旺文社教育情報センターは2025年9月11日、文部科学省が公表した「2024年度 英語教育実施状況調査」の結果を整理・分析したレポートを発表した。中学3年生、高校3年生ともに国の目標に向けて着実に英語力が上昇している一方、自治体間の格差が依然として大きいことが明らかになった。
英語教育実施状況調査は、2013年度から全国の公立中学校・高等学校を対象に行われており、英語教育の改善に資する基礎データとして活用されている(コロナ禍の2020年を除く)。国が定める「教育振興基本計画」では、中学3年生でCEFR A1レベル(英検3級程度)以上、高校3年生ではCEFR A2レベル(英検準2級程度)以上の英語力を持つ生徒の割合の目標値を示しており、第3期(2018~2022年)の目標である50%を達成するレベルまで中高生の英語力は向上している。
続く第4期(2023~2027年)では60%を目標として設定し、さらに高校3年生についてはCEFR B1レベル(英検2級程度)とさらに高いレベルに達する生徒の割合を30%とする新たな目標も掲げられた。旺文社は、2013年度の調査開始以来、着実に上昇している中高生の英語力について、国と各自治体の英語教育施策や教員の授業改善が成果をあげている結果だと分析している。
調査では教員の英語力についても外部検定資格取得状況として公表している。第2期教育振興基本計画では、CEFR B2(英検準1級程度)以上の資格を取得した教員の割合を、中学50%以上、高校75%以上を目標として定めており、中学、高校ともに取得割合は上昇しているものの、中学教員は依然として目標の50%に届いていない。教員の中には、外部検定試験を受験していない層もいると考えられることから、文科省は英語教員を対象に外部検定試験を特別受験料で受験できる制度を設けており、旺文社はこうした制度活用が英語力向上につながると指摘している。
さらに、自治体別の生徒の英語力を比較すると、大きな開きが確認された。高校3年生ではCEFR A2レベル(英検準2級程度)の割合が高い自治体で61.2%、低い自治体で42.4%と、18.8ポイントの差がみられた。中学3年生ではCEFR A1レベル(英検3級程度)の割合が89.2%から34.5%まで最大54.7ポイントもの差が生じている。文科省は全自治体で50%以上を目標に掲げているが、目標達成にはまだ時間がかかると考えられる。旺文社は、達成には人的資源や予算といった課題が残るとし、今後は、成果を収めている自治体の改善プランの分析や成功事例の共有など、国による実効的な施策が求められるとした。