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学校のPC1人1台「GIGAスクール構想」進捗と支援

 日本電子出版協会(JEPA)主催のオンラインセミナー「GIGAスクール構想(学校のパソコン1人1台)、最前線からの報告」が2020年12月9日に開催された。セミナーでは、現状の外観や、実現に向けた支援活動とその成果について語られた。

事例 ICT活用
オンラインセミナー「GIGAスクール構想(学校のパソコン1人1台)、最前線からの報告」 (c) ICT CONNECT 21
  • オンラインセミナー「GIGAスクール構想(学校のパソコン1人1台)、最前線からの報告」 (c) ICT CONNECT 21
  • 端末の調達に関する状況(8月末時点) (c) ICT CONNECT 21
  • ステークホルダを支えるGIGAスクール構想推進委員会 (c) ICT CONNECT 21
  • 情報発信部会の位置づけ (c) ICT CONNECT 21
  • GIGAスクール関連情報の収集・蓄積・発信 (c) ICT CONNECT 21
  • 推進委員会 活動成果の発信 (c) ICT CONNECT 21
  • ステークホルダーのネットワーク化 (c) ICT CONNECT 21
  • 活動状況と成果報告 (c) ICT CONNECT 21
 日本電子出版協会(JEPA)主催のオンラインセミナー「GIGAスクール構想(学校のパソコン1人1台)、最前線からの報告」が2020年12月9日に開催された。セミナーでは、現状の外観や、実現に向けた支援活動とその成果について語られた。

 文部科学省は、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない公正に個別最適化され、創造性を育む学びを実現するため、すべての児童生徒の「1人1台端末」等のICT環境を整備する「GIGAスクール構想の実現」を進めている。当初は2023年の達成を目標にしていたが、新型コロナウイルス感染拡大による休校措置を受けて計画を前倒し、2021年3月末までに進めることになった。

 「GIGAスクール構想の実現」を支援するため、ICT CONNECT 21は、団体会員や個人会員の総力を結集して取り組む「GIGAスクール構想推進委員会」を2020年5月28日に設立した。また、それらの取組みから得られた知見や、都道府県ごとに取り組んでいるGIGAスクール構想に関する最新の情報を届けるため、ポータルサイト「GIGA HUB WEB」を公開している。

 オンラインセミナーでは、「GIGAスクール構想」の現状を外観し、GIGAスクール構想推進委員会の活動と成果について3つの部会(情報発信・学校支援・利用促進)に分けて紹介された。

現状の外観と「GIGAスクール構想推進委員会」


中村義和氏(ICT CONECT 21事務局長)

 GIGAスクール構想を成功させるため、ICT CONNECT 21は「GIGAスクール構想推進委員会」を立ち上げ、さまざまな支援を行っている。文部科学省によると、GIGAスクール構想の実現に向けた端末の調達状況は、2020年8月時点で約7割の自治体で議会承認が得られ、約5割が調達を行っている。これを積み上げていくと10月~11月にはかなり多くの自治体で業者選定までが進んできているという状況。学校に納品された割合は、12月時点で約500の自治体にのぼる。このあと、2021年2月~3月に一気に機材が学校に納品されて、3月にほとんどの自治体で整備ができるという状況になる。

 2~3月に一気に機材を学校に納品するとなると、その物流網の調達やスケジュールも考慮しなければならない。その時期は年度末のため、引っ越しなど物流が混雑することが想定され、調整が必要になる。また、学校側ではネットワークの工事や充電保管庫の設置なども必要になる。2020年度中に端末機器の納入を実現させるには、さまざまな壁を乗り越えるが必要があることから、「GIGAスクール構想推進委員会」を立ち上げ、多くの人たちで力を合わせていこうということになった。

 GIGAスクール構想のステークホルダーは、省庁、都道府県・市区町村教育委員会・学校、先生・児童生徒・ICT支援員、企業・業界であり、それぞれの立場でいろいろな疑問や悩みがあり、それらを解決しながらGIGAスクール構想を成功させたいと考えている。「GIGAスクール構想推進委員会」は、ステークホルダーのさまざまな悩みに一元的に答えていかれるような支援をし、取組みを推進している。「GIGAスクール構想推進委員会」のメンバーは、さまざまな疑問や悩みに受け答えできる端末提供企業やEdTech企業、OS企業、教育委員会や教育内容をよく知っている指導主事、学校の教員や大学教授、専門家や有識者で構成される。なお、会員は随時募集しており、ICT CONNECT 21事務局にて受け付けている。

 GIGAスクール構想推進委員会は、「情報発信部会」「学校支援部会」「利用促進部会」の3つの部会で構成される。情報発信部会は、GIGAスクール構想に関する情報を収集・蓄積して必要な方に送り届ける活動をしている。学校支援部会は、学校に端末機器を整備する時期を中心に関係者を支援している。利用促進部会は、整備された端末機器の利用促進や効果的な利用を浸透させていく活動をしている。参加人数は2020年9月30日時点でのべ220人にのぼる。これらの部会の現状については、各部会の会長から紹介する。

情報発信活動について


藤原清幸氏(ICT CONECT 21 GIGAスクール構想推進委員会 情報発信部会長/レノボ・ジャパンプロダクト本部長)

 情報発信部会は、大きく分けて「GIGAスクール関連情報の収集・蓄積・発信」「推進委員会活動成果の発信」「ステークホルダーのネットワーク化」の3つの活動を行っている。具体的には、GIGAスクール関連情報のポータルサイト「GIGA HUB WEB」を運営し、GIGAスクール構想推進委員会の活動成果や、各都道府県の最新ニュース、自治体・業界ニュースを発信している。

 推進委員会活動成果の発信では、2020年9月に幕張メッセで開催されたEDIX(教育 総合展)の出展ブースで各種セミナーを行い、同時にオンラインセミナーも行った。そのほかにも調達・導入オンラインセミナーなども実施した。セミナーの開催レポートは「GIGA HUB WEB」に掲載している。

 情報発信部会は、「自治体・学校情報発信サブ部会」と「製品サービス情報発信サブ部会」の2つのサブ部会があり、自治体・学校情報発信サブ部会では、教育委員会や教員の方々と情報交換をしている。一方、製品サービス情報発信サブ部会では、製品サービス情報の収集・蓄積・発信や、製品サービス企業とのネットワーク化を行っている。この2つのサブ部会で学校の現場目線と有益な製品・サービス情報を組み合わせた形で活動を活性化するためのタグ付けをしている。これにより、GIGAスクール構想に関わるステークホルダーに対して、現場の視点に立った有益な情報発信ができると考えている。

学校支援活動について


竹元賢治氏(ICT CONECT 21 GIGAスクール構想推進委員会 調達・導入サブ部会長/インテル教育事業推進担当部長)

 学校支援部会は、数百万台に及ぶPCを1年で導入していこうという前代未聞のGIGAスクール構想を実現するため、自治体や学校への効果的な支援活動を行う。「調達・導入サブ部会」「QAサブ部会」「交流サブ部会」の3つのサブ部会が連携しながら支援活動を進めている。調達・導入サブ部会では、GIGAスクールの調達から導入、運用に関する活動支援を行っている。QAサブ部会では、自治体の困りごとを解決するために、GIGAスクールのQAやTipsを収集してGIGA HUB WEBに掲載している。交流サブ部会では、会員交流やセミナー、勉強会といった直接交流する場を開催している。

 課題解決のシナリオとして、1人1台端末導入・運用早期実現、ネットワーク・インフラの充実、900万人のアカウント取得、オンライン授業、教育クラウド活用があげられる。これらをきちんと洗い出したうえで、どのように仕組みを作っていくのか、学校支援部会の中で活動を展開している。

 現時点での活動状況について、「調達・導入サブ部会」では、サブ部会メンバーを中心に、GIGAスクール調達から導入・運用に関わる作業項目(懸念点)の洗い出し、ならびにガイドライン、回答(QA案)参考資料などを作成。「QAサブ部会」では、調達から導入・運用に関するQA・サポート内容「GIGA HUB WEB」サイトへ掲載。「交流サブ部会」では、調達から導入・運用に関わるテーマ、課題に関する意見交換・勉強会などのセミナーを開催。さまざまな地点から発信をしながら支援をしている。

利用促進活動について


碓井梨恵氏(ICT CONECT 21 GIGAスクール構想推進委員会 利用促進部会長/Google for Education)

 利用促進部会は、GIGAスクール構想下でICT利活用を促進するために「研修サブ部会」「宣言書作成サブ部会」「遠隔教育サブ部会」の3つのサブ部会で活動している。研修サブ部会では、教育関係者のスキルアップに繋がる活動を展開。オンラインで学べるコンテンツや研修情報を「GIGA HUB WEB」で発信し、利活用促進に関する勉強会・イベントを開催している。

 宣言書作成サブ部会では、EdTech製品を安心して利用してもらうために、米国の「Student Privacy Pledge」を参考に日本語版の学習者プライバシー宣言書を現在作成しており、12月中に公開する。宣言書に宣言をしたEdTech事業者をGIGA HUB WEBにて公開予定。

 遠隔教育サブ部会では、遠隔授業を推進するための施策を検討している。2021年1月には、オンライン授業のナレッジ普及イベントの開催を企画している。遠隔授業の実施率は5%程度にとどまっており、なかなかオンラインで授業をするというナレッジが広まっていないことに対して、遠隔教育サブ部会ではナレッジをどんどん普及させていくという活動を予定している。

 オンラインセミナーでは、GIGAスクール構想の実現に向けて、各者の活動と成果が紹介された。端末機器の整備だけでなく、整備後の利活用や、学びの深化、学びの転換が期待される。
《工藤めぐみ》

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