GIGAスクール構想による1人1台端末の利活用が全国で進む中、文部科学省は次のフェーズとなるGIGAスクール構想第2期(以下、GIGA第2期)の方針を定めた。今後5年程度をかけて、都道府県単位での共同調達による端末の計画的な導入や、学びを止めない観点から端末故障時に備え、15%を上限として予備機の整備を進めることなどをおもな方針としている。
端末導入にあたり必要な作業となるのが、児童生徒や教職員が電源を入れるだけで使用できる状態にしておくセットアップ作業だ。GIGA端末や周辺機器の整備、ソフトウェアの導入など、GIGAスクール構想をトータルでサポートしているSB C&Sは今回、GIGA第2期に向けて、従来のキッティングサービスに加え、MDM設定も加えたゼロタッチ導入支援サービスを打ち出した。
SB C&S ICT事業本部 システム基盤推進本部 ハードウェア販売推進第1統括部 販売企画室の片江氏に新サービスの概要や導入するメリットなどについて話を聞いた。
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端末利用に欠かせないキッティング作業とは
-- SB C&Sが従来から行っているキッティング作業とはどのようなものでしょうか。
GIGA端末におけるキッティングとは、事前に学校側で設定されたデバイス管理情報を端末1台1台へ流し込み、管理ラベルを作成・貼り付け、納品する作業を指します。一言でいえば「設定済みの情報をクラウドから端末に流し込み、納品後に電源を入れ、校内ネットワークにつなげると学校ですぐ使える状態にすること」ですね。
これまでSB C&Sが行っていたキッティングサービスでは、すでに構築された設定情報の流し込みから納品までを、キッティングセンター内で行い出荷していました。
GIGA第2期に向けた新たな導入支援サービスとは
--GIGA第2期に向けて、SB C&Sでは従来のキッティングだけでなく「キッティング前のMDMによる設定支援サービス」の提供を開始するそうですね。従来のサービスからどのような部分が追加されるのでしょうか。
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新たに展開する「キッティング前のMDMによる設定支援サービス」は、従来当社が行っていなかったキッティング前のMDM(※)設定から支援するサービスです。管理者の意向を直接聞いて、GIGA端末の運用設計やMDM設定といった事前設定、設定後のキッティング、納品までをワンストップで対応します。
※MDM(Mobile Device Management):モバイルデバイス(スマートフォン、タブレット、ラップトップなど)を一元管理するためのシステムやソフトウェアのこと。GIGA端末にはMDM機能を有していることが必須とされている。--キッティング前のMDMによる設定支援サービスを開始することになった経緯を教えてください。
キッティングのみを請け負っていたときは、構築済みの設定を端末に流し込む作業だったため、事前の設定漏れによる作業遅延や管理者が求めている設定意図を確認することなく納品されていました。そのため、納品後、実際に使用する段階で設定漏れが発覚し、確認や再設定に時間がかかってしまうという問題がありました。
そこで、キッティング前の事前設定から当社が請け負うことで、滞りなくGIGA端末を学校へ納品できるようになるとの考えから、キッティング前のMDMによる設定支援サービスを開始することになりました。
GIGA第1期でノウハウをもっている教育委員会・学校、販売店であれば、ご自身で設定が可能ですので、その分の作業コストと時間が短縮できると思います。その後の工程で必要となる設定情報の流し込みや管理ラベルの貼り付け、学校ごとの納品など、当社のキッティングサービスのみをご提供させて頂くことも可能です。
設定からキッティングまでワンストップで行うメリット
--GIGA端末のスムーズな提供を行うために新サービスを開始されるのですね。SB C&Sがワンストップで対応することによるメリットを教えてください。
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管理者が思い描いている環境を正確に把握して設定することで、学校現場でよりストレスなく端末利用できるようになるのが最大のメリットだと考えています。設定の構築段階からアドバイスすることが可能になりますし、設定中のトラブルにもすぐに対応できるようになります。設定から納品までSB C&Sが窓口となりますので、困りごとの問合せもスムーズになり、対応に取られる手間や時間を削減し、大きな安心感が得られると思います。キッティングサービスのみご利用の場合でも、納入までお手伝いをさせていただきます。
GIGA第2期では、端末更新を都道府県単位での共同調達を原則とする方針が示されています。GIGA第1期に市町村単位で購入したときよりも非常に多い端末を一気に設定する必要が出てくるため、これまでの方法では対応しきれないことが想定されます。事前設定からキッティングまでワンストップで対応できることは大きな強みになると考えており、MDM側の事前設定に誤りがあった際のリスクヘッジとしてのメリットも大きいと考えています。
Windows端末の更新をさらにパワーアップさせる「Windows Autopilot」
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--今回の新サービスの対応OSと、メリットがあればお聞かせください。
キッティングおよびMDMによる事前設定支援サービスは、Windows、Chrome、iPadに対応しています。どのデバイスでもワンストップで設定からキッティングまで対応可能です。また、ご要望に応じて「MDM設定のみ」「キッティングのみ」の作業もお引き受けします。
たとえば、Windowsデバイスであれば「Windows Autopilot(以下、Autopilot)」、Chromeデバイスであれば「ゼロタッチエンロールメント」という設定ツールにより、設定時だけでなく運用後の作業効率も格段にアップすることが見込まれます。
--Autopilotとはどのような機能ですか。
Autopilotは、マイクロソフトが提供するWindowsデバイスのセットアップを大幅に短縮して行うことができる機能です。クラウドベースで作業を行うため、遠隔操作によって設定等を端末に流し込むことができます。
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GIGA第1期において多くのWindowsデバイスの設定は、クローニングと言われるほぼ手動による設定の「キッティング」と、「イメージ展開」という2つの方法で行われていました。キッティングは端末1台1台に設定を施す方法、イメージ展開は学校ごとに決められたマスターを各端末にコピーしてインストールする方法です。
故障時や年度の切替え、転校・転入、卒業生が使っていた端末を次年度に別の学年で使用する際には、端末の設定変更が必要となります。キッティングやイメージ展開の場合、その設定変更を行うために都度端末を回収して、設定をし直して学校へ戻すという、時間も工数もかかる作業が必要でした。
このような課題を解決するための機能がAutopilotです。これにより、クラウド上で設定を行い、デバイスを紐付けることによって遠隔での設定が可能となります。端末更新時の切替え作業だけでなく、故障した場合や年度の切替え時にも、端末を回収することなく、クラウド上で変更設定をするだけで、端末側の設定を自動で変更することが可能になるのです。
--Autopilotの設定はどのような手順で行われるのですか。
クラウド側にユーザーを登録し、端末固有のIDを登録して紐付けます。そのうえで、Wi-Fiの設定や使用アプリなど、学校ごとの設定をクラウド上で配布するイメージです。当社のサービスでは、ハードウェアIDと呼ばれる端末固有のIDを当社がメーカーから入手し、それをAutopilotの設定に使用します。
固有のIDを当社がもつことにより、IDとユーザー情報を紐付けることが可能となります。紐付けは要の部分ですので、設定段階でしっかりと紐付けができていることが納品後のスムーズな運用にも関わってきます。
設定ツールで煩雑な設定・対応から教職員を解放
--1台1台の設定がクラウド上で行えるようになるのは大きな変化ですね。実際に端末を活用する学校現場ではどのようなメリットがありますか。
都道府県単位の共同調達で行うGIGA第2期の端末更新は、前回行った市町村単位の数百台規模より格段に多く、数千台、数万台の端末を一度に設定しなければなりません。従来の1台1台設定するキッティングや、イメージ展開でコピーを繰り返す方法では、膨大な労力を要するだけでなくヒューマンエラーを起こすリスクも高まります。
設定ツールを活用することでリスクが軽減され、端末を児童生徒の手元に確実に届けることができ、スムーズに利用を開始できる。これまで煩雑な設定や対応に割かれていた貴重な時間を、授業の準備や児童生徒と向き合う時間に使えるようになり、GIGA端末を存分に活用した質の高い学びを展開していただくことができます。
また、端末が故障した際にも、設定ツールを活用することで再設定の手間が軽減されます。壊れた端末を修理に出している間は予備機を使うことになりますが、設定が済んでいないと使用できません。急きょ設定をするとなると、授業以外の負荷が先生にかかるわけです。設定ツールを使えば、クラウド上で設定を行い、デバイスを紐付けることによって遠隔での設定が可能となりますので、予備機の電源をつけて設定が完了するまで数分待つだけで、予備機がその生徒用にカスタマイズされた設定になってすぐに利用できるようになります。
--事前設定サービスからキッティングまでワンストップのサービスを、設定ツールを使うことで学校・教員の手間が軽減されることになりますね。
そうですね。今回、設定ツールを使った事前設定支援サービスを当社が提案できる体制を構築できたことは、GIGAスクール構想を進展させるうえでも意味のあることだと自負しております。教育委員会や学校の先生方の負担軽減に直結するサービスですので、端末更新を控えている全国の教育委員会や自治体の方々に興味をもっていただけたら嬉しいです。
GIGA第1期において、全国の学校に配置されたICT支援員のおもな業務が、端末の操作方法の指導や故障などの困りごとの対応だったという話を耳にします。困りごとに対応する時間を当社がカバーすることで、先生やICT支援員の方々の時間をより良い授業運営のために使っていただけるのではないでしょうか。真の「学びを止めない」環境提供の一役を担えるのではないかと思っています。
事前設定・キッティングサービスを利用するには
--MDMによる事前設定・キッティングサービスを利用するにはどうしたら良いですか。
ご興味をもっていただけましたら、ぜひ一度こちらの窓口までお問い合わせいただきたいと思います。GIGA環境整備は自治体や教育委員会によって前提となる状況や求める端末、サービスの幅が異なります。ご自身の自治体では何が最適解なのか、ぜひ一緒に考えさせていただきたいと思います。
教育機関お問合せ販売店お問合せ幅広いジャンルをカバーするSB C&SならではのGIGAトータルサポート
--端末導入を検討中の、教育委員会・学校関係者にメッセージをお願いします。
都道府県単位での共同調達が原則となるGIGA第2期では、端末の設定、現場への導入、展開に要する労力も増大することが懸念されます。今回、当社が提供するサービスは、端末導入にかかる時間的コストや労力を軽減できると思います。加えて、設定時から導入時、または導入後でも、SB C&Sと販売パートナーで共にご提供できるシンプなサービスであると自負しております。
ご要望の端末設定された製品を確実に納品する、という当たり前のようでいてハードルが高かった部分にお応えしていきます。端末の調達から環境構築、修理、不要端末の回収まで、GIGAスクール構想をトータルでサポートしているSB C&Sだからこそのノウハウは、柔軟な対応が必要になるGIGA第2期においてお力になれる部分だと思っております。
GIGA端末の更新は2025年度から2026年度にピークを迎える見込みだ。まさにキッティングやMDM設定などをどうするか、目前に迫った問題として検討を進めている自治体もあるのではないだろうか。取材を通して、端末設定から納品までワンストップで対応することが、教職員や児童生徒のストレスのないスムーズなGIGA端末の活用に直結するのだと感じた。GIGAスクール構想の本来の目的である「個別最適・協働的な学びの充実」「情報活用能力の向上」「学びの保障」「働き方改革への寄与」に向け、新たなデジタル技術が教育DXを支える一助となるのではないだろうか。