクラウド配信により行う場合、一時的にオフラインでも使用できるようにするための仕組み」「過年度のデジタル教科書を使用できるようにするための方策」をあげている。 「デジタル教科書の使用にともなう学習や操作の履歴等の記録の方法や保存場所の在り方」等については、教育データ利活用をはじめとする他の分野の検討状況を踏まえる必要があるとした。さらにデジタル教科書の使用については、「あくまで教育の質を高めることが目的であり、その使用自体を目的としたり、紙かデジタルかといった、いわゆる『二項対立』の議論に陥ったりすることのないよう、留意しなければならない」と記している。