文部科学省の有識者会議は2023年10月27日、全国の小学6年生と中学3年生を対象とした「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」のCBT実施について素案を公表した。2025年度悉皆調査では中学理科のみ、コンピュータを使ったCBT方式を導入する。
文部科学省は2020年より、有識者会議において全国学力・学習状況調査のCBT化の検討を開始。2021年には「最終まとめ」を公表し、2025年度以降の悉皆調査の教科調査において、中学校からCBTを先行導入することを明らかにしている。
今回の素案では、「最終まとめ」とそれ以降の検討・取組みを踏まえ、CBT化の意義や2025年度以降の悉皆調査のCBT化に向けた基本的な考え方を整理した。CBTを導入する教科は、1教科から段階的に増やしていくことが望ましいとの考えを示している。
そのため2025年度悉皆調査では、中学校調査のうち理科のみCBTを導入。実施日時は学校単位で同一とし、調査基準日(2025年は4月17日予定)の3日前~調査基準日までの4日間で分散実施する。日程については、ネットワーク負荷軽減のために日時を適切に分散する観点から、各教育委員会・学校の都合を踏まえ、文部科学省にて決定する。中学校理科に関する結果返却・公表についてはIRTに基づいて算出されたスコアをベースに行うとしている。
IRTとは、児童生徒の正答・誤答が、問題の特性(難易度、測定精度)によるのか、児童生徒の学力によるのかを区別して分析し、児童生徒の学力スコアを推定する統計理論のこと。異なる問題からなるテスト結果や、異なる集団で得られたテスト結果を相互比較できるというメリットがある。
なお、小学校国語・算数・理科および中学校国語・数学については、調査基準日に冊子を用いた筆記方式(PBT)で一斉実施する。結果返却・公表はこれまでと同様、正答数(率)をベースに行う。
また2026年度以降については、中学校では悉皆調査でCBTで実施する教科を可能な限り拡大する方向で検討。小学校では、経年調査(PBT・CBT併用)の解答状況についての分析結果や、中学校での先行導入状況などを踏まえてCBTの導入を検討するとしている。