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Withコロナ時代の教育、塾の遠隔授業を支援する「atama+ Web版」

新型コロナウイルス感染拡大が、子どもたちの学びの機会に大きな影響を与えている。AIによる学びの革新をリードする「atama plus」は、2020年4月28日、報道関係者向けに「#学びを止めない、塾・予備校で広がるAIを活用したオンライン授業体験会」を開催した。

教材・サービス 授業
「atama+」のロゴ
  • 「atama+」のロゴ
  • AIと人間の役割分担
  • 個別に最適化されるatama+
  • 生徒ひとりひとりの学習状況が把握できる
  • 生徒の状況を把握し電話でコミュニケーション
  • オンライン授業のニーズは拡大
  • 大手塾もオンライン授業化を加速
  • オンライン授業と通常授業はほぼ同じ結果に
 新型コロナウイルス感染拡大が、子どもたちの学びの機会に大きな影響を与えている。AIによる学びの革新をリードする「atama plus」は、2020年4月28日、報道関係者向けに「#学びを止めない、塾・予備校で広がるAIを活用したオンライン授業体験会」を開催した。

 2017年4月創業の「atama plus」は注目度が高いEdTechベンチャー。テクノロジーを活用して、中高生の英語・数学・国語といった基礎学力の習得を効率化し、「社会で生きる力」を養うための時間創出をミッションとする会社である。

 体験会の第1部は、atama plus代表取締役 稲田大輔氏が登壇。「#学びを止めない、塾・予備校業界の対応とこれから」をテーマに、「atama+」を導入する塾・予備校が新型コロナウイルス感染拡大による影響下、どのように対応しているのか、その動向と今後の見通しを語った。

AIと人との共存から教育を変える



 冒頭の会社概要の説明に続いて、稲田社長から「atama+」の特長が紹介された。atama plusが目指す教育像は“AIがティーチング、人がコーチング"。稲田社長は「今までの教育は、人間がティーチングもコーチングもしていた。これを役割分担。子どもひとりひとりに合わせたティーチングは、いろんなデータの分析が得意なAIに任せる。一方で、人の気持ちに寄り添って、ほめたり励ましたりするコーチングは、人間の先生に任せるというモデルを作っています」と説明した。

AIと人間の役割分担
AIと人間の役割分担

 子どもたちひとりひとりは、得意なところも苦手なところも全部違う。従来はみな同じ教育を受けてきたが、「atama+」では生徒の理解度に合わせて、AIの先生が動画講義や問題演習などの多様な教材、カリキュラムを自動的に組み合わせて提供している。

個別に最適化されるatama+
個別に最適化されるatama+

 塾・予備校の講師にも、生徒の学習状況を可視化するプロダクトを提供。講師が閲覧する画面では、生徒ひとりひとりが何の教科、教材をやっていて、何秒経っているかといった学習状況が実況中継されている。また、どこでつまずいているか、どんなアドバイスをしたら良いのかといった声掛けのヒントも出るという。

生徒ひとりひとりの学習状況が把握できる
生徒ひとりひとりの学習状況が把握できる

オンライン授業には伴走者が必要



 新型コロナウイルスの問題はさらに大きくなっている。学校も塾も休校が長期化し、生徒の学習の遅れは大きな課題に。また学習塾・予備校は授業を継続できずに、経営リスクはかつてないほど大きなものとなっている。そこでatama plusは、これまで塾・予備校内のタブレット利用のみだった「atama+」を、生徒の自宅のパソコンやタブレット、スマートフォンで利用可能なものにするために開発を進め、2月末に「atama+ Web版」を緊急リリースした。

 今、塾・予備校では、これまで教室内で提供していた授業を継続して自宅に届けられるよう多くの試みが続けられている。また多くのEdTech事業者や教育事業者からは、無料でいろんな教材がオンラインで提供されているが、やる気のある子は1人で自習が進められるものの、多くの子には「人」のサポートが必要になる。

 「atama+ Web版」を導入している城南予備校のオンライン授業のようす。1人の先生が受け持つ生徒数はおよそ10人から20人で、これまでの塾・予備校の中で「atama+」を使うときも同様だったという。講師は学習している生徒のようすをモニタリング。今までと同じ時間帯に授業ははじまり、生徒は一斉に自宅から「atama+ Web版」にログインして学習を開始する。つまずきやほめるポイントがあれば、講師が適宜電話する。塾によってはオンラインコミュニケーションツールのZoomを活用するなど、さまざまな試行錯誤があるが、双方の利便性から現状は電話によるコミュニケーションを選ぶ塾が多いとのことだった。

生徒の状況を把握し電話でコミュニケーション
生徒の状況を把握し電話でコミュニケーション

生徒・保護者のニーズは顕著に増加



 「atama+ Web版」の利用教室数は急激に伸びている。4月7日の緊急事態宣言時には500教室だったが、4月27日時点では1,300教室に急増。利用ユーザー数は、Web版リリース前と4月24日時点との比較で10倍以上に増えたという。

オンライン授業のニーズは拡大
オンライン授業のニーズは拡大

 「atama+ Web版」を活用したオンライン授業に切り替ている塾も多い。駿台予備学校は4月20日から22校舎で「atama+ Web版」を活用した授業を実施していたが、4月30日には7月半ばまでの全校休校を発表、全生徒は「atama+ Web版」での学習に移行する。他にも九州の英進館、ティエラコム、城南進学研究社もほぼ全員が「atama+ Web版」での自宅学習を推進する。採用塾数は非公表だが、規模数上位100塾のうち3割程度が「atama+」を導入しているという。

大手塾もオンライン授業化を加速



 現場からは「遠隔のため生徒の顔色やノートは見られないが、atama+ COACH(講師向けのプロダクト)を見れば、学習状況はほぼ想像できる」(ティエラコム 能力開発センター講師)といった声があったという。同じ能力開発センターの事例では、生徒・保護者のオンライン授業へのニーズが非常に強く、新規校でWeb上にオンライン授業の告知をしたところ、2日で100名以上の体験申し込みが集まった。

大手塾もオンライン授業化を加速
大手塾もオンライン授業化を加速

 なおatama plusで3月に実施した学習動向調査では、「atama+ Web版」によるオンライン授業と通常授業の教科ごとの比較で、平均合格単元数に大きな違いはなかった。しっかりと学習姿勢が身に付き、塾側のサポートが得られている場合は、オンライン授業でも問題なく学習は進むと考えられている。

オンライン授業と通常授業はほぼ同じ結果に
オンライン授業と通常授業はほぼ同じ結果に

生徒・保護者の価値観の変化は新しい学び方へ



 稲田社長は「生徒・保護者の価値観が本当に大きく変わった」と感じているという。外に出たくない、人と触れ合いたくないといった価値観は当面続くと見られ、また先生が黒板の前で話す授業だけではなく「新しい学び方」に気付き始めた

 Withコロナ時代の教育は、オンラインとオフラインの授業を混ぜ合わせたハイブリッド型に変化するという予想もあり、稲田社長によれば一部の塾ではすでにそれを前提とした事業モデルの組み替えが始まっているという。

 ただオンライン授業では、授業動画やデジタル教材をそのまま配信してもうまくいかないと稲田社長は指摘する。例にあげたZoomによる個別指導では、「生徒の手元が映らない」「後ろから保護者が授業参観状態で品質が問題になる」といった問題点もあるという。EdTechを活用する中にあっても、講師の役割を考えれば、あらためて生徒の学習に伴走する役割が大事になる。

 オンライン授業では、家庭と講師のデバイスの準備も気になるところだ。「atama+ Web版」の場合、生徒の自宅のパソコンやタブレット、スマートフォンでも使えるため、ほとんどの生徒がスマホを所持していることから学習の支障はないという。講師も自宅にあるパソコンやタブレットで利用、デバイスがない場合は塾のパソコンなどを自宅に持ち帰って対応しているとのことだった。

シンプルなUIで、スマホでも無理なく利用可能



 第2部はatama plusスタッフによる「atama+ Web版」のデモがZoomの画面共有を利用して実施された。

生徒向けの「atama+ Web版」



 まずは生徒向けの「atama+ Web版」。生徒は自宅のパソコン、タブレット、スマホのブラウザから利用可能。ログイン後の最短コース画面では、学習の進捗度が円グラフで表示される。100%に向けて学習を進めるためにAIがどういう順番で何をやっていくのが良いかをリコメンドする。お勧めの教材は最大6個を表示。教材の内容は、診断テストや動画講義、演習問題、復習問題などで、どの単元の、どの教材で勉強していくのが良いか、AIがリコメンドし生徒は順番に学習を進めていく。

ログイン後の最短コースの画面
ログイン後の最短コースの画面

 演習問題は基本的に選択式。atama plusでは紙と鉛筆を使って学習することを大切にしており、解いたあとに選択肢から自分の解答を選ぶ形になっている。演習問題は合否にかかわらず解説が表示されるが、読んでも分からない場合は質問が可能。atama plusに質問が届いてから翌営業日あるいは2営業日以内に回答される。問題を見てわからない、習ったことがないと思えば、無理に答えるのではなく「わからない」ボタンを押して解説を読むことが可能になっている。問題を解いて間違った場合は、少し遡った問題がリコメンドされ、解くたびにお勧めの教材が変わってくる。

演習問題の解答選択画面
演習問題の解答選択画面

 動画の講義は、白板の上に文字や図、グラフなどが出てくる形となっている。講師の顔の表示も試したが、現状がもっとも生徒が集中できる画面だとわかったという。また、動画の尺は8分を超えると飽きる生徒が多く、すべて5~6分でおさまるように制作。演習問題を含めて教材は有名な予備校、学校の先生方の協力により制作し、生徒や塾から毎週フィードバックをもらって改善している。なお、動画視聴後は、理解を確認するための練習問題が出題される。

動画講義の画面
動画講義の画面

 生徒が自分の学習状態やレベルを知る「マイレベル」というページ。設定している目標に対して、自分がどのくらいの進捗かを把握できる。AIが理解度合いに応じて判定し円グラフで色分け表示。色は下部に記載されている単元の一覧とも連動しているので、生徒は今どの単元を理解し、どの単元は理解が不十分であるかを、自分自身で確認することが可能になっている。

マイレベルのページ
マイレベルのページ

先生向けプロダクト「atama+ COACH」



 次に先生向けプロダクト「atama+ COACH」のデモが行われた。講師が見る「atama+ COACH」の生徒一覧画面では、学習している生徒の状況がリアルタイムに把握できる。アラートや声掛けのヒントが表示されて生徒のサポートが可能、またこのアラートは数多くの種類があり、講師がどういうアクションをすれば良いかをリコメンドする。

atama+ COACHの生徒一覧画面
atama+ COACHの生徒一覧画面

 一覧画面から生徒の名前をクリックすると詳細情報の確認ができる。学習タイムラインでは、生徒が時系列で取り組んだ単元と教材、かかった時間が表示される。また過去にあったアラートも蓄積されているので、キャッチアップしてコミュニケーションに生かすこともできる。なお講師は生徒の学習状況やマイレベルも同じ内容が確認できる。

生徒の詳細画面
生徒の詳細画面

 スマホの実機(iPhone XR)で「atama+ Web版」を体験したところ、動きがとてもスムーズ、シンプルなUIによって操作に迷うこともほとんどなく、集中力をもって学習ができるのではないかと感じられた。

スマホ画面(iPhone XR)
スマホ画面(iPhone XR)

AIが学習時間を予測し、習得ベースの教育が実現する



 「atama+」での学習は、人によってかかる時間が違ってくるという。履修すれば進める学びから、習得してはじめて前に進む学びへ。「atama+」には、AIが今までのいろんな生徒のデータを分析し、学習計画の近い人をベースにして目標に達成するまでの学習時間を予測する機能がある。問題を解けば予測も更新され、塾側はあと何時間の学習が必要になるかを家庭と相談できるとのことだった。

 稲田社長は「プロダクトの仕組みを理解してAIに任せるところと人間がやるべきところをしっかり理解し、人間がやるべきところをきちんとやっていく前提で使ってもらいたいと思っています」と塾や予備校における利用拡大への思いを語った。学びの機会の確保から一歩進んだ教育の変革に挑むatama plusを今後も注目したい。
《佐久間武》

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