大学入試は、総合型選抜や学校推薦型選抜の拡大、外部検定試験の活用などにより複雑化している。少子化が進む中、各大学には、受験生や高校にわかりやすく情報を伝えながら、入試業務を正確かつ円滑に運営することが求められる。
ODKソリューションズ(以下、ODK)が提供する大学受験ポータルサイト「UCARO(ウカロ)」は、出願から合格発表、入学手続きまでをオンラインで一元管理できるサービス。導入校数は108校(2026年8月時点)で、大学受験生(約60万人 ※文部科学省2025年度学校基本調査に基づく)の半数以上が毎年利用している。同社が2026年度入試の出願者を対象に実施したアンケートでは、95.6%の受験生が「満足」と回答したという。「入試アウトソーシングサービス」は、願書受付や成績処理、合格判定など、大学の入試実務を支援するサービス。志願者データ処理数は約122万人(延べ人数、2026年3月期実績)で、大学入学共通テストの志願者数を上回る水準だ。
今回は、これらを活用する明星大学と、サービスを提供するODKに、導入の背景や活用効果、今後の展望について聞いた。
プロフィール
明星学苑 明星大学
中西徹氏:学苑・大学事務局 アドミッションセンター長(アドミッション・就職ユニットリーダー)
岡部勇氏:学苑・大学事務局 アドミッションセンター 入試実施チームリーダー
今井利憲氏:学苑・大学事務局 アドミッションセンター主任
ODKソリューションズ
国仙谷博氏:教育ソリューション部 ゼネラルマネージャー
近藤圭介氏:教育ソリューション部 アシスタントマネージャー
片岡弘政氏:教育ソリューション部ディレクション2課 サブマネージャー
複雑化する大学入試、求められるのはわかりやすさと正確な運営
--近年の入試業務にはどのように変化が見られますか。また、それにともなう運用上の課題についてお聞かせください。
明星大学 中西氏:入試制度は年々複雑になっており、本学でも毎年見直しを行っています。ただ、どれほど良い制度でも、受験生に伝わらなければ受験してもらえません。複雑な入試制度をいかにわかりやすく伝えるかが、今の大きな課題です。
本学では、これまで全学共通だった受験の教科数を見直し、学科の特性に応じて異なる教科数を設定しています。その結果、制度設計は以前より複雑になっています。
明星大学 岡部氏:受験教科数が全学共通だったころは、学内併願がしやすい仕組みでした。しかし、学科ごとに教科数を見直したことで、併願できる学科とできない学科が生じています。そうした条件をシステム上でどのように扱うかについても、ODKさんと綿密に調整を重ねました。
明星大学 今井氏:外部検定試験を教科への加点や出願資格に活用するケースもあります。学科ごとの違いを受験生にわかりやすく伝えることはもちろん、当日のオペレーションでミスを起こさないことも重要な課題です。
--大学入試制度の変化にともない、大学の入試業務にはどのような変化が生じていますか。
ODK 近藤氏:受験生が減少する中、総合型選抜や学校推薦型選抜といった年内入試を重視する大学が増え、入試制度は多様化しています。学力試験だけでなく、調査書や外部検定試験、面接、小論文など複数の評価要素を組み合わせるケースも増えており、出願条件や判定処理は年々複雑になっています。そのため、大学ごとの制度に柔軟に対応できるシステムの構築や運用支援が求められています。

紙の願書対応から脱却、入試実務を段階的にアウトソーシング
--入試アウトソーシングサービスとUCAROの導入前には、どのような課題がありましたか。また、導入によってどのような変化がありましたか。

明星大学 中西氏:2013年に入試アウトソーシング、2020年にUCAROを導入しました。導入前は、願書受付から不備確認、合否判定まで、入試実務の大半を学内で対応していました。高校訪問やガイダンスなどの出張から戻ると机に書類の束が置いてあり、夕方から不備のある出願書類の電話確認を始めることも珍しくありませんでした。出願者本人や高校へ連絡をしてもすぐにつながるとは限らず、何度も電話をかけ直す必要がありました。
また、合否判定などの重要な業務について、特定の担当者の経験や知識への依存を減らすことも導入の大きな理由のひとつでした。そのため、信頼できる外部パートナーの力を借りながら運用体制を整えていく必要がありました。
導入後は、書類の不備対応などをODKさんに任せられるようになり、業務負担は大きく減りました。高校訪問などの出張後に直帰できる日も増えましたし、入試直前に遅くまで残業することも少なくなりました。以前は入試前の準備で疲れ切ってしまうこともありましたが、現在は入試当日の運営に集中できる環境が整ったと感じています。
--明星大学の入試業務改革に対し、ODKではどのような支援を行ってきたのでしょうか。
ODK 近藤氏:当初は、紙の願書受付業務の受託からスタートしました。その後、Web出願への移行をご提案し、紙との併用期間を経てWebに一本化しました。Web出願への移行によって、出願不備も減少し、業務の標準化につながりました。
さらに、支援範囲を成績処理や合格判定、合格通知の発送へと広げ、年内入試における出願・入学手続きにも対応してきました。現在はUCAROも活用しながら、出願から入学手続きまでの一連の業務を担っています。
--さまざまな選択肢がある中で、UCAROを選んだ理由は何だったのでしょうか。
明星大学 中西氏:UCAROは、出願から入学手続きまで一気通貫で対応できる点が魅力でした。長年支援していただいているODKさんへの信頼もありましたし、UCAROを導入している大学を併願する受験生であれば、同じシステム上で出願や入学手続きを進められるため、受験生の負担軽減にもつながると考えました。
明星大学 今井氏:実際に、出願に関する問合せは確実に減っています。UCAROの利用拡大により受験生や高校の教職員も操作に慣れ、問合せ件数は年々減っていると感じています。
--UCARO導入後、もっとも大きく変わったことは何ですか。
明星大学 今井氏:もっとも変わったのは情報提供です。UCAROでは対象者を抽出し、必要な情報をリアルタイムに届けることができます。緊急時の連絡はもちろん、以前は郵送していた合格者への合格通知や入学手続きの案内、入学前教育などの連絡もスムーズになりました。
明星大学 岡部氏:受験生とのコミュニケーションのあり方も大きく変わりました。受験生にとっては、出願から合格発表、入学手続きまでをオンラインで一元管理できる点が大きなメリットです。紙の郵送を待つ必要がないため、確認漏れや手続きミスの防止にもつながっています。大学側としても、合格通知や各種案内の郵送を減らせるため、郵送費や発送作業の負担軽減につながっています。
--入試運営の面では、どのような効果がありましたか。
ODK 片岡氏:入学手続きでは、UCAROの決済機能によって入金確認を迅速に行えるようになります。銀行振込データとの照合作業が中心だった以前に比べ、手続き状況を把握しやすくなっています。
明星大学 今井氏:導入後は、入学手続き状況や入学時納入金の入金状況をタイムリーに確認できるようになりました。そのため、手続きの締切後、追加合格発表までの期間を以前より短縮できています。
明星大学 中西氏:入金や手続き状況を早く把握できることは、少子化時代の入試運営において非常に重要です。入学者が多すぎても少なすぎてもいけないので、追加合格の判断をしやすくなった意義は大きいと感じています。
入試実務の負担を軽減し、受験生と向きあう時間を創出
--現在、どのような業務で入試アウトソーシングサービスを活用されていますか。また、導入後に感じているメリットを教えてください。

明星大学 中西氏:導入当初は一部業務から始め、Web出願の広がりにあわせて活用範囲を段階的に広げてきました。小規模な入試の出願受付など大学側で対応する業務も一部ありますが、現在はUCAROの活用も含め、出願から入学手続きまでの入試実務の多くをODKさんに支えていただいています。
入試制度や併願条件が複雑になる中で、ODKさんに相談しながら実現可能性を確認できる点は大きなメリットです。
明星大学 岡部氏:新しい仕組みを導入する際、不安がまったくないわけではありません。ただ、ODKさんにはその都度丁寧に調整していただき、データを確認しながら進めています。外部に任せるというよりは、「一緒にやるメンバーが増えた」感覚です。
明星大学 今井氏:入試業務をお願いできることで、本来注力すべき高校訪問などの募集広報活動や入試制度の改善に時間を使えるようになりました。また、ODKさんに作成していただいた過去の入試結果の分析データを、次年度入試の検討に活用できていることも大きなメリットだと感じています。
大学と外部パートナー、それぞれの役割とは
--大学入試業務において、大学と外部パートナーはそれぞれどのような役割を担うべきだとお考えですか。
ODK 国仙谷氏:少子化が進む中で、受験生や高校とのコミュニケーションがますます重要になっています。入試制度の多様化や制度改革に対応しながら、どのような学生と出会い、どのように未来の入学者を迎えていくのかを考えることは、大学の重要な役割です。
一方で、その裏側には、正確さが求められる入試実務があります。ODKがそうした業務を担うことで、大学が高校訪問や募集戦略、入試制度の設計といった本来注力すべき業務に集中できる環境づくりに貢献しています。単なる業務委託先ではなく、大学と共に課題を解決するパートナーでありたいと考えています。
--実際に、本来の業務へより注力できるようになった実感はありますか。
明星大学 中西氏:高校との関係づくりに時間を使えるようになりました。職員が高校へ出向き、受験生への面接指導や高校教員へ入試結果のフィードバックを行うことで、高校教員との接点を丁寧に築くことができ、信頼関係がより強固になっていると実感しています。
より良い入試運営に向け、ともに挑戦を続ける
--今後、どのような取組みを進めていきたいと考えていますか。
ODK 片岡氏:明星大学さんは、新しい提案に対して「一緒にやってみよう」と前向きに受け止めてくださる大学です。たとえば、面接や小論文などの評価業務を支援するシステム「iiscore-U」の開発時にも、実際の運用を踏まえたご意見をいただきながら改善を進めることができました。共に検討しながら取組みを進められることが、大きな力になっています。今後もその関係性を大切にしながら、より良い入試運営の実現に向けてご一緒していきたいと考えています。
明星大学とODKが共同で開発に取り組んだ「iiscore-U」についてはこちら
明星大学 中西氏:私たちも、少しでも改善につながるのであれば、まずは試してみたいという思いがあります。ODKさんの知見もお借りしながら、受験生にとってわかりやすく、利用しやすい入試のあり方を今後も考えていきたいです。
--今後の大学入試支援では、どのような価値提供が重要になるとお考えですか。
ODK 国仙谷氏:入試はミスが許されない業務であり、正確で安定した運用を今後も追求していきます。そのうえで、18歳人口の減少により大学間競争が激しくなる中、大学には、入試業務の効率化だけでなく、入試戦略や学生支援など幅広い課題への対応が求められています。そうした多様な課題に対応するため、他社とのアライアンスやAIの進化も取り入れながら、大学が求める支援に今後も応えていきたいと考えています。
入試支援から学生支援へ、広がる大学との連携
入試業務の支援に加え、ODKと明星大学は学生支援の分野でも連携を広げている。明星大学は2026年度、同社の子会社であるNINJAPANが展開する「キャリア教育セミナー」を実施した。同大就職センター 主任 伊賀周作氏は、「企業研究や自己分析、面接対策において学生が抱える課題を深く理解し、実践的な内容」と高く評価している。受講後アンケートでは約90%の学生が「満足した」と回答し、セミナー実施後には就職センターの利用者数が前年同期比120%を超え、2か月間で延べ600名を超える学生が個別相談に訪れたという。
明星大学とODKの取組みは、単なる業務効率化にとどまらない。ミスの許されない入試実務を外部パートナーが担うことで、大学職員は高校との連携や受験生への対応、入試制度の改善といった本来注力すべき業務に時間を充てられるようになる。さらに、両者の連携は入試運営だけでなく学生支援の領域にも広がりつつある。少子化や入試制度の複雑化が進む中、大学と外部パートナーがそれぞれの強みを生かしながら価値を共創していく姿は、これからの大学運営のひとつの方向性を示しているといえそうだ。
大学受験ポータルサイト「UCARO(ウカロ)」入試アウトソーシングサービス














